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旅の終わりと……次なる目標

「たあ!」

「踏み込みが甘いねえ」

「たああ!」

「腰。ここが少し弱い」

「おあ!」

「うーん、今日はこの辺かねえ」

 その声と同時に俺は崩れ落ちた。

「情けないねえ。男ならビシッとしな」

「ティータさんの修行が厳しいんだよ!」

「そうかい? 明日はこの倍を考えていたんだが」

「それと一つ意見を言って良い?」

「何だい。修行に不満かい?」

「いや、修行は本当に嬉しいし、先生も凄いと思う。けどね!」

 そう言って俺は起き上がって右を見た。黒髪の少女が俺をじっと見ていた。



「何じゃ?」



「フブキも一緒に俺に剣術を教え込む時点でおかしくね!?」



 ちなみにフブキは田んぼを耕すついでという事で、手には大きな道具を持っていた。

「ガラン王国剣術と『影の者』の剣術の二つが学べて、リエンは恵まれているねえ」

「そうじゃぞ。それに主の命令により暗殺稼業ができなくなった今、畑や田んぼ以外での収入を得るにはリエン殿の剣術指南も儂らの生きる術なのじゃよ」

 マジか。俺の剣術指南でフブキにお金が発生しているんだ……手を抜くつもりは無いけど、余計に圧が感じるんだけど!

「とりあえず今日はこの辺さね。そろそろあんたの所の店も客が増えるだろうし、帰りな」

 気がつけば少し夕焼けが見え始めていた。

「そうします。ありがとうございました!」

 そう言って一礼して俺は家に帰る。『寒がり店主の休憩所』と書かれた宿だが、俺の実家でもある。


「あ、リエン。ちょうど良いところに。この仕込みをお願いします!」

「はいよー」

 ふむ、凍った魚を解凍して煮込みか。

「フェリー、お願いしても?」

『はーい』

 火の精霊フェリーには時々料理を手伝ってもらっている。フェリーに手伝ってもらうだけで木材を削減できたり、効率よく焼いたりできるから助かっている。

「リエン様、三番からチャーハンの注文じゃよ」

「今焼くねー」

 セシリーには前回同様に料理の配膳をお願いしている。接客だけなら心配する必要のないほどまで成長していた。

 セシリーに返事をして、俺は米を炒め始めた。

 ガラン王国城を出てタプル村に帰りもう一週間くらい。朝は洗濯や家事を行い、午後の明るい時間は剣術の修行。そして夜は宿の運営と、毎日忙しく動いていた。

 色々な冒険をしてミルダ大陸を見て回り、そして色々な経験を経てここに帰ってきた。正直すごく楽しかった。

 シャルロットは今頃姫としての勉強や業務を行っているのかなーとか時々思うけど、まあ彼女なら大丈夫だろう。



「リエンー、二階の布団の入れ替えが終わったわ」



「あいよ。んじゃあ次は水を……」



 目の前の金髪少女と目が合った。



「あ、今日からお世話になる新人店員のシャルロット・ガランよ」



「おーこら母さん、詳しい説明しないと家出するぞこらー」



「それは困ります! もし家出したら逃げ場を無くすために海の地から大陸を消滅させてどんどん北上させてゲイルド魔術国家で確保するという作戦を実行しないといけません!」



 なんという母さんだ! 息子を捜索するために大陸破壊って相当ヤバイじゃん!

 しかもわざわざ南から消すあたり絶対魔術研究所に向かわせようとしてるよね!


 ☆


 夕ご飯の時間になり、ようやく一息。

 タプル村は基本泊まる客がいないため、食堂として使われているため、夜は俺と母さん以外人がいない。まあ、今は精霊達もいるけどね。


「で、どうしてシャルロットがここに?」

「すっごい説明を省いただけですよ。シャルロット様が所用で来ることになったのですが、時間を持て余してたみたいなので店の手伝いをしてもらってただけです」

「姫だよね!? 俺の予想だと今シャルロットって色々と忙しくなる時期だと思うんだけど!?」

「それに関しては私が説明するわ」

 そう言ってシャルロットは真剣な表情で俺を見た。一体何か問題が?



「先日の大臣による店主殿の不敬以来、上層部の怠慢が発覚したためガラン王国の貴族の見直しの前に大臣の再選出や従業員の再教育とかで大暴れし始めたから、大叔母様と大叔父様の命令で城の外に出ることになったの」

「前々から思ってたけどガラン王国情緒不安定過ぎない? 大丈夫なの?」

 まあ不敬関連は確かにあったし、フォローしきれないけどね。

「急に外って言われても困るし、だったら私が保有している土地があるタプル村に行って、色々と安全が保障されている店主殿の家にお世話になるのが一番だと思ったのよ」

「まあ、そういう事情があるなら仕方が無いか……」

 そう言って母さんを見た。

「と言うのは建前ですよ。どうせワタチの監視として来たのですよね? 全くトスカ様は心配性です」

「え、どういうこと?」

 話が全く読めないんだけど。


「昨日ワタチは『魔術研究所の館長』を辞職したのですよ。ついでに『三大魔術師』という称号もふさわしい人に譲って、今ではリエンと一緒で一般人です」


「え!? 何故!?」

 魔術研究所の館長を退職!? そして三大魔術師じゃ無くなったの!?

