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大臣選挙3

 翌朝。シャルロットと俺はパティとパムレを連れてガラン王国城へ行くことになった。

 パムレが来た理由は不明だが、パティはシャルロットが『可愛いから来なさい』という一言で怯えながらついてきた。

「あの、リエンさん。シャルロットさんって何者ですか?」



「「え?」」



 俺とシャルロットは今の質問に思考が吹っ飛んだ。そう言えばちゃんと伝えてなかったっけ。

「あ、ああ! えっと、シャルロットはこの国の姫だよ!」

「えええええええええ! お姫様だったのですか!? ちょ、膝の上とか乗っちゃったし、ご飯もごちそうに!!!!」

「良いのよ! 私が好きでやったことだしね!」

 そうだよね。いきなり城の正門前まで連れてこられてびっくりだよね!


 と言うか今日のシャルロットの目赤くね? 母さん程じゃ無いけど凄く痛そうなんだけど。


「シャルロット様。お帰りなさいませ」

 門番が剣を構えて挨拶してきた。

(わ……わー。本当にお姫様なんですね! ワタシ、もしかして不敬罪で連れてこられましたか? 膝の上に乗っかった罪で捕まりますか?)

(それは無いと思うよ。まあ、それ以上にくだらない理由で逮捕された人はいるからわからないけど)

 そう言えばラルト隊長の罪っていくつなんだろう。

「申し訳ございませんがシャルロット様、裏門から入っていただいても?」

「良いけど、本日母上との謁見は難しいの?」



「いえ。むしろ謁見してもらいたいです。謁見の間だと目立つのでシャーリー様の部屋でゆっくりお話しされてください」

「どうしようリエン。今すっごい帰りたい。多分母上に今会ったら愚痴を数時間聞かされる気がするの」

「今帰ったらガラン王国が滅ぶ可能性もあるし、あきらめて行こう。あ、俺とパティとパムレはトスカさんの部屋に行ってるね」

「ちょ! ズルくない!?」



 ズルでは無い。そもそも俺一般人だし、トスカさんに会うのですら特別扱いなのに女王様に会うとかそれこそおかしいでしょ。


 ☆


「ということでトスカさんこんにちは」

「おや、兵からお客と言われたので誰かと思ったらリエンでしたか」

 部屋に入るとトスカさんは楽器を持って立っていた。

「……や」

「マオも一緒でしたか。それとそちらは……」

 トスカさんはパティをじっと見た。

「へ!? あ、え!? トスカ様ですよね! え、何故!?」

 パティは驚いて俺の背中に隠れた。

「トスカさんの知り合いですか?」

「いえ、多分生前の僕を見たことがあるのでしょう」

「せいぜん? へ、何が何やら」


 ややこしくなりそうだったので詳細を省いて説明したら案外あっさり納得してくれた。


「そういうことでしたか。えっと、お話しするのは初めてです。遠くから見たことがあったり、国立記念日の祭りの演奏は毎年聴きに行ってました!」

「懐かしいですね。曲名は『奏者の呼声』。僕が必ず創立記念日で演奏していた曲ですね」

 え、トスカさんが生きていた頃の演奏を聞いていたって、パティ何歳?

 そう疑問に思ってたらパムレが俺に耳打ちをした。



「……補足するとお菓子の『パムレット』はパムレがこの世界に来る前からあった。だから多分パティはパムレより年上」

「マジかよ!」



 この世界って年齢が高いと背が小さくなる呪いでもあるんじゃないの!?

 母さんとかパムレとかミルダさんとかガナリとか!

