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精霊の森の集落4

 朝になり美味しい朝食を終え、ノームの案内により少しだけ歩いた先にはノームだけが知っている出口とやらに到着した。

 と、森の奥をよく見てみるとイガグリさんが少し離れていた所に立っていた。

「先に到着していたんですね」

「いや、ずっと近くにいたっす。出てこれなかったのは単純にエルフやノームから俺は嫌われているっすから」

 単純に約束事があるからであって、イガグリさん本人が嫌われているとは思わないけどなー。

「んぼ。この先が影の者の集落んじぇ。オラはここまでんぼ」

「ありがとうね。野菜美味しかったわ」

「んじぇ! 味覚を持つ人間に褒められると作ったかいがあったというものんじぇ。また来てんぼ」

「そうするわ」

 手を振って見送った。

「では慎重に進むっすよ。パムレ殿はできればいつでも結界を張れるようにお願いするっす」

「……りょ」

 と言いつつ魔力の壁をさらっと張るパムレ。実際歩きながら維持するのって大変だと思うんだけどね。


 ☆


 少し進むと木の並びが少し変わった場所に到着。よく見ると黒装束の男が一人立っていた。


「止まれ」


 と、声が聞こえた。

「はは、久しぶりっすね」

「なっ! 貴様、どの面で帰ってきた!」

「事情があるっす。俺は道案内っすから集落には入らないっすよ」

「当然だ。貴様はすでにこの村の者ではない。それに、そこの者たちを入れる理由もない!」

「そこを何とかして欲しいっす。ガラン王国の姫が来てくれたんっす」

「何?」

 そう言って黒装束の男はシャルロットを見た。

「本物か。ふむ、わかった。その三名は通れ」

「ありがたいっす」

「貴様はそこで俺の目の届く場所にいろ」

「へーい。という事でシャル様、リエン殿、パムレ殿。あとはよろしく頼むっす」

「はい」

 イガグリさんを置いて前へ進む俺たち。



 突然足場が崩れた。



「なっ!」

「ほっ!」

「……ん」



 足場には深くて大きな穴があり……俺だけ落ちたんだけど。というか二人は綺麗に避けたんだけど!

「言い忘れてたっすけど、そこに罠があるっす!」

「普通先に言ってよ!」

 というかシャルロットはなんとなくこういう罠とかを避けることができる身体能力がありそうだけど、パムレは何で避けれたの?

「……パムレは基本歩かない。ふわふわ浮いてる」

 理解。というか俺の心と会話しないでくれる!?

「というか門番なら客を入れる時注意をしないかしら?」

「客? 何を言っている。事前に訪問の連絡もせずに来て客扱いするとでも思ったか?」



「え!? 事前に連絡を取る方法があったの!? なら先に言ってよ! ほら! 『教えて』!」



 ズカズカとシャルロットが門番に向って話しかけた。って、え! 大丈夫!?

 一応その人って影の者の一人で、暗殺とかの技を持っていると思うんだけど!


「か……各地に待機している者に伝言すれば、鳥を使った連絡方法でやり取りを行える……が……ガラン王国では武具屋の隣の民家に住んでいる」


 え!? 教えてくれちゃったよ!


「……おお。半分は怒りがこもっているけど、シャルロットは今『音の魔力』を使って相手に話しかけている」

 なるほど! つまり『教えて』と言って相手はそれに従っているわけだ。というか何で怒っているの?

