第八話 「守護者」
技能発動。<範剣術>一の奥義。雷閃。
剣を肩にかけ、まるで野球のオーバースローの投げ方の様な態勢を取る。
その瞬間、体に何らかのアシストがかかるかのように加速する。雷の如き早さで鬼に近寄り、剣を突き刺すかのように振り下ろす。
流石の強化された鬼でもかろうじてしか反応できなかったのか、鬼は致命の一撃こそ免れたが、片腕を剣によって吹き飛ばされ、バランスを崩した。
その隙を見逃す俺ではない。剣を腕から振りぬいた後、鬼の背後を取った俺は、加速後のスピードを活かし、振りむこうとする鬼の首を後ろから剣で斬り落とした。
首を落とした瞬間、いつもより多い光の粒子が空に舞い、真っ赤な籠手がドロップした。その瞬間に守護者を倒したことを実感した。
慢心していたらもっと苦戦してたかもな。そんな感慨にふける。
「っと、そうだった。依頼を達成しないとな」
ここまで来たら、依頼も達成したい。そう考えた俺は真っ赤な籠手を拾い、先ほどの横穴に近づく。
横穴の中は悲惨だった。
頭が破裂しているであろう女。
殴られすぎたのかもはや誰かわからない程に原型が取れてない男。
そして、最後に全身を骨折しているのか体が変な方向に曲がっており、血を吐いている昨日話しかけてきたリーダーの男の子。
無事だったのは、胸が大きいと昨日思ってた女の子だけで、息をしているのはリーダーの男の子だけだった。後はもう死んでいるだろう。
「これは……あまりにもひどいな。」先ほど守護者に勝った達成感が吹き飛ぶほどだった。
「おい!とりあえず、そこの男の子を運んで帰るぞ!お前は歩けるか?」
「は、はい! 一応歩けます!」
<水導>の術で男の子を回復させながら慎重に運んでいく。
だが、これは、間に合わない可能性があるぞ。
そこで俺は先ほど倒した守護者のことを思い出す。守護者の後ろには何らかの装置と扉があったはずだ。あれでダンジョンの入り口まで帰れるのではないか。
「こっちだ!」女の子にそう呼びかける。
「え? そっちは反対ですよ!」
「守護者を倒した今ならあの装置が使えるはずだ!一か八かあれを使ってみるぞ!」
「危なくないですか!?」
反論を受けたが、どうせいつかは検証しないといけないんだ。なら今でいい。そう考え、女の子と装置に入り、起動する。
恐らくだが、これはダンジョンのショートカットで間違いないはずだ。先ほど扉の先をちらりと覗いたが、まだダンジョンは続いているようだった。
ゲームで言うなら、あの鬼はまだこのダンジョンの『中ボス』だったてことだ。
そして、装置のなかに光の粒子がたまっていく。装置の中が光の粒子でいっぱいになったとともに俺たちは浮遊感を一瞬感じた。
浮遊感を感じたのもつかの間、目を開けるとそこはダンジョンの入り口だった。
「本当にショートカットのための装置だったとはな……」
転送装置とでも呼ぶべき代物から出て、後ろを振り向くと、ダンジョンの入り口すぐそばに守護者のフロアと同じ装置が出現していた。
「流石にこれはすごいな。」乾いた笑いが出る。いくら何でもオーバーテクノロジーすぎるだろう。
ダンジョンから出てきた俺たちに気づいたのか、大人たちがやってくる。
俺が担いでいる男の子と、一緒に出てきた女の子を見て察したのか、もう泣き崩れている人もいた。
俺に依頼してきたおっさんの娘は、俺が連れてきた女の子だったようで、俺にお礼とどんな状況だったかを聞いてきた。
「他の子たちは……」
俺は首を横に振った。それだけで伝わったようだ。
その後、救急車が呼ばれ、遺族に「報酬は弾むから頼む。」と土下座までされたので、ダンジョンに残った死体を嫌だったが運んだ。
帰るときにもう一度、女の子と大人からお礼を言われてから俺は帰った。
「残った子たちはどうするんだろうな。」なんてことを色々と考えてると、ダンジョンに潜るような気分じゃなくなったため、数日潜ることを止めていたが、俺にはそれでもダンジョンしかないと思い再開した。
ダンジョンに向かうと、入り口には意外な人物がいた。
「あっ! もうダンジョン潜るのやめちゃったかと思いましたよ!」
そう、あの時一緒に帰還した女の子がいた。
「どうしたんだ?」
「どうしたんだって、ダンジョンを一緒に潜る仲間にして貰うために待ってたんですよ!」
顔を少し怒り顔にしながら、あんな事があったなんて事を思い出させないくらい明るい声色だった。
「ダンジョンに潜るってあんな事があったのにか?親御さんだって止めるはずだ」
「確かに、止められました。でも、私たちはこれまでずっと四人で仲良く高校まで過ごしてきました。それが今では二人だけ。残った海人君も精神的におかしくなっちゃって。だから、私がダンジョンを攻略して安心させてあげたい。死んだ二人のためにも」
あまりにも心強い言葉と瞳に俺は何も言い返せなかった。見た目はおとなしそうなのに内に秘めてるモノのは強い。
「それに、お父さんを説得した時に助けてくれた人と潜るってもう言っちゃいました。仲間にしてくれないと私一人で潜っちゃうことになりますよ?」
話には思う所があったが、正直言って最初に、このクソガキが……と思った。それはずるいだろ。
でも、俺にとっても悪い話じゃない。前々から、仲間がいればもっと楽なのにな。と思ってたし、こいつ見た目はいいし、ダンジョンでビビらない心も持っている。
「俺は厳しいぞ。それでもいいのか?」一応覚悟があるのかだけ試しておく。
「大丈夫です!」と強い返事が返ってきた。
「わかった。なら、もう何も言わない今日から俺とお前は仲間だ。よろしくな」
「はい! よろしくお願いします!」
「じゃあ、さっそく今からダンジョンに潜るぞ。まず最初にすることはだな……お前のステータスを見ることだな。」
そう、言うと女の子、天音夕は不思議な顔をして、復唱した。
「ステータス???」
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