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ガラン王国剣術修行3

取り外しは可能ではあるものの、修行は続けましょうーという鬼の一言で、俺は今も足かせをつけて買い物を続けていた。

 一日つけていたからか、徐々に足かせ姿は慣れつつも、その重みはやはりつらく、なんだかだんだん重くすら感じるようになってきた。

 ただ、慣れてきたとは言っても目的の衣類を扱っている店に到着して、俺の服を選ぼうとしたとき、ボロボロの布切れを進められた時は凄く悲しい気持ちになった。

「奴隷でしたらこのお召し物がなかなか良いかと」

「あ、奴隷じゃなくて私の仲間よ。普通にガラン王国の住民権も持っているわ」

「なんと!? じゃあその足かせは?」

「お洒落……かしら」

「……あ、いや、好みは人それぞれですからね。どうぞご自由にご覧ください」

 という会話が隣で始まった時の俺はみじめというか入る隙が無くて切なかった。俺は奴隷でも犯罪者じゃない! ましてや変な趣味を持つ人間でもないぞ!


 という事件もあったが、ようやくなかなか良い感じの服も購入。太陽も沈みかけているから今日もここで泊まって、明日出発という感じになった。

「ただいまー」

 そんな声を出しながら店に入った。

 入る前までは全然中から物音もなかったし、てっきり母さんは休憩中かなとか思っていたが、まったくそうでもなかった。


「な、なんだ。先ほどの奴隷か」

「あ、えっと……」


 ミッド王子。そう言いかけたが、横からシャルロットに脇腹をつつかれた。きっと言ってはいけないのかな?

「まあいい。さて、店主殿。いい加減この店を閉じてもらおうか?」

「お断りします。この店や他の国でも同じ名前の宿というだけで安心するお客様もいる世の中です。安易に受け入れることはできません」

「僕が生まれる前からある店ということで多めに見ていたが、少し痛い目にあってもらった方が良いかな?」

 え、痛い目?

 キインと、周囲の護衛は剣を抜き始めた。いやいや、店の中で何やってるの!?

「これはガルフ王の命令ですか?」

「父上の名前を出すな! 父上の考えは古い。歴史を持つ店はそれだけで価値があると言い、今でもパムレット専門店やこの宿のような店が残り、他の屋台は未だに店を建てることができずに外で商売をしている。人間は平等でないといけないのだ!」

 ミッド王子も剣を抜いた。

 その時だった。


「異議を唱えても?」


 シャルロットが杖を持って母さんの前に立った。

「お、お前はさっきの奴隷の主人? 何用だ」

「何というか、貴方の言葉にはところどころ疑問があります。まず歴史がある店が残っていて、他の店は屋台を出さざるを得ない。この状況を作り出しているのはミッドガルフ貿易国の政策からじゃないかしら?」

「何?」

「自身で言っていたでしょう。店を建てるには多額の資金が必要だと。そして屋台は定期的に場所を変えないといけない。確かにこれで儲かる店も出るでしょうけど、場所を変えるまでの期間が短すぎる。手間暇がそのお金にそぐわないと思うの」

「素人が何を」

「そうよ。私は商売については素人よ。でも、建物や敷地の金額を緩和したり、補助金を出すことも国はできるはずなのに、どうしてそれはやらずにこの店だけをつぶそうとしているのかしら?」

「なっ!」



 ……なんかすごくしっかりしたこと言ってる気がするけど!

 いつもふざけているシャルロットとは思えないよ!



「うぐ、五月蠅い小娘だ。こいつを反逆罪で捕らえろ!」

「なっ!」

 まさかの逮捕宣言!?

 ミッド王子が言った瞬間後ろの護衛が数名剣を構えた。

 その瞬間だった。


「……こうしてミッドガルフ貿易国はガラン王国の姫を捕らえてしまい、戦争になったのでした。めでたしめでたし」


 パムレが奥の扉から現れた。

「あ……貴女様は!」

「……騒がしくて眠れない。何かと思ったらガラン王国の姫の逮捕という歴史的瞬間を見てしまった。これはミッドガルフ貿易国の存亡にかかわる。よってパムレ……いや、『マオ』はここを出る」

「待ってください! って、姫!? え!?」

 ミッド王子がシャルロットをじっと見た。


「思い出したアアアアアア!」

 

 そして、俺は目を疑った。

 

 残像が見えた。



 いつの間にかミッド王子は土下座をしていた。



「すみませんでしたあああああああ! どうかこのことは父上に言わないでくださいいいいい!」


「嫌よ」



「あああああああああああああ!」



 バタン。


「ちょっと、王子!? し、失礼しました!」

 駆け足で外に出ていったミッド王子を追う護衛達。

「ふう、パムレ様が泊まっていた時で良かったです」

「……ん、だけど最近ミッドガルフ貿易国の状況が少し変。おそらく王族間で何かあったのかもしれない」

「ふむ、ならば調査するわよ!」

 シャルロットが目をキラキラと輝かせて言った。

「調査って、どうするの?」

「夜に城に忍び込むのよ!」

「忍びって、どうやって? 俺、そんな足も速くないし、シャルロットについて行けるほど動けないよ?」

「そうかしら?」

 シャルロットは俺の足かせに触れた。足かせはガシャンと音を立てて落ちた。

「こっそり聞いたんだけど、その鉱石の足かせは『鉱石精霊特性特訓器具』らしくて、日が暮れるころにはとてつもなく重くなっているらしいわよ? つまり今の貴方は一時的にすごく体が軽くなっている(ような感覚になっている)わ!」



 ……。



 どうりでもう動けないレベルで足が痛むと思っていたよ!

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[一言] 王子の熱い掌返しwww >「嫌よ」 www
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