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精霊とお話

 船が動き出して一時間ほど。

 パムレとフブキは船酔い対策のためにシャルロットの『音の魔力』で船酔いを和らげるために、個室に籠っていた。

 俺は何もすることが無かったためとりあえず甲板に出たけど。



「こう同じ風景が続くと暇だな」



 最初は広い海ーってことで結構ワクワクしたけど、さすがに一時間も揺られていると暇になるものだ。それにまだ到着まで時間かかりそうだし。

「あ、リエン殿。すみませんが予定よりも少し遅れそうです」

「そうなの?」

「風向きがあまりよく無くてですね。まっすぐ進むことができなくて左右に蛇行しながら進んでいるんですよ」

 先ほどから船員が忙しそうに動いていたけど、そういう事だったのか。

「時間はまだあるし大丈夫です。それに俺たちはついでで乗せてもらってるだけなんで」

「そんな。姫と三大魔術師が乗っている時点で責任重大ですよ」

 軽く笑って船員さんは頭を下げて持ち場に戻った。

 うん、話し相手が欲しいものだ。

『我がいるぞ?』

「おおー、それは助かる。というかフェリーは?」

『あやつはまだフブキの頭の上じゃ。海上は冷えるのでのう』

 うむ。そうなるとフブキの護衛ってゲイルド魔術国家と海の上は適していないのか。強いのにもったいないなー。いや、服装を何とかすれば良いのかな?

「ちょうど良いし、精霊だからこそ話せる話題とかないの?」

『うむ? 我の常識は人間の非常識じゃからのう。どれを話せば良いのやら』

「例えば『原初の魔力』とか」

『これまた難しい事を。うむ。原初の魔力は我も全部はわからぬ。種類とそれに纏わる神くらいは知ってるのう』

 精霊でもわからないことはあるんだ。

『そもそもこの世界を作り上げた魔力と呼ばれている『神』『光』『音』『時間』『鉱石』ではあるが、それに近い魔力なぞ沢山存在するのう』

「近い魔力?」

『うむ。『神』とも『光』とも呼べぬ存在で『運命』の魔力。『光』の対になっている『闇』もしくは『悪魔』の魔力。これらをどう区分けするかは決まってもおらぬし、神たちは興味も無いのじゃろう」

 運命の魔力や闇や悪魔。そう言えば『悪魔術』や『治癒術』って簡単に言葉では言っているけど、起源とかは不明だよね。

「そういえばセシリーって神様とかとは面識あるんだっけ? 出会った直後とかそんな話をちょくちょくしてたけど」

『うむ、と言っても通りがかった神に場所を伝える程度の関りしかない。あっちが覚えてくれるほどの印象を我は与えておらぬから、なんともいえぬのう』

「その中に『時』の神様はいるの?」

 次に探す秘宝は時の魔力が関係している。パムレが壊したという情報がある限り、解決策の一つとして時の神様にお願いするしか方法は無いだろう。

『うーむ、時の女神『クロノ』様は一番自由な方でのう。そもそもこの時間帯にいるかどうか……もしくは二人以上いるかどうか』

「どういうこと?」

『あの方はある意味一番神としての役割を全うしている神様でのう。鉱石の神、光の神、音の神、そして神の神。これらは人への干渉を好まず、放任主義なのじゃよ』

 放任主義って言って、今凄くチャーハン作ってる神様いるけどね。すごく干渉してると思うよ?

『しかし『時』だけは違う。そうじゃな……例えばリエン様よ。そこに二つの樽があるじゃろ?』

 指を刺された先には確かに二つ樽がある。

『一つは火薬が沢山入っているとする。そしてもう一つは何も入っていないとする。『火球』を放つとしたらどちらにする?』

「え、そりゃ何も無い方かな」

「うむ。ではそこで何もない方に『火球』を放ち壊したとする。そこでリエン様が『もしもう片方に火球を放ったらどうなるのだろうか』と想像し、何らかの方法で過去に戻って火薬入りの樽に火をつけようと企むとすると、クロノ様はその行為を止めに入るのじゃよ』

「え、どういう意味?」

『過去に戻ったことで生まれてしまった『樽を壊した場合の未来』と『船を爆破させた世界』の二つが生まれることで大変なことになるらしいのじゃ。詳しくはわからぬがな』

 うーん、内容が大きすぎて理解できないけど、食べ物で例えるなら今晩の料理で卵料理を作った未来と芋料理を作った未来の二つが生まれるとき、その音の神様は登場して阻止してくるという事か。

 まあ、そもそも時間操作なんてものはできないんだろうけどね。

「んじゃ少し軽いお話。これからガラン王国に帰って、その後予定では海の地。つまりタプル村を通っていくんだけど、セシリー的にはピーター君をどう思ってるの?」

『うむ? 面白い質問じゃな。そうじゃな……なかなか鋭い人間じゃ。気が付けば心情読破を使って我の正体を見破るということは、やはりリエン様の母上の弟子というだけあるのう』

 へー。そう言えばセシリーを精霊だと思ったのって心情読破を使って心を読めなかったからという理由でたどり着いたんだっけ。

 そう考えるとあの残念なピーター君もなかなか凄いんじゃないかな。残念の塊りだけど。

『まあ精霊と人間は契約の時点で運命は決まっておる。人間で言い換えれば精霊との契約は結婚と同等じゃよ。ピーター殿には悪い……とは思えぬのが精霊である我の感情ではあるが、それでも何かしらの詫びはしたいものじゃな』

