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大臣選挙2

 龍族。正直目の当たりにして俺は驚いていた。

 物語では時々出てくる『竜』もしくは『龍』という存在だが、実在するとは思っていなかった。まあ、神様がいるくらいだしいてもおかしく無いか。

『エルフやノームのような精霊とは違い、どちらかと言うと神と対となる存在。人間の容姿じゃがその角の所為で人間の住処に入れない。そう言った感じかのう』

「え、ちなみにガラン王国の住民登録って精霊とかはできないの?」

「エルフと人間の対立という歴史もあって、登録できるのは人間だけなの。角がある人間は……ちょっと厳しいわね」

 種族間の壁というやつか。皆仲良しというのは結構難しい問題なんだね。

「あの、助けていただいてありが『ぎゅるるるるるる』とうございます。ワタシはもう『ゴゴゴゴギュガギュゴゴゴ』大丈夫なので、ここで」



「そんなお腹を鳴らしてはいそうですかって去れないわ! それに貴女可愛いからこれから私が誘拐するわ!」



「ええ!?」


 瞬時にシャルロットは少女を持ち上げて、歩き出した。と言うかこの姫今誘拐するって堂々と言いやがったぞ!

「とりあえず店主殿の所へ行きましょう!」

「う、うん」


 ☆


 そしてガラン王国城下町店に到着。ガラン王国の城下町って結構広いのに、店の位置だけは迷わず来れるくらいにはなったことにちょっとした感動を覚えた。

「ただいまー」

「あ、リエン。お帰りなさいー」

 そして当然のように母さんもいた。

「シャルロット様もお帰りなさいませ。って、そちらの子は」

「お腹を空かせているみたいなんです。名前は……えっと……」

 名前聞いてないじゃん。まあ心情読破で知ることもできるー



「パティ様? 久しぶりですね」

「お久しぶりです」



「え!? 知り合いだったの!?」



 驚きだよ! というか母さん龍族と知り合いだったの!?

「結構昔にこの宿の隣でお店をやっていた方です。ご主人が亡くなられてから旅に出たみたいですが、帰って来ていたのですね」

 しかもご近所さんだったの!?

「母さんと知り合いならここに来れば良かったのに」

「いえ、店主さんには昔色々と助けてくれたので、これ以上迷惑はかけられませんでした」

「パティちゃんだっけ? なんて良い子なのかしら」

 ナデナデするシャルロット。

「とりあえず店主殿、何かお料理お願いしても良いですか? パティちゃんお腹空いてるみたいなんです」

「かまいませんよ。ちょうど今日の料理が大体出来上がったので持ってきますね」

 そう言って母さんは厨房へ行った。

 俺たちは空いている椅子に座り料理を待つ。


「そして当然のように膝上にパティを置くんだね」


「ここは可愛い子専用よ。異論は認めないわ」


 強引な姫である。とは言え姫の膝が椅子というのもどうなんだろう。

「あの、すみません。ワタシお金は」

「良いのよ私が払うから。ここで会ったのも何かの縁。楽しくご飯を食べましょ」


「うう……ありがとうございます……ぐす」


 突然泣き出した!?

「え!? そんな泣かないで! え、り、リエン! どうしよう!」

 そう言われても。

「はーい、料理を持って……シャルロット様? パティ様を泣かせちゃったのですか?」

「違います! えっと、どうしたのー?」



「うう……ここしばらく優しさに触れていなくて、涙が」



 俺まで泣きそうになってきたよ!



「はあ、相変わらずパティ様は生きるのが下手ですね。だから助言したじゃないですか。『パムレットの権利はパティ様が持つべき』だと」



 へ?



「母さん、パムレットの権利って?」

「あ……今の内緒ですよ。特にマオ様に言ったらとんでもない事になりそうなので」

 どういうこと?

「パティ様はパムレットを最初に作った人で、調理方法などの権利は亡くなった店の主人に渡したのです。その店のご主人は結婚もせず亡くなり、パムレットの権利はガラン王国が管理することになり、そこからミルダ大陸全土に広がるお菓子になったのですよ」

 想像以上に凄い人じゃん! パムレが聞いたら崇め称えるんじゃないかな!

「当時は幸せでした。ワタシは大好きな人と一緒に美味しいお菓子を作り、温かい生活が送れるだけで良かったのです。パムレットはあの人と一緒に作ったので権利とかお金とかはどうでも良かったのです。ですがやはり人間と龍族という種族の違いによりワタシとあの人は別れること……に……うぐ」


 やめてー! もうこれ以上話さないで!


「と、とりあえずご飯食べよう! その、パムレ……三大魔術師マオの耳に入らないうちにこの話題はやめよう!」


『ガタッ』



 ガタッ?



