未来の進路
「未来、お前本当は海外に行きたいんじゃないか?」
アルバイトから帰ってきたばかりの未来に問いただした。
「今日学校から電話があってな、お前の担任の先生と話した。先生は未来を海外留学へ行くよう勧めていたが突然断ったそうじゃないか。」
未来は黙ってオレの話を聞いている。本当はそんな情報嘘だと言って欲しい。だが無理だ。
なぜなら未来の部屋のゴミ箱から海外留学のパンフレットが見つかったからだ。
「未来は海外留学に行きたかった、だけどそれを断ったのはオレが足枷になっているからじゃないのか?」
もしオレが枷になっているのならそれは違うぞ。
「違う。違うもん。お父さんが足枷だなんて一度も思ったことはないもん。わたしはわたしの意思で留学を断ったんだもん!」
「未来、落ち着いて…」
ちゃんと説明してくれないか?
「まるでわたしが悪者じゃん。お父さんにまでそんなこと言われたらわたし明日からどんな顔をして生活すればいいの?」
未来の手がブルブルと震えている。
「わたしは、わたしはこの家に居たいだけなのに、お父さんの近くに居たいだけなのに、そんなことお父さんから言われたらもういつものように暮らせないよ…」
未来の瞳にじわりと涙が浮かぶ。
「…ご、ごめん」
おれが無意識に言った言葉が未来を追い詰めてしまった。なんでオレはこうなんだ!自分で自分に腹が立つ。
「お父さんは悪くないよ。頭冷やしてくる。」
未来は家を飛び出した。
待って!と言おうとしたが、今更待ってと言ってなんて声をかければよいかもわからない。
オレは一人娘を守っているふうにして実はなにも守れてなかった。
とにかく未来を追いかけよう!
玄関のサンダルを履いてオレも未来が行きそうな場所を探した。
額から大粒の汗が滴り落ちる。
呼吸は荒くワイシャツも汗でびっしょりだ。
未来のスマホに電話をかけてみたがさっきから繋がらない。
どこに行ってしまったんだ。
2時間くらいたっただろうか。
突然オレのスマホのラインに未来から通知が来た。
急いで確かめると、そこにはただ一文字で「墓」と書いてあった。
墓…?未来が行きそうなところで墓…。
オレはただ「墓」という手がかりに一縷の望みをかけてその場所まで走った。