楽しい学園生活1
「席につけー。今日は編入生が三名入る。紹介するから静かにするようにー」
はーいという声が廊下に聞こえてくる。
現在俺とシャルロットとパムレは廊下で待たされている状況だ。
「そういえばシャル……は、本名を言うの?」
「魔術学校には貴族もいるって聞いたし、招待がバレてから面倒ごとが起きてもいやだから最初から名乗るわよ」
「そうなんだ。パムレは?」
「……え……普通に考えてパムレは名乗っちゃ駄目でしょ」
「うん。そうだよね。何なら先生よりも優秀だもんね」
あのパムレから冷静なツッコミを受けて少しショックを受ける俺。
気を取り直して頑張ろう。
『入れ―』
「はい!」
ガラガラと教室の扉を開けて入ると、二十名ほどの生徒が椅子に座っていた。全員同じ服を着ている。
パッと見た感じだと気が付かなかったかもしれないが、よく見ると気品がある生徒がちらほら。特に赤髪で長い髪の女子生徒は凄く印象的だった。
「じゃあ右から自己紹介をするようにー」
「はい」
最初はシャルロット。
「シャルロット・ガランです。ガラン王国の姫という肩書はありますが、気軽に誰でも接してくれると嬉しいです。よろしくお願いします」
全員が「え!?」と言った。
気品がある生徒すら驚いている。やっぱり一国の姫となると凄いんだろうなー。
「あのー、一つ質問を?」
先ほどの赤髪の女子生徒が手を挙げた。
「はい」
「一国の姫がどうしてここに?」
「魔術の勉強をしたいからです。ここへは正式な手順を踏んで来なかったので卒業時に受け取れる資格等は付与されませんが、勉強だけを目的に来ました」
おおー、凄い作り笑顔。それに対して男子生徒は見惚れとるぞ。
「あー、あとで休憩時間に質問はするように。次」
「……ん」
パムレが前に出る。
「……パムレ。以上」
「「「「マオ様じゃん」」」」
バレバレじゃん!
いや、パムレもそんな『どうしよう』って顔して俺を見ないでよ。どうしようもできないから。
「あの、し、質問をしても?」
「……ん?」
さっきの女子生徒が再度手を挙げた。
「どうしてマオ様が?」
「……パムレはパムレ。色々あって編入した。短期だから資格はとれないけど、みんなと仲良くなりたい」
さっきシャルロットが言った言葉を変えて言ったよ!
「あー、質問は後でな。次」
そして俺の出番……て、なんかすごくみんな見てくるんだけど。
「リエンです。隣と同じく短期で入学しました。仲良くしてくれると嬉しいです」
「「「「……」」」」
何も無いの!?
赤髪の女子生徒もそっぽ向いてるよ!
「……リエン。人間とは傷つけあって成長する。今のリエンは成長中」
「うう、悲しくなってきた」
と、そこへ先生が話し始めた。
「補足だがそのリエンは『校長の息子』だから、いじめとかあったら俺の首が飛ぶ。気を付けてくれ」
「「「魔術研究所の館長の息子!?」」」
「あ、あ、あのー質問を」
「却下。時間だから後にしてくれ」
「はう……」
すっごく複雑な気持ちが残る自己紹介を終え、簡単な今日の予定の話などが始まった。
☆
『シャルロット様! この後構内の案内を!』
『マオ様、是非お昼を一緒に!』
朝の連絡を終えた瞬間、一気に生徒が襲い掛かってきた。
『ちょ、リエンはどこよ! 逃げるの早くない!?』
『……うかつ。『認識阻害』を使って逃げた』
『なんですって!』
ふふふ。実は少し離れたところにいるけど、認識阻害を使って隠れているのだよ。
シャルロットと出会ったばかりの頃は俺の事をそれほど知らなかったため、『認識阻害』が通用しなかったけれど、今はしっかりと俺の事を知っているため探そうとすればするほど俺は見つからない状況だ。
……と、目の前に赤い髪の女子生徒が立った。俺は認識阻害を使っているため見えてないと思うけど……。
がっつり目が合っているんだけど……。
「見つけました! リエンさん。ご質問をさせても!?」
「なんで!?」
おかしい。俺の『認識阻害』は完ぺきだったはず。それなのにどうして?
よく見たら赤い髪の女子生徒も目が金色に輝いていた。これは『神術』を使った証拠だ。
「……おお、まさか自分に『心情偽装』を使って見つけた。ただ物じゃない」
「なっ!」
神術『心情偽装』は自分もしくは相手の心や考えを偽装するもの。相手の心を覗く『心情読破』とは正反対で、考えを無理やりねじ変える。つまりこの女子生徒は俺という存在……いや、心を無にして周囲を見て俺を見つけたのだろう。
「学級委員たるもの。これくらいは簡単です。ワタシはポーラ。ゲイルド魔術国家の王家の血を持つものですわ」




