第十話 「扉の先」
「や、やっとレベル50になりましたか……」
ダンジョンの中、やっとレベルが50になったからか、地面に倒れた天音が俯きながら言う。
思ったよりも時間がかかったな。一日、二日くらいで終わるかと思ったが、まさか三日もかかってしまうとは……
あの後、俺たちはまず、天音の親に「ダンジョンに潜るから、しばらく帰らない」という旨を知らせ、今までダンジョンに籠ってきた。
そうなのだが……
天音夕
Lv50
STR 97
CON 137
DEX 115
INT 188
POW 140
point:60
<技能>
錬棒術:8 (+3)
錬理術:5 (+2)
錬気術:4 (+2)
錬投術:3 (+1)
錬拳術:1
<術>
水術:7 (+4)
地術:8 (+4)
<耐性>
物理耐性:3 (+1)
<特殊技能>
幸運:5 (+2)
この三日間の成果がこれだ。
戦闘や止めの殆どを天音に譲ったから、俺のレベルは一も上がっていない。
天音の基礎値、<技能>や<術>── 言わばスキル構成も後衛寄りだからSTRが三桁を超えてないのは、しょうがないんだが……
「思ったよりも成長しないな」
地面にうつ伏せで倒れていた天音が、その声を聞くと「ビクッ」っとした。
「これは俺と同じレベルくらい。いや、それ以上にレベル上げしなくちゃだめか?」
天音がさらに「ビクビクビクッ」っと震えた。
そして、いきなり「ガバッ」っというような擬音がつきそうなくらい、勢いよく俺の目の前まで起きてきて、
「いきましょう! 守護者の扉の先へ! 最悪基礎値が足りなかったらpointが60もあるんだし使えばいいじゃないですか!」
「いや、pointはなるべく<特殊技能>などのスキルに振り──」
「あー! あー! とりあえず行ってみましょうよ! 実はもう十分かもしれませんし!」
いきなりそう言いだして、俺の腕を取り無理やり連れてこうとする。
「お、おい」
「なんですか? もうレベル上げはコリゴリです! はやくこんなダンジョンクリアしてしまいましょう!」
「いや、ダンジョンの奥は反対だぞ?」
「…………そういうのはもっとはやく言ってください」
そうこう言い合いをしているうちに、守護者がいた扉の前まで来た。
「改めてみると、扉大きいですねー。こんなのよく開けられますね」
「まあ、基礎値がちがうからな。」と言いながら、扉を開ける。
もはや人外以上の力を得た俺にとっては大した作業じゃなかった。
前にチラリと覗いた時とは違い、扉を全開くらいまでに開けたせいか、どこからも「ギギギッ」という音が聞こえてくる。
扉が明けた先には、これまでのようなじめじめとした洞窟ではなく、きらきらとしたクリスタルのような洞窟が待ち構えていた。
「うわー。綺麗……」
確かに、女の子だったら見とれるくらい神秘的かも知れないが、俺はここから更にダンジョンの難易度が変わるのではないかと警戒して観察していた。
その瞬間、洞窟の奥から何か来るのを<教気術>で察知した。
「おい! 何か来るぞ!」
「えっ、どこからですか?」
「上だ!」
上から、蝙蝠のような魔物が降ってくる。
全長は1メートルくらい。見たところダンジョンの入り口で付近で見かけた魔物と似ていたが、全身がクリスタルで覆われており、鋭いかぎづめを持っていた。
俺は前に出て、迎え撃つ準備をした。
すると、相手もこちらを狙いに定めたのか、上空から急降下し、そのクリスタルに覆われた鋭いかぎづめでこちらを串刺しにしようとしてきた。
串刺しにしようと蝙蝠の魔物が降りてきたときに、俺は<教気術>で体を強化、相手の動きを把握し、<教理術>で体の動きをサポートしながら、どう動けばいいのかを予測した。
予測した後に、剣を構え<範剣術>を使いながら、すれ違いざまに蝙蝠に一閃。
胴体を真っ二つにしたものの、剣と相性が悪かったのか手のひらに嫌な手ごたえが残った。
「倒すのは難しくないけど、これは剣じゃ厳しいかもな」
さすがにミノタウロスからドロップした剣だったためか刃こぼれこそしなかったが、何回もこんな固い相手と戦ってると剣が駄目になってしまう可能性が高い。
「どうします? 私が魔法──<術>で倒しましょうか?」
「いや、一応違う武器もあるっちゃあるし、魔法も使えるからいいんだが……」
