心配性の父
「今日もバイトか」
先に食べようかな、と思ってたら未来が帰ってきた。
「ごめ〜ん!遅くなっちゃった!今から夕ご飯つくるね。」
未来は靴を脱ぎながら言った。
「いあ、急いでつくる必要はないから。」
包丁には気をつけてね。
「任せて!」
美味しければそれでいいからそんなに気合い入れなくていいよ。
トントントン、包丁で切る音が良い感じに響く。
「なぁ」
「なあに?」
ふと思った事を聞く。
「たまには料理作ってよっておれに対して言わないの?」
「言って欲しいの?」
「いあ、仮定の話」
聞いたはいいが上手く作れる自信はないからあくまで仮定。
「大丈夫!わたし料理作るの好きだから」
包丁を器用に扱う様子が様になっている。
「負担になってない?」
ピタリ
未来の料理の動きが止まった。
微妙な空気が流れる。
「お父さん毎日仕事遅くまで大変でしょ?わたしに出来ることって家事くらいだから。それに…」
そんな事ない。未来が居なくなったらオレは生きていけないだろう。
「それに?」
「なんだかこうしてるとお母さんを身近に感じれる気がするから」
「…」
「あ!やば!」
「どうした!?」
「お味噌切らしてちゃってた!今から買ってくるね!」
一瞬しんみりした空気を断ち切るように未来は大声をだしたのでオレは飛び上がるくらい驚いた。
「いいよいいよ、味噌汁ぐらい一日無くたって。」
「わたしが良くないの!待ってて。近くのコンビニで買ってくるから」
エプロンを外しコンロの火を止めて今すぐにでも出かけようとしている。
「いやおれが行くよ。未来は料理の続きやってなさい。」
「ほんと?じゃあ買い物、任せちゃってごめんね。」
「いやいや、行ってきます。」
なんだか嬉しかったので買い物してるときもウキウキした。
味噌はこれがいいのかな?これかな?味噌の値段まで気にする事をしなかったので家に帰ってたら、高いの買って!安いのでいいのに!とお叱りを受けた。
「ありがとうね。」
未来はそう付け加えて。