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大臣選挙1

 タプル村とガラン王国のちょうど中間に位置する精霊の森。

 人間とエルフとの約束で、中央の道を歩けば危害を加えない……ということで今回で何回目だろう。

 というか精霊の森の中に『影の者』の集落もあるんだよね。そしてノームの集落もあるし、実はこの森って結構混沌としてね?

 と、そんなことを考えていたら森の中から人影が見えた。エルフかな?


「む? シャムロエ様とリエン殿? 奇遇じゃな」

「フブちゃん? どうしてここに?」

 タプル村にいなかったから旅立つ前の挨拶ができなくて少し寂しかった半面、ここで出会うとは思わなかった。

「道具が足りなくてのう。クワ等を持ってきている最中じゃよ」

 というか麦わら帽子と普段とは違う畑仕事用の服装を着こんでいて、全然元暗殺者とは思えないんだけど。

「私としてはもう少し小さい道具を持っていた方が可愛いわね」

「可愛さなぞ不要じゃよ。それより今日が旅立ちの日じゃったか」

「そうよ。フブちゃんはタプル村の畑の仕事とタプル村の警備をお願いね」

「主の命令じゃ。すさまじい魔獣が現れても死守しよう」



「すさまじい怪物(母さん)はすでにいるけどね」



「儂守る意味ある? 畑と田植えだけで良くね?」



 しまった。うっかり声が出てしまった。

「適材適所よ。店主殿は確かに強いけど、聖術とリエンにはめっぽう弱いから、フブちゃんは必要よ」

「俺に弱いってどういうこと!?」

 とは言えたまに俺関連で暴走するのは否めないけどね。

「そうじゃ、部下から一つ情報があったのじゃが、今ガラン王国は若干ピリピリしているようじゃのう」

「大臣選挙よね。店主殿から話だけ聞いているけど、それほどひどいの?」

「うむ、そもそも大臣という存在は民たちとほぼ接点が無い状態での選挙じゃからな。貴族や準貴族たちが民たちを脅して票を稼ごうとしているという情報は来たわい。まあ儂には直接関係ないが、主には関係するじゃろう」

「それは緊急事態ね……でも私が関わって良い話かわからないわね。王族としては関わった方が良いと思うけど」

「うむ。その辺の判断は主自身で決めてもらおうかの。儂はこれから野菜の収穫じゃからな」

 そしてトコトコと横を過ぎていくフブキ。

「影の者やリエン殿の母上経由でお主たちの情報は常に収集する。何かあれば遠慮なく呼ぶが良い」



「膝上が寂しくなっても?」



「一度呼ぶのに何か重大な条件をつけようかのう……では達者での」



 そしてフワッと消えていった。相変わらず格好いいと言うか、凄いと言うか。

「フブちゃんが近くにいないのは少し寂しいけど、私達もいつまでも頼りっきりじゃだめだもんね! がんばりましょ!」

「だな」


『うむ』

『そだねー』


 うん、完全に精霊達はわざと出てきたね。

「別にセシリーちゃんとフェリーちゃんを忘れているわけじゃ無いわ。二人は私の肩に乗って応援するという重要な役割をもっているからね!」

『我精霊ぞ? 大自然に影響も与える偉大な存在なのに、範囲が肩の上とは、かなり縮小してしまったのう』

『たまにはこういうのんびりも良いよねー』

 そう。今回は今までの原初の魔力の道具を探す旅ではなく、俺を探す旅。

 今までの旅よりもゆったりで静かな旅なのである。


 ☆


『ガルブンドラルガ様に一票おおおおおおおおおおおお!』

『ベインルート様がこの国を変えるうううううううううう!』

『ゴゴラドラゴ様こそ国民があああああああああああ!』



 急に俺の旅はうるさくなってしまった。さらばゆったりな旅。こんにちは騒がしい旅。

「凄い熱気ね。ガラン王国の国立記念日の祭りもこれくらい盛り上がりがあれば良いのに」

「いや、どう見ても荒々しい騒ぎだけだよ! お祭りのような楽しい雰囲気が感じられないよ!」

 正門を通ると何人もの人が俺たちに紙を配っていた。そこには大臣候補の似顔絵と功績がつらつらと書かれてあった。

「ごーろくなな。七人も候補がいるの? そりゃ荒れるわねー」

「姫さんやい、貴女の国だよね? 候補が誰かくらい把握しているんじゃないの?」

 他人事のように話してるけど、将来部下になる人がここから選ばれるんだよね?