 っと、心の中で突っ込んでいる場合では無い。一応目の前にいるのは先代の王様である。

「シャルロットがシャーリー女王に会いに行ったので、親子水入らずの時間を楽しんでもらおうかと思いまして俺はこっちに来ました」

「それで僕の所に来ると言うのもなかなかの大物ですね。いや嬉しいですよ。先代王って役割は結構暇なんですよね」

 そう言ってトスカさんは椅子を用意してくれて、そこに俺たちは座った。



「あ、紹介を忘れてました。この子どうやらパムレットを最初に作った子らしいです。パティと言います」



「近所のお友達が来たと思ったらとんでもない大物じゃないですか。粗茶じゃなくてちゃんとしたやつ用意しますから待っててもらって良いですか?」



 トスカさんが苦笑したぞ?

 結構レアな表情な気がする。


「けけけけっこうです! あのあのあの、ワタシは全然凄くないので!」

「それにしても気になりますね。パムレットの作者がどうして突然今現れたのでしょう?」

 た、確かに。そもそもパムレがこの大陸に来る前って相当昔だし、路地裏で見かけた時はボロボロの服装でお腹を空かせていた。

 パティと共に過ごした人が亡くなってから今までこの子は何をしていたのだろう。

「えっとですね、ちょっと言いにくい理由があるのです」

 まさか封印されてたとか、どこかで眠ってたとか?



「流石に数百年間『認識阻害』を使い続けてたらお腹が空いちゃって、魔力が切れた途端怖い人に囲まれてたところにリエンさん達が助けてくれました」



 言いにくいって『女の子的に』言いにくいってやつ!?

「『認識阻害』を? どうしてずっと?」

「それはこれです」

 そう言って頭に巻いていた布を取った。

「角……マオ、これはなんだかわかりますか?」

「……龍の角。彼女は龍族と呼ばれる種族で、それ以外は分からない。ただ一つ言えるのは、パムレットが作られた時代から今までずっと『認識阻害』を使ってたと言うと、魔力量はパムレとフーリエを合わせてもまだ多い」

 そうなの!? 母さんとパムレ超えなの!?

「わわっ、一つ補足です! ワタシは魔力量が多いだけで使える魔術は下級だけです。戦いとかあまりしたことないです! 三大魔術師のマオさんとは比べ物になりませんよ!」

 まあ見ている限りでは全然怖くないもんね。あ、パムレも見た目だけは怖くないし見た目で判断しちゃ駄目だね。あー、今パムレにすげー睨まれてるよ。絶対心読まれてるよ。ごめんって!

「ではどうしてずっと『認識阻害』を? お腹が空いたから解除されたとは言え、『認識阻害』をしていた理由は何でしょう」

「人間が怖かったからです……。パン屋さんで生活する前は凄く辛い毎日を過ごしていて、パン屋さんで生活が始まり幸せな日々を過ごしていましたが、あの人は亡くなりました。ワタシはまた色々な人から角の事でいじめにあうのかなって思い『認識阻害』で身を隠していました」

「パティ、絶対その話シャルロットにしたら駄目だからね。多分泣きながら抱き着いてくると思うよ」

 どんな辛い人生送ってるのこの子! 俺まで涙流しそうだよ!



「……リエン、もう遅い。昨日の夜部屋でその話をシャルロットにして、泣きながら一緒に寝てた」



「だから今日シャルロットの目が赤かったのか!」



 全く俺の隣をいつも歩いている姫さんは感情豊かだな!

「ではしばらくリエンと一緒に行動するということですね」


「え?」


「え?」


 ……。



「そうですね! うん、一緒だね! ちが、今のは俺悪く無くね!?」

 反射的に声が出たとはいえ失言だった。そうだよね、年齢は上でも女の子をその辺に放り投げるわけにはいかないもんね!

「ずみまぜん……あの、邪魔ならででいぎまずがら」

「むしろ大歓迎だから! ミッドガルフ貿易国にこれから行くし、一緒に旅しよう!」

「……パムレットの神と旅とかうらやま……ガラン王国の問題を治めたらマッハでミルダに報告して合流してやる」

「その執念をもう少しちゃんとした方向で役に立たせようね!」

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[一言] >「その執念をもう少しちゃんとした方向で役に立たせようね!」 それなwww
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