ミッドガルフ貿易国城潜入作戦3
「……フーリエが油断するとはマオも予想外」
「そうですね。しかも息子とその友人に指摘されたとなればそりゃあ色白のフーリエも顔真っ赤になり、隠したくもなりますよね」
「っ!」
珍しく母さんは両手をぶんぶん振るも何も言い返せない。そして俺とシャルロットは冷たい視線を送り続けている。
「ねーねーシャルロット。母さんは確か『契約者や魔力が無い状態の悪魔は餓死していなくなるだけです』ってわかりきってますよーといった口調で語ったのって誰だっけ」
「店主殿ね」
「むーむー!」
おうおう、今までさんざん言い負かされたり、実力でも負けていたからなんだかとても新鮮だぞ。
とはいえこれ以上は親不孝ーなんて言われたり泣かれても困るのでそろそろやめるとして、これからどうすれば良いのか問いかけた。
「こほん。まずはミッドガルフ貿易国の地下に眠る悪魔『デーモン』についてですが、早急に封印か排除をする方向で行きましょう」
「賛成ですね。でもどうしてそんな悪魔を呼び出したのでしょうか?」
ゴルドの疑問にパムレが手を挙げた。
「……そこでマオ……もとい、パムレが証人を呼んだ」
『むー! むもー!』
「「「……」」」
誰!?
なんか袋に入ってて、明らかに『さらってきました』という感じの物体があるよ!
「えっと、パムレちゃん。これは?」
「……今袋あける。多分シャルロットは知っている」
ベリベリと袋を開ける。そこには。
「ぷはあ! 誰じゃこんな事をする愚か者は!」
頭に王冠。服装は立派なキラキラした宝石がついていて、明らかに……というか誰がどう見ても王様じゃん!
「ガルフ王!?」
シャルロットが最初に反応した。
「むっ! ……どこかで見たことが……はっ! ガラン王国の姫!?」
「お、お久しぶりです。その節はどうも」
「あ、いや、息子が失礼をって、どうしてここに!?」
すっごくややこしい事になったじゃん!
貴族が挨拶とかする場所ってもうちょっとちゃんとした所じゃないの? ここ俺ん家(正確には寒がり店主の休憩所ミッドガルフ貿易国店)だよ!?
「む、貴女は……寒がり店主の休憩所の店主殿」
何で母さんまで知ってるの!?
「……リエン。フーリエは実は有名人」
「ガラン王国周辺だけだと思ってたよ……」
パムレがポンポンと背中を叩いて励ましてくれた。きっと俺のツッコミ疲れが顔に出ていたのだろう。
「さて、ワタチの入手した情報だとミッド王子がミッドガルフ貿易国の城内に悪魔『デーモン』を使役しているとの事です。この件に関して何か知っていることはありますか?」
「なっ! そんな、し、知らぬ!」
「ふむ……ゴルド様、すみませんが『あれ』を」
「あはは、まあこの場で『あれ』を使えるのはボクだけですからね」
コツコツとガルフ王に近づくゴルド。
「な、何をするつもりだ!」
「安心してください。ちょっと……拷問させてもらいます」
ギラリと金色に輝くゴルドの目は、いつになく本気で恐ろしく感じた。
☆
今あった状況をまとめよう。
ゴルドはガルフ王に対して拷問を行った。それもかなり残酷で見ていられなかった。
どういう拷問かというと。
ガルフ王に大量の砂をぶっかけて顔だけ出た状態となり、それだけかなーと思ったら突然大量の砂がウネウネと動き出して、ガルフ王はすさまじい声を出して助けを求めていた。
要するに『全身くすぐりの刑』である。
「はひい。ふはあ」
「ふむ、どうやらガルフ王は特に関与していないみたいですね。ここまでやってもダメという事は、デーモンに関してはミッド王子の単独行動ということでしょう」
「ほうひっへひふ(そう言っている!)」
「ですが国の……しかも上層部が行ったとなれば責任は少なからずガルフ王にも行きます。その辺はどうするのですか?」
「はあはあ、正直息子が悪魔を使役していたことに関しては初耳だ。今すぐにでも止めたい。いや、それ以上に何故その行為に走ったのかを聞きたい」
「というと?」
「悪魔の使役はゲイルド魔術国家の魔術研究所により禁じられている。同時に静寂の巫女ミルダ様の決めつけでもある。何があろうとやってはいけない」
……。
……チラッ(母さんを見る俺)
……スッ(目をそらす母さん)
「と、とにかく、地下にいるデーモンに関しては被害が出る前に対処しましょう。幸い鎖につながれている状態で身動きが取れないみたいだし、今すぐ対処しましょう」
「へ?」
そこで母さんが少し驚いた。同時に焦り始めた。
「悪魔は……悪魔はズルい生き物です。そしてその悪魔を束縛するには魔力の結界だけ。鎖なんて人工物は……好機さえあればいつでも壊せます!」
その瞬間だった。
大きな爆発音がミッドガルフ貿易国の城から鳴り響いた。