「……その……わざとじゃない。たまたま通りかかってたらリエンたちを見つけて、『認識阻害』を使って後ろから驚かそうと思ったら『パムレットを作った人』という単語を聞いて立ちながら気を失ってた」 



「「『『ぎゃあああああああああああ!』』」」



 いくら何でもあっさり再会しすぎじゃない!?

 二回目の旅もそうだったけど、パムレって暇なの!?

 あと精霊ズも一緒に悲鳴をあげてるよ!

「パムレちゃん! 久しぶりね」

「……それほど時間は経ってない。それよりもパムレット作った本人という話題がパムレ的に興味しかない」

「えっと、どちら様でしょうか?」

「……む? ん、マオはマオ。今はパムレって名乗ってる。パムレット大好き倶楽部会長」

 いつからそんな倶楽部ができたんだよ。

 というかパムレ一瞬眉をひそめた?

「……問題ない。知っての通りパムレは相手の心を読んで会話をしている。人間なら簡単だけど精霊や神と会話する時は少しだけ工夫が必要。『龍族』も精霊や神と会話する感じで工夫しないと言葉がわからない」

 そう言えばパムレってミルダ大陸の言葉を耳で聞いているわけじゃないんだよね。というか頭が良いんだったらミルダ大陸の言葉を覚えたほうが楽じゃない?

「も、もしかして三大魔術師と呼ばれている方でしたか! そんな方に好きと言われてパムレットもきっと喜んでます!」

「……パムレットの神様にそう言われたらパムレは悔いが無い」

「戻ってこい―」

 何も無い天井を見つめるパムレ。相変わらず自由気ままである。

「とりあえず冷めないうちに食べましょ! パムレちゃんも一緒にご飯食べない?」

「……ん。乗り掛かった舟。あとリエン、パムレは今回ちゃんとミルダからお願いされて来た。暇じゃない」


 心読まれちゃってた。


 ☆


 ご飯を食べ終えてちょうど日が暮れた。結構明るいうちからご飯を食べたのか―と思いつつ、部屋の布団を出したり荷物の整理をしていた。

「あ、お弁当箱返さないと」

『ギャー。預かるギャー』

「うお! っと、空腹の小悪魔(母さん)か」

 隣でふわふわと母さんの召喚悪魔の『空腹の小悪魔』が浮いていた。

「それよりも結構広い部屋だけど俺一人だけで使っちゃって良いの?」

『ギャ。問題無いギャ。今は大臣選挙で外からのお客が結構少ないギャ』

「ふむ、大臣選挙か」

 今も外は凄く騒がしい。

「母さんもどこかに一票出すの?」

『ここの所毎日ワタチの所に来て〇〇に入れろーと言われますギャ。正直疲れるギャ』

「そもそもどうしてこんな騒ぎになっちゃってるの? それぞれ応援したい人に投票すれば良いんじゃないの?」

『そもそも大臣候補がどういう人物か、城下町の人たちは分からないのギャ。だから『とりあえずここに入れてくれ』と名前だけ覚えさせる以外方法は無いのギャ』

 それでパティは恐喝みたいなことに遭遇していたのか。

『ちなみにこの件でシャーリー女王様は一番頭を抱えているギャ。選挙で決めると言ったのはシャーリー女王様なので、こんな騒ぎになるとは本人も予想していなかったみたいだギャ』

「悩んでいるのか。なら明日にでもシャルロットは顔を出すだろうし、様子を見てみるか」

『うーん、ワタチとしてはこの選挙にリエンはそこまで関与して欲しく無いギャ。これは王族の問題で、ガラン王国城下町の人間ならまだしもリエンはタプル村の人間だギャ』

 他所は他所。と言うことだろう。

「まあそれでもシャーリー女王は『一応』俺にガラン王国軍の剣術を覚えさせる手続きとかしてくれてたみたいだし、直接は関わらないようにするけどお礼するついでにちょっと話を聞くくらいは許してよ」

『まあリエンがそういうなら止めないギャ』

 そう言って母さん(空腹の小悪魔)は空の弁当箱を持って部屋から出て行った。


『のうリエン様よ。最近リエン様の母上の気が抜けて容赦なく我らの前に悪魔を出して来るぞ? 腰がやばいぞ?』

『もはや空気ー?』

 振り向くと精霊二人が仰向けで倒れてた。いや、多分三大魔術師と魔術研究所の館長という座を降りたから少し気が緩んでいるんじゃないかな。あはは。

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― 新着の感想 ―
[一言] パティちゃあああん!!!(ブワッ) そうか、あれから大分長い時間が経っていたのですね( ˘ω˘ )
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