「……まあ、リエンは気にしなくて良いと思う。今出したげる」

 ふわっと浮いて地面に着地。いや、さらっとやってるけどこんな小規模で浮遊の魔術をするあたり毎度ながら驚きが隠せない。

 と、同時に周囲に人の気配を感じた。


「事を荒立てるようならこの場で始末する。何用だ」

「お話をしに来たのよ。私はガラン王国のシャルロット」

 そう言ってシャルロットは母さんからもらった鉄の刃物。確か『クナイ』だっけ? を相手に見せた。

 すると集団は目で合図を送り、再度話し始めた。

「ふむ、こちらから来られよ」

 前後に黒装束の集団に囲まれながら、奥へと進む俺たちだった。


 ☆


 進むと村のような場所へ到着した。

 三角屋根の家が何個もあり、一番奥には大きな家があった。どうやらそこへ向かっているらしい。

「不思議な場所ね。今までの国とは違う……ここだけ文化が異なっている様に思えるわ」

「確かに」

 砂の地は無法地帯故に統一性がなかったけど、ここは着ている服装や家の模様に統一性があった。一つの国と言えば国だろう。

「ここが領主の家だ。失礼が無い様に」

「ありがとう。用が住んだら帰るつもりだから」

 そう言って家の中へ入る。

 紙で作られた扉だろうか。とても軽い扉を開けると、奥に人が座っていた。

 黒髪で背の小さい女の子が後ろ向きで座っている……? 領主の娘さんだろうか。

 黒で統一された服装だが、かなり軽装だと思う。シャルロットの最初に出会った時の剣士の鎧と比べると真逆と言った感じだ。



「誰じゃ」



 と、後ろ向きでその少女は声を出した。

「シャルロット・ガラン。ガラン王国の姫です」

「ほう、一国の姫がここへ何の用かのう?」



『のう、リエン様よ。我と話し方似ておらん?』



 セシリー今は黙ってて!



「探し物がありまして、ここにあるかお尋ねしたくここへ来ました」

「あったらどうする?」

「是非お譲り願おうかと」

 一瞬静まり返る。

「もし断ったら? 力ずくでも奪うか?」

「いえ、争いごとは起こしません。ただ」

「ただ?」



「ガラン王国の武器屋周辺だけ土地代を異常な値段に引き上げようかと」



 ……。



 セコくない? やり方が姫っぽくないよね!?



「ほう。どこで聞いたかわからぬが、すぐに引っ越せば良い。隠れるのは得意でのう」

「民の名簿の管理を行い、その人だけ税金を高額にすることも可能です」

「さすがは若い。金で解決する他に思いつかぬか。じゃが、もしそれをしてみろ」

 そう言って少女はこちらに体を向けて睨みつけた。

 白い肌に鋭い目。振り向いた時に動いた髪は鋭く動き、腰までぱたりと落ちていく。腰には武器のようなものを持っていて、それに手をかけながら一言。



「翌日貴様の母君は原因不明の病によって「……やあ」ひと月もしないうちにこの世から消えさいやあああああああああああああ! 何でマオがおるのじゃああああああ!」



 え?


 ☆


「……ということでこの人は『フブキ』。この『影の者』の集団の一番偉い人」

 パムレが普通に紹介を始めたんだけど!

「えっと、パムレちゃんとは知り合いなの?」

「……友達未満。何度か影の者たちとぶつかった時にパムレが『お仕置き』してたら顔を覚えた。魔力を持たない集団だから位置特定が出来なかったけど、ここにいたんだね」

 わあ……パムレのお仕置きってどういうのだろう。

「終わったのじゃ。こやつがこの地の在処を知ってしまった以上、もう滅ぶ。確実に滅ぶ。民が儂の世代で終わる」

「……パムレってそんな恐ろしい?」

 うん。三大魔術師の中でも破壊神だからね。

「せめてお前たちの話を聞いたら、村だけは助けてくれぬか?」

「良いわよ」

「ガランの姫に聞いておらぬわ! こやつに聞いておる!」

 と、パムレに指をさすフブキ。

「ふむ。ねえパムレちゃん。おいで」

「……?」

 そう言ってパムレはシャルロットの膝の上に乗った。


 そのままギュッと後ろから抱きしめながら頭を撫でていた。


「お、お前……」



「この子は私の手中よ。もう一度同じ質問をしても?」



 額に汗を流すフブキ。一度深呼吸して再度話し始めた。

「あのマオが! 上下関係がわからぬが、とりあえずわかった! そして先の発言は謝罪しよう!」

 ほっ。どうやら物事は進みそうだ。

「えっと……あれ? 何の編み棒だっけ……ごめんリエン。ちょっと代わりに話してくれない?」

「俺!?」

 唐突なご指名に驚いてしまった。

「何じゃ? お前が話すのか。だったら適当に聞き流そうかのう」

 と、フブキため息をついた。


 シャルロットがパムレを持って立った。


 シャルロットが俺の膝の上に座った。



 座った!?



