大臣選挙4
完全に先代王と雑談しただけの時間を過ごしてしまった。
そこら辺の貴族よりも恐れ多い事してない? 大丈夫かな俺。
とりあえずシャルロットと合流したいし、今どこにーあ、ラルト隊長だ。
「ラルト隊長こんにちは」
「ぶっ! リエン殿!?」
え、すげー驚かれたんだけど。
「一般の方が城を徘徊されると兵としての怠慢が疑われるので、せめて近くの兵と一緒に行動してくれません!?」
「やっぱりそうだよね! 俺が悪かった!」
何度も来た城だったから普通に行動しちゃってたよ。
「一応マオ様がいらっしゃるので兵たちは見逃したのでしょうけど、リエン殿だけだと不法侵入で捕まりかねないですからね」
すごい心配してくれてる。ラルト隊長って顔は怖いけど優しい人だよね。
「じゃないと『城に不法侵入して逮捕……の連帯責任で逮捕』という罪が増えるので」
「そうですよね! ラルト隊長の罪が増えますもんね!」
俺の罪はラルト隊長の罪なのである。うむ、世間って厳しいね。
「それで、皆様どちらに? 今は私が一緒についていきましょう」
「シャルロットと合流しようかと思って」
「あ、でしたら女王様の部屋ですね。こちらです」
☆
女王の部屋の前に到着。
「この中です」
「入っちゃって良いの?」
「特に入室禁止という連絡はありませんし、シャル様が居るのは兵に連絡は来ているので問題ありません」
では遠慮なくノックして。
「失礼しまー
「じゃるろっどおおおおおお! もうやだああああああああ! 大臣皆黒すぎいいいいいいいい!」
パタン。
「ラルト隊長」
「はい」
「がっつりシャーリー女王と目が合っちゃった」
「大丈夫です。あれだけ泣いておられていたら、きっと見えなかったはず」
ガチャ。
「逮捕」
「「ちょ!」」
☆
超不可抗力ということで後でラルト隊長は大説教という事が決まり、俺とパムレとパティは許してくれた。
「女王の部屋にノックだけで入るものではありませんよ」
「そうよリエン。一応ここ城なんだから節度をわきまえてね!」
なーにが節度じゃい!
「……リエン、パムレが特別に言ってあげようか?」
「お気遣いありがとね! でも良いよ今回は俺がどうせ悪いんだからー」
「リエンさん、どうして笑いながら涙を流しているんですか?」
それはね、色々な事件に巻き込まれ過ぎて疲れちゃったからなんだよ。
「こ、こほん。それでシャーリー女王、今日は一つ提案をしに来ました」
「提案?」
「はい。次の大臣で誰が相応しいか、俺たちが調査しようかと思いまして」
結構思い切った提案だと思う。
「一応女王としての立場として貴方の提案に意見を言わせてもらいます。リエンは確かに先日の一件でガラン王国とはかなり深い関係となったわ。でも一般人には変わりありません。そして今回は住民投票で決まるのです。住民の投票を無視して大臣を決めることはできません」
「投票は通常通り行います。俺たちは投票日までに不正を働く大臣候補を捕まえて候補から降りてもらう手助けをしたいだけです」
「候補から降りてもらう?」
「信頼できる人を大臣にしたい女王。誰に投票したいかわからない国民。つまり、一番誠実な人を残せば、その人に票が集まりますし、二人や三人残っても全員誠実でしたら問題無いと思います」
「なるほど。それで方法は?」
「こっちにはパムレがいます。今回ミルダさんからの依頼で来たみたいなので、大臣の不正を暴くのは彼女に超協力してもらいます」
「……まあ、それはやる」
俺の言葉に女王は少し考え、そして返事をした。
「よろしくお願いします。今後のガラン王国のために誠実な方を大臣に!」
☆
三日後。
俺たちは色々と動き回り、不正を働く大臣候補を次々と見つけ出し逮捕した。そして今、ラルト隊長の実家の喫茶店でお茶を飲みながら一息ついていた。
「凄いわねリエン。あんなに賑やかだったガラン王国が、一気に静かになったわね」
「うん。これは俺も予想してなかった」
まさか全員不正しまくりだったなんて、ガラン王国の貴族ってどうなってるの!?
「まあ仕方が無いわよね。最近貴族を入れ替えたりして色々と状況も変わったんだし、最初は良い印象でも後から欲が出てくる物よね」
あー、そう言えば四人の貴族の内三人が不正をしてたんだっけ。ん?
「そういえば四人のうちの一人は誠実だったよね? その貴族は?」
「私もその人が大臣になればって思って聞いてみたんだけど、あの貴族はどうやらかなり仕事ができてすごく適任らしいのよ」
「じゃあその人に任せれば良いじゃん」
「その貴族が抜けると慈善事業関連がまたとんでもないことになりかねないということで、泣く泣く大臣にできないそうよ」
もうガラン王国って国として崩れかかっているのでは?
そして慈善事業関連って母さんが絡んでるから何も言えないんだけど。
ため息をついて、目の前のお茶を一口。
そして別な席に目を向ける。
「パムちゃ! おかしおいしー!」
「……あむ。ん、おいしー」
「パムレさんズルいです! アリシアさん、ワタシにもください!」
「パーちゃ! はい!」
「わー! 美味しいです!」
「あい! セシリーちゃとフェリーちゃも!」
『ふむ、食は必要ないのだがご厚意は受け取ろう』
『味はわからないけどー、なんか和むー』
「ねえリエン。もういっそのことあの集団を大臣にして中心に私が入るという新しい組織を立ち上げた方が良いと思うのだけど? いや、もう姫特権でそうするわ」
「国が死ぬわ! 経費のほとんどがパムレットで消えるぞ!」
どの貴族よりも年齢だけ考えればアリシアちゃん以外俺よりもはるかに年上なのに、なぜか全員年下にしか見えない。
「すみません、うちの娘が」
と、ラルト隊長の奥さんが飲み物のお替りを持ってきてくれた。
「あら、追加はしていないのだけど」
「アリシアがお世話になっているので、これはおまけです。落ち着かせる効果がある飲み物なので、激務のシャルロット様にはぜひ」
「あら、私は激務というわけでは無いのだけれど、ありがとう!」
ラルト隊長の娘のアリシアちゃんの面倒を見ているのは小っちゃいズなんだけどね。
シャルロットがお茶を飲んで頬を緩めていると、アリシアちゃんがトコトコとシャルロットの近くに歩いてきた。
「シャルちゃ!」
「はーい、何ー?」
「なやみごとー?」
「うーん、そうなの。悪い人が沢山いて困っているの」
「たいへん! おとうさんにつかまえてもらおう!」
「ふふ、そうね。ラルトに……」
と、そこでシャルロットは何かを思いついたようだ。うん、嫌な予感。
「ねえ、奥様?」
「はい?」
「ラルトって、勉強は得意かしら?」




