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ミッドガルフ貿易国城潜入作戦2

「こっちっすシャル様。ここならしばらく人は来ないでしょう」

「ありがとう。それよりも……どうしてイガグリが?」

 俺もシャルロットと同じ考えで、イガグリさんっぽい話し方するなーと思っていたけど、まさか本当にイガグリさんだと思わなかった。

「本当はもっとうまく隠れる予定だったんですが、まさかシャル様とリエン殿がここへ来るとは思わなかったっすからね。最後まで見つかる予定は無かったっすよ」

「いやいや、そもそも貴方はガラン王国軍でしょう? まさか裏切り?」

「違うっすよ。シャル様の影の護衛をしていたっす」



 ……まあ、普通に考えたらそうだよね!

 護衛を俺だけにして旅になんて出さないよねあの母親(シャーリー女王)は!



「にしてもイガグリにこんな特技があったなんてね。変装が上手すぎてわからなかったわ」

「へへ。実はこれはウチの家系の特技ってやつっす。シノビという技術で、隠密行動が得意なんすよ」


 さらっと言ってるけどそれってすごい技術だよね!? ただの愉快なお兄さんじゃ無いの?


「とはいえ、残念ながら実家から追い出されてしまったんで、すべてを知っているわけでは無いっすけどね」

「色々と複雑な事情があるのね。まあ良いわ。それよりもちょっと問題が発生しているみたいで、それを解決しに来たの」

「ええ。俺も話は聞いてしまったっす。シャル様が来なかったら素通りしようとも思ってたっすけど、放置すればきっとガラン王国にも影響があるかもっすね」

 城の中をコソコソと走り抜け、階段を下りる。と、突然イガグリさんが俺の前に手を出して足を止めるように無言のサインを出す。


(しっ、到着しやした。ここが潜入して一番怪しいと思った場所っす)


 奥を見てみると、巨大な怪物が沢山の鉄の鎖につながれていて、周囲には黒い服を纏った魔導士。そしてミッド王子の姿があった。


『ほら、これが今日の貴様の飯だ。食って強くなれ。そしてあのガラン王国の憎き長を倒して……ふへへ』

 巨大な怪物に鉱石を渡している。怪物は一瞬首を横に振るも、しぶしぶ鉱石を口に入れた。

『人間……またしてもワレを使役し、何かを企むか。歴史は繰り返す。また同じ光景が目に浮かぶ。最後の忠告だ。我を……我を今すぐコロセ!』


 なにやら複雑なやりとりをしているみたいだ。それに対しシャルロットは少し疑問を覚えた。

(ねえねえ、コロセって言ってるけどご飯は食べてるわよね。食べなければ良くない?)

(単純だけど、それって地味につらいと思うよ? あの大きな怪物もすっぱり倒されたいんだと思うけど……いや、待てよ?)

 ふと一つ思い出したことがあった。

(確か悪魔って精霊の魔力が好きすぎて自我を失うとか。あの鉱石にゴルドの魔力が少しでも宿っているなら、体が勝手に動いて食べちゃってるんじゃないかな)

(そうなの? というかよくそんなことまで知ってるわね)

 まあ、母さんが『空腹の小悪魔』とか召喚するから、最近悪魔術についてこっそり調べているんだよね。母さんには使うなって言われているから使うつもりはないけど、知識は時に戦力になると思って調べてたんだよね。

(つまり悪魔を使役してガラン王国を襲う。そして長……つまり女王様を倒してぐへへーと……ぐへへ?)

 俺とイガグリさんはシャルロットを見た。

(……何?)


((いや、これは我々が手を出してよい類の物だろうか))


 おお、声がはもっちゃったよ。


『ミッド王子! 魔力反応です! そこに誰かいます!』

『何!?』

(やば、どうしよう)

(仕方が無いっす。ここは俺が何とか話をつけるっすから、二人は協力してくれる人を呼んできて欲しいっす)

(でも)

(大丈夫っす。今の俺はミッドガルフ貿易国の兵士に扮しているから、多少の時間稼ぎはできるっすよ)

(……わかった。危なくなったら逃げるのよ)

 そう言って俺とシャルロットは足音を立てずにその場を去った。


 ☆


 協力してくれる人……一応心当たりはある。

 三大魔術師のマオ……今はパムレという名前の方が都合が良いかな。

 そして鉱石精霊のゴルド……超兼業だけどね。

 もしかしたらシャルロットのコネを使えばミッドガルフ貿易国の王であるガルフ王に直接会えば何かしらの発展はするかもしれない。

 しかし、それ以上に心強く、その分野において専門家が俺の周囲にはいた。


「で、ワタチの所に来たということですか」

「母さん。この国は一体どうなっているの?」

「リエン。忠告ですよ。『アレ』にはかかわらない方が身のためです」

 母さんの赤い目がギラリと輝きだした。これは本気の目だ。

「店主殿、恐れ入りますが、私からもあの怪物は野放しにできないものだと思います」

「シャルロット様まで……大丈夫なのですか? 一国の姫が他国の事情に挟まっては面倒が増えるだけですよ?」

「それは……」

 母さんは何かを知っているけど、あえて避けている?

「このまま放置していたらガラン王国まで被害が及ぶんだよ? もしかしたらタプル村もあの怪物が襲うかもしれない。母さんはそれで良いの?」

「それは良くありません。しかしワタチもちゃんと考えた上で話しています。リエンが言う『怪物』は高位な『悪魔』です。契約者や魔力が無い状態の悪魔は餓死していなくなるだけです」

「餓死?」

「はい。あの悪魔はかなり昔に召喚されたもので、その昔トスカ様達の力によって封印されました」

 かつてのガラン王国の王であり、シャルロットの遠い祖父だっけ?

「封印が何かしらの方法で解かれたとしても、契約者や養分となる魔力が無ければそのまま消滅します。母親から生まれた赤子と同然ですね」

「養分となる魔力ってどういうの?」

「そうですね。例えば精霊の魔力が込められた石とかですね」



「めっちゃ食べてたよ。鉱石精霊の魔力が入っている鉱石」

「食べてたわね。最初は拒否してたっぽいけど、結局食べてたわね」



「ゴルド様とマオ様をここへ呼びましょう。超緊急事態です」

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[一言] >「ゴルド様とマオ様をここへ呼びましょう。超緊急事態です」 wwwww このテンポのよさよ!!www
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