「ワタチは宿屋の店主という生きる術があります。ですが、こちらの世界に来たマリー様は職が無い状態なので、三大魔術師と魔術研究所の館長を引き継いでもらいました。正確には魔術研究所の館長に戻ったってなりますね」

 そう言えばマリーさんと輝夜ってこっちの世界に来て何をしているのかなーとは思っていた。マリーさんは魔術研究所の館長になったのか。と言うか戻った?

「え、それで母さんを監視する必要性がわからないけど」

 と、シャルロットに問いかけた。



「三大魔術師はミルダちゃん以外内政に干渉できない。つまり今の店主殿は『大陸全土に店を持っている大陸一影響力を持っている一般人』ってなるわね」

「面倒事モリモリじゃん! 今からでも三大魔術師に戻れないの!?」

「嫌ですよあんな面倒な称号。何かあったらすぐに駆け付けて問題解決しないといけないのですよ? すっごく妥協して魔術学校の校長だけはやってますけど、本当なら心置きなくリエンにお弁当を準備して剣の修行の前に『行ってらっしゃい』を言う毎日を過ごすつもりだったのですよ!」



 ここまで来ると怖いよ! 何となく今日のお弁当は少し凝った物が入ってると思ったけど、それが原因か!

「それに、三大魔術師に関してはワタチよりもマリー様の方が適任です。初代魔術研究所の館長だったマリー様の実力は人間のワタチを上回ると言われているので、パムレ様に抜け駆けされる前に最初に手を打ったというわけです」

 どんだけやりたくなかったの三大魔術師!

「ちなみにシャルロット、確か『三大魔術師』って昔存在した『三大魔術師』を基にしてトスカさんが作った制度だったよね?」

「そうね」



「トスカさんが『三大魔術師では無くこれから四大魔術師という制度にしよう』と言い出したら誰が候補に上がるの?」



「もちろん店主殿が真っ先に四人目になるわね」



「そしたらその日がガラン王国最後……いえ、『最期』になりますね」



 言い直したよこの母親!

「冗談はさておきそれはきっとありません。トスカ様はそもそもシャムロエ様を慰める集団としてワタチ達を選び、結果長年縛り付けてしまったのです。もしトスカ様がそういう提案をする場合は、それ相応の覚悟が必要だとわかっているはずです」

 つまりトスカさんですら母さんには逆らえないという事ね。

 正直こんな大それた話を田舎の宿屋でして良いのかわからないけど、まあお客さんもいないし良いか。



「……そして取り残されたパムレは今も自由を奪われている。フーリエ抜け駆けよくない」



 うお!?

 膝の上から突然銀髪の少女が現れたよ!

「パムレちゃん! 一週間ぶり!」

「……シャルロットがこっちに来ているとは思わなかった。おひさ」

 シャルロットとハイタッチして、空いた椅子に座りなおした。というか何故最初に俺の膝の上に乗った?

「パムレ様、来ていたなら言ってくれればパムレットを用意したのに。どうしたのですか?」

「……ちょっと待って、フーリエってそんなに優しかったっけ? え、もし本当なら遊びに来る時事前に連絡する」

 絶対今本題すっぽ抜けたよね!

「……こほん。今日はゴルドのおつかいで来た。はいお手紙」

 ゴルドさんから?

 疑問を浮かべつつ、パムレから渡された手紙を読んだ。


『お久しぶりです。ガナリから話は聞いたけど、まさかカンパネを助けるとは思わなかったよ。彼にはすさまじい認識阻害のような物がかけられていたから、助ける方法が無いに等しかった。でも君はやり遂げたんですね。

 さて、ここから本題です。フーリエは知っていると思うけれど、レイジがまた最近陰で動き始めました。すぐに何か問題を起こす気配はありませんが、少し気になる部分がありました。

 君はすでに原初の魔力については知っていると思います。そしてそこから生まれた火や水等の後発魔力についても知っていると思います。

 しかし近年、原初の魔力と同等の魔力が感じ取れるようになりました。

 全てが見つかったわけでは無いですが、君の知る魔力だと『運命』の魔力がどこかで観測されたそうです。

 レイジはどうやらこの次世代の魔力を探しているらしいです』


 レイジがまた何か悪さを始めようとしているのか。

「原初の魔力に関する道具を一か所に揃える方法が無い以上、レイジは別な方法で自分の夢をかなえようとしているのね」

「ゴルド様には申し訳ありませんが、これ以上レイジとリエンを近づけるわけにはいきませんね。どこからか依頼されてもワタチとしては断りたいです」

 実際危険人物だし、俺も関わりたくはないかな。

 と、続きが書いてあった。


『レイジの件については先日マリーと会った時に話をしました。魔術研究所総出で対応をするそうです。それとは別にリエンに少し関係ありそうな話があります』


 関係がありそうな話?



『リエンはどこから生まれて誰が本当の親なのか、真実を知りたいとは思いませんか?』

こんにちは!いとです!

さて、本作第二章はここで終わりとなります。

そして引き続き第三章へと移ることになりました!

実はここまで一話一話を長く、そして話数も多くなるとは思ってもいませんでしたが、次々と思いつく限りのお話を書いていると止まりませんね笑


引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです!

また、活動報告等も楽しく更新しております。ご感想やレビュー等をいただけたら天井に突き刺さる思いで嬉しいです!

これからもどうぞよろしくお願いいたします!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 第二章完結おめでとうございます! そしてこれまた気になる引きですね! 遂にリエン君の出生の秘密が……!?
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