第七話 「救出」
「娘を助けてほしいですか……?」
そう俺は疑問と共に答えた。
「あ、ああ! そうなんだ。昨日、ダンジョンに潜ったきり帰ってこなくて、高校生の娘で四人グループで潜っていたはずなんだが、知らないかね?」
俺は昨日帰る頃に、高校生のグループとすれ違ったことを思い出した。
「あー、もしかして男二人に女二人のグループですか?」
「そう! まさしくその子が娘だ!」
同調するように、後ろの大人たちも頷きながら近寄ってくる。
「と言うことは、後ろの人たちもその高校生の親御さんということですか?」
「ああ、まさしくその通りだ。お礼はする。探索者なんだろ?どうか助けてくれないか?」
そう懇願され俺は迷った。
今はあまり換金の手段がないためにお礼のお金が魅力的に映ったこともあるが、それ以上に迷宮での救難で、もし死んでいたとしたら難癖をつけられそうだったからだ。
「生きているかはわかりませんけど、わかりました。その依頼を受けましょう」
「ほ、本当か! ありがとう!」
だが、俺はこの依頼を受けることにした。
単純に金が欲しかったこともあるが、昨日すれ違ったときに「ダンジョンで死ねばいいのに」と思ったことが頭の中をよぎったからだ。別にどうでもいいっちゃいいんだが、寝覚めが悪くなりそうだし、どうせついでだと思い受けることにした。
「じゃ、そういうことなんで」
そう言い放ち、俺はダンジョンへと潜る。
無駄な体力を使いたくないために、一直線に守護者の元に向かいながら、高校生のグループを探す。
昨日潜って帰ってきていないということは、恐らく深くまで潜って迷ったか、何らかのトラブルでうごけなくなったか、死んだかったことだな。
そう考えて、高校生グループの痕跡を探る。
あいつら何回か潜っているようだったし、迷わないために何かしらの策は講じているだろう。
「お! ビンゴだ!」
何か痕跡がないかと探っていると、やはり<地術>で目印を立てているのを発見した。
「後は、これを辿っていくだけでわかるな。意外と簡単で助かった」
<地術>の痕跡を辿っていく。
「これで金が貰えるんだ。ぼろい商売だな。」そんな事を考えながら、辿っていくと明らかに昨日言っていたミノタウロスよりも強い魔物がいる深い層まで潜っていることがわかる。
しかも、このルートの先は……
「おいおいおい、この先は守護者じゃねえか。何でこんなとこまで来てるんだ」
そう、この先はまさしく今日俺が挑もうと思っていた守護者までの道だった。
思わず寒気が走る。
「流石の俺でも、守護者相手にガキの面倒見ながら戦うのはきついかも知れないな。最悪見殺しにするしかないか」
そう覚悟を決め、守護者がいるフロアへと踏み入る。
守護者がいる場所はこれまでのダンジョンと違い、明らかに広い。守護者はフロアの奥の方に存在し、その後ろの扉と何らかの装置を守っていたはずなのだが、今日は何故か奥にはおらず、フロア側面にある横穴を殴打していた。
「何してんだ?」
そう思い、じっくり観察していると、横穴の奥には何やら人が存在しているように見える。その人影に俺は昨日見たグループのリーダーであることに気づいた。
そして、どうやら相手側も気づいたのか、必死の形相で訴えてくる。
「横穴のなかに隠れてくれてるんだったら、戦闘中気にしなくていいし、守護者様もどうやらガキにご熱心の用だし、これはチャンスだな」
唯一ある懸念点は俺の本気をあいつらに見られてしまうことだが、まあいくらでも誤魔化しようがあるだろう。
そして俺はなるべく音を立てず、守護者に走り寄る。
守護者は体長四メートルに届きそうなほどの巨体であり、クマの様にごつい。その体は赤く、額には非本の角が渦巻いており、鬼のようだ。
その鬼に俺は後ろから飛び掛かり、振り上げた剣を首に向かって振り下ろす。
剣を振り下ろした瞬間、鬼は俺の存在に気づいた。だが、気づくのが遅かったせいか、かろうじて致命傷は防いだものの、腕と腹に深い傷を負ったようだった。
「おいおい。確かに他の魔物と違って、知性を感じるし、スピードもパワーもある。それに頑丈だが、大した敵じゃなさそうだ。正直拍子抜けだな」
鬼と相対してみて、そんな感想を抱いた。それこそこんな挑発じみた独り言を言う余裕さえある。
まあ、この程度なら余裕だな。さっさと殺すか。それにしても拍子抜けだな。俺が強くなりすぎたか。
そんな事を考えながら、首を跳ねようと近づく。鬼は首を跳ね飛ばそうとする俺の動きにもついてこれてないようで、目がこちらを向いていない。
「じゃあな」
そう言って、剣を振りぬこうとした瞬間。
「あぶない!!!」
そんな女の絶叫が洞窟から聞こえてきた。
そして、鬼が恐るべき反応速度でこちらを認識し、剣の側面を殴り、攻撃を回避した。
「は?」
抜けた声が漏れる。どう考えても致命の攻撃だったはずだ。回避できるわけがねえ。
そんな混乱した思考を見抜いていたのか、鬼は息着く暇もなく、先ほどよりも重く鋭い一撃を放ってくる。
「ぐっ!」
焦りながらも、ここ一か月で培った能力を活かし、一つ一つさばいていく。攻撃を防いでいるうちに、この豹変っぷりはいったいなんなんだ?という疑問が湧いて出てくる。
「その鬼は、最初は弱かったの! でも、攻撃を受けるたびにどんどん強くなっちゃって私たちは逃げる事しかできなくなったの! 後、その鬼は再生能力があるわ!」
そんな叫びがまた洞窟の方から聞こえてきた。
なるほどな。だから、あいつらでも挑んだってことか。大方、倒せるかもしれないという欲にでも目がくらんだんだな。
鬼はよく見ると少しずつ再生していた。
再生しているのに強さは変わらないとかチートだろ。なんて思ったが、それでも。
「それでも、俺の敵じゃないな」
口元をにやりと歪め、心の中で思う。
技能発動。<範剣術>一の奥義。雷閃。
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