『りりりリエン様!? どう見ても絶対これは間違っていると思うぞ?』

『ご主人……正直滑稽な姿だ……』

「俺だってわかる! これは絶対間違っているよ!」

「なんなんじゃお前らは! もう良い! わかったからその滑稽な状態で儂を見ないでくれ! 頭が三つこっちを見る光景は魑魅魍魎すぎて頭が追い付かぬわ!」


 とりあえずシャルロットは俺の膝からどいてくれた。というか女の子なんだしそういう行動は慎んでよ。あまりの自然な流れでやるもんだから、こっちも普通に流しちゃったけど今になって恥ずかしくなってきたよ。

「えっと、ここに『創造の編み棒』があると聞いたんです。どうかそれを譲っていただきたいのです」

「ほう。まあ大方あのミッドガルフの愚かな王子が言ったのじゃろう。確かにその秘宝はある。これじゃ」

 そう言ってフブキは頭に指をさした。

 二本の棒が髪に刺さっており、どうやらその棒のおかげで髪型が固定されているらしい。

「どこかに隠さないのね。一応秘宝ってことは理解しているみたいだけど」

「うむ。理解しておる。故に一番安全な場所にあるのじゃよ」

 何というか、剣の修行をやりたての俺でもわかる。このフブキという少女は多分強い。

「……リエンの想像通り。このフブキは間合いの達人で、目にも止まらない速さで敵を切ることができる。うかつに近寄ったらだめだよ」

 パムレが注意するという事は相当なのだろう。

「この髪飾り、いや、創造の編み棒は別に儂が持っている必要も実はない。村に秘宝の一つや二つ存在する方が格好がつくじゃろう」

「そんな理由で……どうしたら譲ってくれますか?」

「うむ? そうじゃな。この世は弱肉強食じゃからな。力ずくでも奪ってみるがよい。じゃが、この間合い……入ったらどうなるかのう?」


 次の瞬間、一瞬だが目を開けていたはずなのにまるで瞬きをしたような感じに陥った。何があった?


「リエン。床よ」

「へ?」


 シャルロットの言われた通りに床を見ると、そこにはフブキを中心に丸い円が書かれてあった。というか、切った跡?


「畳を交換せねばのう。まあ良い。ほれ、奪ってみよ」

「剣が……見えなかった?」

 強い。シャムロエ様とはまた違う方面でこの人は強い!


「わかった。パムレちゃん、ちょっと隣に置くね」

「……ん」



 シャルロットは膝に乗せてたパムレを持ち上げて左に座っていた俺の膝の上に乗せた。



「「(……)いや、絶対間違ってね?」」



「ごめん。左右間違えたわ。こっちこっち」



 そう言って俺からひょいっとパムレを持ち上げて、シャルロットから見て右にパムレを置いた。

「実に愉快じゃな。一体何をするのか見ものじゃ」


「そう? じゃあ期待に添えるように……うん。もう我慢できないわ」


 ……ん?


「……あー、『魔力供給』……は、原初の魔力には無理か」


 ……まさか!


「『ちょっと膝の上に来なさい。そして私にナデナデされなさい』!」


 その言葉にフブキは。



「ぬおおおおおおお!? 何故じゃ、何故儂の体は勝手にそっちに……か、刀も抜けぬ!? お主、何をした!」

 シャルロットはすっごい笑顔で膝をポンポンしている。

「『そんな物騒な物なんか捨てちゃって、ほら、早く!』」

「にゃあああああああああ! かたなあああああああああ!」

 ついには武器を泣きながら投げちゃったよ。本人の意思で投げたように見えるけど、その表情は悲しみに染まっている。

 そして。


「ふふ。良い子ね。よーしよーし。あら、髪飾りが引っかかるし、ちょっと外すわね。はいリエン、ちょっと預かってて」


 そう言ってシャルロットから髪飾り預かった……髪飾りというか『創造の編み棒』なんだけど!

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― 新着の感想 ―
[一言] これは相手が悪かったww
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