「というか今更なんだけど、大臣の選挙って毎回こんな感じなの?」

「うーん、そもそも大臣の選挙ってここ数十年はやって無いわね。その家系が代々受け継いでなっているんだけど、選挙をする時ってその家系が何らかの事故で亡くなったり業務ができないと判断した時にやるって習ったわ」

「だからこんなに盛り上がってるのか」

 お祭りほど楽しい雰囲気は無いけれど、ところどころで楽器の演奏等が行われていた。

 と、ふと裏路地を見てみると何やら怪しげな男と布をかぶった女の子が見えた。

「リエン、気が付いた?」

「うん、ちょっと行こう」

 認識阻害を使って裏路地へ向かった。


 ☆


「この方に一票入れれば良いんだよ。わかったな?」

「ですから、ワタシはある事情で選挙には」

「ったく、話が通じないのか?」

「話を……聞いてください!」

 明らかに困ってるじゃん!

 と、そこでシャルロットが認識阻害を解いて男たちの前に出た。

「その子、困っているじゃない。そんなに一票が欲しいなら他を当たれば?」

「ああ!? こっちは貴重な一票で銀貨一枚貰える美味い仕事中だ!」

「票にお金がかかってるのね。ふむ、母上に言おうかしら」

「ああ? お前は何を……待て、あ……貴女は」

「とても面白い事を考えたわ。今ここで不敬罪で貴方を捕まえたら、その紙に書かれた大臣候補はどうなるかしら?」

「や、やめてくれ! いや、やめてください! もうしませんから!」

 男は地面に頭をつけて謝り始めた。さすがのシャルロットもここまでやられたら



「イガグリー。いるわねー。逮捕案件ー」



「はいよー」



 空からイガグリさんが降ってきちゃったよ!

 そしてあっという間に口に布を巻いて声を封じて綱で体を巻いたよ!

 不正を許さないシャルロットは今日も健在である。

「ご苦労様」

「いやー、まさか正門の兵士の報告が本当だったとは思わなかったっす。あ、リエン殿も久しぶりっす」

「こんにちは。というか仕事早いね」

「へへ、一応領主の下で修業しましたから」

 そしてゾロゾロと第一部隊の兵達が入ってきて、もう一人の男をとらえて連行していった。

「ありがとうございます」

 布をかぶった少女はペコリと頭を下げた。

「良いのよ。それに捕まえたのはイガグリだしね」

「どうするっす? 恐喝事件で書類を書くと貴女も同行してもらう必要があるっす」

「えっと、それは少し困ります」

「不敬罪で良いわよ」

 容赦ないなこの姫!

「了解っす! じゃ、またっす!」

 そう言ってイガグリさんは去って行った。よって少女と俺とシャルロットだけが裏路地に残されてしまった。

「言えない事情ということはこの国の人じゃないのかしら?」

「理由があって住民登録をしていません。昔優しい方に拾われて生きていましたが、すでにこの世には」

 亡くなったのか。

「そう、住民登録なら市役所でできるけど?」

「えっと、ワタシは簡単に住民登録ができないのです」

 と、そこでセシリーが俺の横に現れた。

『これまた珍しい。いや、そういう巡り合わせなのかのう?』

「どういう事?」

 セシリーは少女に近づき、頭の布を取った。

「キャッ」

 驚く少女。緑色の髪に褐色の肌。そして何より頭には二本の角が生えていた。目元もどことなく俺たち人間とは少し違う感じがした。エルフ……でも無いな。

『遠い昔に滅んだとされている龍族。こんなところで出会うとは我も予想しておらんかったわい』

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― 新着の感想 ―
[一言] 新キャラキターーー!!!! これは波乱の予感( ˘ω˘ )
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