精霊の森の集落2
『悪あがきはもう終わりんぼ? では早速激務を』
「ちょっと待った!」
まだだ、まだ何か残っているはずだ!
彼らはプライドが高い。つまり、彼らよりも上の立場だと思わせないといけない。それはどうすれば……。
待てよ?
原初の魔力の中でも彼は鉱石と言った。あくまでゴルドさんの鉱石がそのヒントだとしたら、もしかしたら……。
「パムレ! 頼みがある!」
「……珍しい。何?」
「ゴルドさんが以前やってたんだけど、ゴルドさんの子供の『ガナリ』に話しかけることってできる?」
鉄の棒を地面に突き刺すことで、その振動を使って会話する少し特殊な方法。三大魔術師のマオならきっとできると信じて質問をした。
「……ほう。いいよ。ここに鉄柱を生成するね。ちょっと媒体が必要だからシャルロットのその鉱石を貰う」
「え、うん」
そう言ってパムレは術を唱えた。
『む? 何を唱えた』
「……ガナリと会話するための鉄心作成」
『ガナリ? ああ、あの孤島の。一体彼らと何のつながりが』
そう。
ゴルドさんの子供……って言われているガナリは、今母さんにこき使われている(と言っていた)。つまり、母さんの子である俺は実質立場が上……と思わせればここから出られる!
「……鉄心作成完了。あーあー、ガナリー。聞こえるー?」
パムレが地面に突き刺さった鉄心に話しかける。すると……。
『こらー! アルカンムケイル様! そこはもっと強火でひっくり返すのですよ!』
『すみませんのじゃ! 今火力を上げるのじゃ!』
「……リエン、ごめん。間違ってガナリの……いや、ゴルドの上司につながった」
「上司どころか頂点だよ!」
というかアルカンムケイル……原初の魔力の鉱石を司る神に間違ってつながるってどういうこと!?
『む? 一瞬リエンの声が聞こえたような?』
「あ、母さん? 聞こえる―?」
『リエン? はい、聞こえます。どこから声が聞こえてるのかわかりませんが』
「今ノームの集落に来ていてね。捕まっちゃった」
『わかりました。アルカンムケイル様、調理場は任せました。ちょっと一つ集落をホロボシニイキマス』
待って母さん!
今までに聞いたことのない声が聞こえたよ! いや、ワザと言った節はあるけども!
『ま、待つのじゃ店主殿! の、ノームか! ワシじゃアルカンムケイルじゃ!』
と、その声に大きなノームが反応した。
『んぼ? アルカンムケイル……様? 本物んぼ?』
『そうじゃ! その、察するに今捕らえている人間はワシの息子の友人じゃ。超丁重に扱ってくれぬか!』
『なっ!』
周囲の小さなノーム達が一歩後ろに下がった。
『あと早く開放しないと店主殿……ふ、『フーリエ』がそっちに駆け込むぞおおおお! 今そっちにいるのは『フーリエ』の息子じゃあああ』
『なーにワタチの名前を大声で言ってるんですか! お仕置きに野菜の千切りを明日までに習得できるまで今日は無休ですよ!』
『望むところじゃあああ! ワシが成長した姿を見て慌てふためくがよいいいいい!』
ボキッ。
あまりの大きな声で鉄心が折れてしまった。
「「「……」」」
うん。母さんもアルカンムケイル様も楽しそうで何よりだなあ。
さて。
「ノームさん。実はここにもう一つ鉄があります。おそらくもう一度鉄心を作ることができます」
そう言ってガラン王国の秘宝の短剣を見せた。
「同じ場所につなげて『母さーん。助けてー』と言ったら、どうなるでしょう?」
『全員! この人間様たちを解放! そして壮大なおもてなしをするんぼ!!!!』




