ブラック企業を破壊した漢
俺は入社前のやり取りを思い出した。
役員との面接にて。
「うちはね完全週休二日制で残業になることはほんどなくてね」
素晴らしい。
珍しくない謳い文句だけど魅力的だ。
「その上、毎月ボーナスが出るんだよ」
「ま、毎月ですか⁉︎」
衝撃のあまりに叫んだ。しかも、
「ちなみに夏季休暇は一か月、冬季休暇も一ヶ月なんだ。それでもここで働く気はあるかい?」
「あります! あります!」
休みの多さに心躍った。しかも、募集要項には初任給は三〇万と書いてあった! 入社するっきゃねぇ!
――そして一年が過ぎた頃。オフィスビルの一室にて、
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!」
俺は仕事中に叫んだ。
募集要項をよく見ると三と〇の間に小さく小数点があり、初任給は三万円とのこと。
更に休暇中はタダ働きさせられるだけ! しかも、毎月あると聞いたボーナスはたった五円!
「先輩どうしたんですか!」
今年、入社した新入社員が喋りかけてきた。
「うるせええええ!」
「ぐわぁぁぁぁぁ!」
新入社員の目を覚まさせるために踵落としで脳天に一撃を加えた。
彼は倒れて動かない。息はあるので気絶しているようだ。
いい夢見ろよ!
「何をやってるんだ貴様は‼︎」
周囲に社員が集まり、かつて俺を面接してくれた役員が怒鳴って来た。
「お前らは俺が救済してやる! おらおらおらおらおらおら!」
俺は気絶した新入社員の両足首を両手で掴み、縦横無尽に回転する!
「「「「ぐああああああ!」」」
阿鼻叫喚とはこのことだろう。役員含めて室内にいる社員は俺の回転で吹き飛ばされて気絶する。
救済完了だ!
そのとき、ガチャリと隣接してある社長室の扉から社長が現れたので、
「もう、お前一人だけだ! クハハハハハハハ!」
俺は社長に向かって哄笑する。
「私に勝てると思うのか?」
「当たり前――」
俺は喋ろうとしたのに喋れなかった。まさか!
「タイムストップ……それが私の能力」
時を止めやがった!
化け物め!
「消えてなくなれい!」
と言い、社長は大きく口を開けて光線を放ってきた!
こんなところで負けてたまるか! 俺の命を懸けてやる! これが漢の覚悟だ!
「うおおおおおおおお! ビックバン‼」
俺は体を光らせる。その光は次第に広がり、光線を飲み込む!
「馬鹿なぁぁぁぁぁ! ぐぁぁぁぁ!」
命を捨てた俺の攻撃を受けた社長は消滅した。つまり、世界からブラック企業が一つ消えた。
ちなみに、俺は天国でブラック企業を消した功績が認められて石油王の息子として地球に転生した。