これまでダンジョン攻略をしてきた中でいろんな武器をドロップさせてきたおかげで武器には困っていない。それこそ天音に貸してる杖だって俺がドロップさせたやつだ。
「でもなー。他の武器だと<技能>が育ってないんだよ。剣術以外で使えそうとなると槍か拳だし」
「なら、殴ればいいんじゃないですか? ほら今も前にあの鬼からドロップした籠手をつけてますし」
「まあ、そうなんだけどさ……」
<範剣術>せっかく育てたのにな。ボスのときは剣を使うとしてそれまでは我慢するか。
「そうだな。お前の言う通りだな。当分はこの籠手を使うことにするわ」
「もしかしたら、守護者がそれをドロップしたのにも意味があるかもしれませんしね」
そんな都合のいいことがあるか? いくらここがゲームみたいだからといって、きちんとした現実なんだからな。
そう思いながら、洞窟を進んで行きながら、来る敵を籠手で殴り殺していく。基礎値の高さと、この籠手についている効果か敵がトラックに跳ねられたかのような衝撃を受けながら死んでいく。
「えぐいですねそれ。」
敵の死にざまを見た天音はそう俺に言ってくる。
「前々から聞きたかったんですけど、なんで<術>を使わないんですか? 私でさえ<術>を使えばここの敵を圧殺できるくらいには余裕なんですよ? 朱雀先輩ならもっと簡単に省エネで倒せるんじゃないですか?」
いつの間にか俺の呼び名が『先輩』になっているのが気になったが、可愛い女の子に先輩呼びされるのは俺の夢だったから別に気にしないことにする。
「確かにそうなんだけど、一応使わない理由があってな」
「え、なんですか? 教えてくださいよ」
そう言ってくる天音。俺は初めてできた後輩の質問を「秘密だ。」と言って誤魔化す。
「えー!」そんな声を上げる後輩をしり目にここ一か月の事を思い返す。
命の危険もあるし、泥臭くなることもいとわない探索者だが、可愛い後輩の女の子が出来て、こうやって仲良く一対一で話す機会に恵まれるなんて、一か月前の俺からじゃ想像もつかなかった。
今、失った『青春』を体験してるだけでも、危険な目に合う価値があるかもな。なんて柄にもなくしみじみと思った。
その後は、ダンジョンに潜りながらも、一旦ダンジョンから出て家に帰ったりしながらダンジョンを深くまで探索していった。
二週間後には、次の守護者の場所を見つけ、そしてそれから更に二週間後には、俺たちはレベル上げを入念に行い、装備も完璧に準備したうえで、次の守護者の場所まで戻ってきた。
「準備はばっちりですか? 先輩」
「当たり前だろ? 俺を誰だと思ってるんだ?」
守護者戦の前だというのに、そんな軽口をたたき合う。
「俺が前で、お前が後ろだ。くれぐれも俺に<術>を当てるなよ」
「わかってますよ……」
そう言う天音の声は打って変わって暗かった。
「どうした?」
俺はあえて心配の言葉を掛けなかった。前の惨状の事を思うと俺がここで何か言うのは無粋だと思ったからだ。
「先輩。この戦い必ず勝ちましょうね。死なないでくださいよ」
一種の悲壮感さえ漂わせてくるくらい覚悟のある声をかけてきた。
元よりレベル上げも、装備も入念に準備してきたから負ける要素なんて殆どないと思っていたが、何が何でも負けるわけにはいかないな。とより一層気合を入れることにした。
「わかった。お前の気持ち受け取る。俺は負けない。約束するよ」
「嘘ついたら針千本ですからね? 絶対ですよ?」
「絶対だ。」そう言って、指切りをする。
「指切りもしたことだし、行くぞ」
進んでいくと、さっきまでの甘い雰囲気が消えた代わりかのように冷たい気配を感じる。
守護者のフロアを進んでいくと、そいつが現れた。
全長は十メートルは越しているであろう巨体に、大きくてごつごつとした羽。全身はクリスタルで覆われており、長い首と噛まれたらひとたまりもないような牙を持っている。そう。まさしく古今東西で竜と呼ばれる見た目をしていた。
竜は俺たちが来たのを察したのか、丸まっていた巨体を起こし咆哮を上げた。
「グオァアアアアア───────!!!!!!!!!!」
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