雨のちたい焼き
仕事が終わり改札を抜けると雨が降っていた。
今日傘忘れた。天気予報見てこなかったからなあ。
と思っていると
「おかえり。傘忘れたでしょ?」
未来が駆け寄ってきた。
「…ありがとう」
二人で並んで歩く。こうして二人して歩くのは久しぶりだ。
「学校の方は順調か?」
なんとなく聞いてみた。
「わたしこうみえて成績優秀なのよ。」
勝ち誇ったように手をグーにして高々と腕を上げる。
「大学は…進学するのか」
聞く事を少し躊躇ったが聞かないわけにはいかない。今後のためにも。
「全然考えてない、って言ったら嘘になるけど」
「お金のことは気にしなくて良いんだぞ。貯金だってあるんだ」
男手一つで育ててきたが給料の一部を少しずつ貯金してきた。未来の普段の買い物などの節約やあまりモノを欲しがらないせいもあって貯金は娘一人を私立大学に行かせられりぐらいはある。
「あたし頭悪いから大学行けないかも」
傘で表情はよく見えなかったが、いつもの戯けて言ってるのだろうか…。
「でもさっき成績優秀って…」
「冗談よ。真面目な話先生には東京の大学いけるって勧められてるけど。お父さん一人にしちゃうから、あんまり。家から通える大学に行こうかなって思ってる。」
本当は未来に勉強したいことを諦めさせたくない。未来なら一流の大学に行ってきちんとした勉強を受けられるはずだ。
いらぬ遠慮はしてほしくなかった。
ただオレは未来が言った言葉の真意を理解できずにいた。
「……。たい焼き食べるか?」
「うん、食べる。」
今オレがしてあげられる事はないだろうか。
商店街の鯛焼き屋で鯛焼きを買って食べながら二人で帰路についた。