「そっか」

 セシリーも色々と考えてくれていたのだろう。そしてピーター君に黙っていた俺も少し罪悪感もあるし、少し土産を持っていってやろう。

 と、そんな話をしていたら船員さんがやってきた。

「孤島の先で大雲が見えたので、大事を取って孤島で休憩します。急ぎだったりしますか?」

「いえ、大丈夫です」

「では船長に伝えますね」

 船員は立ち去り、船長に報告する。

「話相手をしてくれてありがとな」

『うむ。いつでも良いぞ。一生リエン様と付き合う事になるからのう』

 うーん。まあそうなんだけどね。


 ☆


 孤島に到着する頃にはなんとなく天気が怪しくなってきた。

「あ、やっぱり途中で上陸したのですね」

 そしていつもの母さんである。この状況に全く驚かない俺ももう染まっているのだろうか。

「ガナリ様も店番してますし、今日はゆっくりしてください。何やら強めの嵐が来そうです」

「……孤島限定パムレット」

「パムレちゃんも元気を取り戻したし、私は少しゆっくり休むわー。ふわー」

 あくびをするシャルロット。調子悪いのかな?

「シャルロット殿は儂らの酔い止め係りをするのにずっと話しかけてくれたからのう。音の魔力とやらをかなり使ってくれたのじゃろう」

 あ、そういうことか。


 そして寒がり店主の休憩所の孤島店に到着。


「え、リエンも私達の部屋なの?」

「俺も最初は色々と交渉したんだけど、部屋が足りないらしく『リエンなら大丈夫だとワタチは信じてますー』って母さんが言ってここになった」

 多少の雨なら船の中の寝室を使ってそこに船員さんを待機ということもできるらしいが、今回の嵐はかなり大きいらしい。

「まあパムレちゃんとフブちゃんを抱っこして寝れば一人分の余裕な空間はできるし大丈夫かな」

「……え、一つの布団に三人入るの? だったらパムレ天井にでも張り付いてるよ?」

「待て魔力お化け。それは儂の技じゃよ。それなら儂が天井に張り付くぞ」

「まあまあ。ここは一つリエンが安心して眠れるようにこっちも気を使わない感じで寝ましょう」


 いや絶対シャルロットの私利私欲のためだよね!


 とはいえ、孤島の宿は他の国の宿屋よりも少し小さく、部屋の数も四つ。他三つに船員さんが入って結構ギリギリらしい。

「大雨が来るみたいだし、水浴びも禁止されちゃって少し気持ち悪いわね。あ、魔術で洗えばいいのかな?」

「できなくは無いだろうけど、すっごい冷たいと思うよ? それに普通の水よりは乾くの早いけど、それでも床は濡れるだろうし」

「ほら、すぐに火の魔術で乾かせば!」

「それができるのはパムレくらいだよ」

 確かに最近のシャルロットの魔術に関する力はさらに強くなりつつあるけど、まだ基礎的な部分がわかっていない感じでもある。

「うーん、よくよく考えたらそうね。そもそもリエンがいる状態で体を洗うのは嫌ね」

「まずその答えを先に言わなかったからこっちはハラハラしてたよ」

「でも軍の訓練をしている時は緊急時の着替えは男女関係ないし、大怪我を負った時なんかは容赦なく鎧をはぎ取ったりするから、私はそれほど気にならないけどね」

「俺が気にするから! 女の子なんだから少しはその辺を気にしてよね!」

 何で俺がその辺を注意しないといけないのだろう。

「うむ、リエン殿は女子の裸体を見て嬉しくないのかのう? 儂はまだ成長期故にその技を持っておらぬが、暗殺術では時に色気を使うこともあるぞ?」

「うーん。なんというか……ねえ」



『リエン……ダイジョウブデスヨネギャー』



「後ろで『空腹の小悪魔』がジッと見ているんだよ?」



 冗談でも『女の子の裸だやっほい!』なんて言ったら母さんにぶっ飛ばされるよ!

「……心中お察し。それよりもフーリエはもう少し息子離れするべき。リエンは無意識に親離れできていないのはその所為」

『ギャギャギャ! べ、別にリエンの事が心配とは思っていないですギャー』

 と言いつつ頭の上に乗っかる空腹の小悪魔。こいついつもよだれを垂らしているから頭に乗っかると気持ち悪いんだよね。



『ぬああああああ! 悪魔の魔力がアアアアア!』

『セシリー姉様……これが……肉離れってやつー?』

「ちょっと母さん! 精霊達いるんだからちょっと気を付けて!」

『普通に間違えました。ごめんなさいギャー』



 そう言って空腹の小悪魔はふわふわと部屋から出ていった。

「はあ、そういえばガナリをまだ見ていないけど何しているんだろう。部屋でゴロゴロしてても暇だし少し宿内を歩いてくるよ」

「……ついてく」

「そう。私は少し寝るわ。あ、フブちゃんも寝るわよね?」

「何故か謎の圧力で拒否できぬ……」

 そう言ってシャルロットとフブキは布団へ入っていった。うーん、一応味方だけど元暗殺集団の筆頭だったんだよね?

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― 新着の感想 ―
[一言] >うーん、内容が大きすぎて理解できないけど、食べ物で例えるなら今晩の料理で卵料理を作った未来と芋料理を作った未来の二つが生まれるとき、その音の神様は登場して阻止してくるという事か。 つまりパ…
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