裏切り者は誰だ!
ミッション達成の為に、今俺は作業を行っている。
このミッションは重要で、此処で成功させなければ次の場所へと進む扉を開けることが出来ない。
そんな訳で、入力装置の前にて作業を行っているのだが……何やら騒々しい音が遠くから聞こえた。
恐らく同じミッションをやっているパーティーメンバーが、何やらかトラップでも踏んだのかもしれない。だが、此処は一人一ヶ所で作業を行えと言われているのだから……今は作業に集中するしかないだろう。
━━ミッションが終了しました━━
自分に割り当てられた仕事を終わらせて、皆が待つブリーフィングルームへと戻った。
「おうおう……次へ進むゲートが開いてねーぞ。一体何をやっていたんだ?」
戻ってすぐに言われた言葉は、ミッションが完了していないと言う無慈悲な言葉。
可笑しい。俺は確かにミッションを完了させていたはず。だと言うのに終わってないと言う事は……パーティーメンバーの内誰かが失敗したと言う事になる。
「お前らの内誰かが失敗したって事だよなぁ? とは言え、簡単な作業だ……失敗するはずがねぇ。と言う事はお前らの中に裏切り者が居ると言う事だな」
約一名が物凄い勢いで幕してたててくるが、そんな事は放置だ。
今は……原因の解決が大切。そう考えているのだが、何かが可笑しい……よくよく周囲を見渡してみると、あぁ、ミッションに出た者の内、一名が戻ってきてないのだと言う事が解る。
「良いか? 一人戻ってきてないのだが……誰か見ただろうか」
「あぁん? 大方裏切り者が暗殺でもしたんだろーよ! ったく……面倒な事をしやがって」
これは不味いな。今のミッションを行った三名の内一名が殉職し、残り二名は裏切り者の疑いがあると言う訳だ。
そして、その疑いの目を向けられる二名の内の一人は俺と言う訳で……。
「これは、次からのミッション……お前たちには任せられねーなぁ?」
などと言われても致し方のない話。
くそ、俺はしっかりと作業を終わらせたと言うのに……此処で発言権すら奪われるとは。
どうする……どうすればいい? どうやったら、俺の疑いは晴れるだろうか。
正直、俺にはその裏切り者が誰かは解っている。何故なら戻ってきたのは二名だ。そしてその内の一名が俺。それなら当然だが、残ったもう一名が裏切り者と言う事になる。
しかし、それを声高らかに言った処で……信用を勝ち取ることが出来るだろうか? 相手だって、俺が裏切り者だと声をあげるだろう。
そして、他の奴等はブリーフィングルームで待機していたんだ。それはすなわち、本当の事を言っているのがどちらか解らないと言う事。
これは完全に……手詰まりだな。最早この作戦を無事に終わらせる手段など残っていない。何故なら……裏切り者はもう一人いるはずだから。
少しでも! という願いを込めてこの部隊のリーダーを見つめてみる……が、そのリーダーはプイっとそっぽを向いてしまった。これはダメだ。俺が完全に疑われているのだろう。
そして、そんな嫌な予想が外れる事は無く……俺と一緒に行った者は残され、リーダー達はミッションへと向かってしまった。
「クハハ……これは勝ち申したな」
そう、残った俺に対して一緒にミッションに言った奴が声を掛けて来る。完全に自らの役目を達成した物の顔だ。
武器を握る手に力が入るが、この場で奴を殺す事は出来ない。その行為は一切許されていないからだ。
そして奴も奴で、どちらの勝利か明言して居ないのもまた厭らしい。聞く者にとっては俺が裏切り者と言う風にも聞こえるからな。
苛立ちを覚えながらも、微かでいいからリーダー達よミッションをクリアしてくれ! と願う。
そして鳴り響くミッション終了の合図。
━━ミッションが終了しました━━
結果は言わなくても解るだろう。ゲートが開いていないという事はリーダー達のミッションは失敗したという事だ。
そして戻って来るミッションへと向かったメンバー達。
「ミッションが失敗だな……ノルマは達成出来なかったようだな」
「あぁ、その通りだ。と言う事はもう俺達は此処から出られない訳だ」
そう、このゲートを開くことが出来なかった俺達は、もう外に出ることが出来ない。
その結果……俺達に託された物はもう二度と日の目を見る事が無いという事になる。
目の前が真っ暗になる……精神的に出なく物理的に……。
視界が反転し、空間が歪む……そして……。
━━ロビーへと転移されました━━
「GG! お疲れ様!」
「くっそー、お前らが裏切り者だったのか! 俺、暗殺されちまったじゃねーか。絶対大丈夫だと思ったのになぁ」
「おつかれ~、いやぁ今回の裏切り者メンバーは強かったなぁ」
そう、此処はゲームのロビーで沢山の人が次のゲームを開始を待っていたり、ゲームを終えた人が反省会をする場所だ。
まぁ、やって居たのはちょっとしたVRゲームで、ミッションを受けた者達の中に裏切り者が居る。で、その裏切り者達を探しながらミッションをクリアすると言ったもの。
裏切り者側はミッションをクリアさせない為にあの手この手で妨害工作をして来る。暗殺もその手の一つだ。とは言え、暗殺が簡単に出来てしまったら裏切り者側に有利なので、そこら辺はゲームバランス的に色々と調整されている。
例えば、暗殺できるタイミングが必要な上に使い捨ての道具が有ったり、暗殺を妨害する道具が用意されていたりなどだ。
元々はTRPG的なゲームを基に作られたそうだけど、実際にゲームの中へとダイブして行うこのゲームは全く違うモノへと変化している。
何せ、自分自身で色々と行動しないと行けないからな。そりゃ緊張感が全く違うと言えるし、運でなくプレイヤースキルが重要になる。
「てかリーダー! なんで俺を疑うんだよ……アイコンタクト送っただろ」
「いや、そのアイコンタクトが裏切り者かと思えて来たんだよ」
何てこったい! まさかの合図が裏切り者認定だったとは……。これはアレか? 昔からTRPGにある生存意欲が強すぎると言う奴だろうか。
それにしても……今回は敗北したが次は勝ちたいものだ。そうだな、裏切り者でも引いて今度はリーダーを引っ掛けて見たい処である。うむ、信じてくれなかったお灸をすえてやろう。
てことで、作者の考えたオリジナルゲームをベースにしてます。
とは言え、色々とベースにしたTRPGは有りますよ? 色々思いつく人も居るのではないでしょうか。
まぁ、一緒に遊ぶ人なんていないので、一人寂しくサイコロを転がしながらやってますが。そこ寂しい奴だとか言わない!
日の目を見ないモノなので、折角だからちょっとした短編にしましたとさ……と言うだけの話です。