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ゲイルド魔術国家2回目10

 翌日。

 朝ごはんを食べ終えた後、ポーラが寒がり店主の休憩所へやってきた。

 お話があるということでとりあえず俺の部屋に連れてくることに。

 多分『蛍光の筆』関連だと思ってシャルロットも一緒なんだけど……。


「あの、ポーラさん、できればその膝の上のパムレちゃんと両肩のセシリーちゃんとフェリーちゃんをこっちに渡してくれないかしら?」

「何を言っているのですか? それじゃあ『貴女への嫌がらせにならない』じゃないですか」

「あと一応私姫なんだけど、床に正座って結構これ国際的にどうなの?」

「ワタシ達は学友よ? 王家間のしきたりはそれ相応の場所。一方ここは友人の家。何の問題も無いでしょう」

 

 うん。完全にお怒り状態だよ!

「……もはやパムレは人形みたいな感じなんだね。ミッドガルフに姫がいたら大陸の姫の膝は制覇できたのに残念」

 本当に残念って思ってる?

「とはいえ正直なところシャルロットとパムレ様は席を外していただきたいのが本音だったりもします」

「何なの!? え、じゃあ私ってただ座らされてる状態!?」

 まあ、きっと無関係なのに説教の席に同行させられたんだし、半分くらいは文句を言う権利は無いよね。

「それでお話と言うのは?」

「カッシュの件です」

 先日大量の魔力を体内に宿して溺れてしまい、大事故を起こしてしまったカッシュ。正確には大事故を想定した状態をパムレが作り上げたわけだけど。

「カッシュは体が良くなってからすごく勉強するようになったの。特に魔術に関しては魔術学校の本を読んだり、自作の魔術を作り上げるまで成長していたわ」

 そう言われてみれば、『獄炎・改変』って言ってたっけ。俺も少しくらいの改変はできるけど、カッシュの『獄炎』の威力は異常だったな。

「あの事件以降、カッシュはさらに勉強し始めたの。自分の力をきちんと理解した上で正しい力の使い方に重きを置いて」

「良い事じゃないかしら?」

「そうなんだけど……その……」

 少し頬を赤らめる。え? 何故?


「昼間は懸命に勉強しているけれど、夜になるとこっそり城を抜け出してどこかへ行ってるのよね」


 え? 顔を赤らめる要素無くね?

「……リエン、特別にパムレで例えてあげよう。パムレは興味があることはとことん突き詰めるんだけど、上手く行かない場合も多々ある。するとイライラが溜まるためそれをどこかで解消する必要が出てくる。パムレの場合は一目を避けて大量のパムレットを夜に食べる」

 うん……? 別にパムレの人生に俺が口を出して良いわけでもなく。虫歯にならないんだったら良いんじゃね?

「はあ。その、ポーラ? ゲイルド魔術国家って歓楽街はあるのかしら?」

「ええ。夜にだけ……その……営業する店がいくつか」



「…………ああ」



 そういう事?

「勉強の疲れを夜に歓楽街へ行ってイライラを解消してるってこと?」

「もう少し言葉を選んでくださる!?」

 いや十分言葉選びまくってるよ。だってこの場に女の子しかいないし。



「というかカッシュは一国の王子なんだし、そういう店に行ったら問題になるでしょ」



「「……」」



 二人とも固まった。

『のうリエン様よ。この二人は思ったよりも『想像力豊か』じゃのう』

『空気を読んで今回は口を慎むー』

 シャルロットが無言で立ち上がって俺を叩こうとしたけど、どうやら床に座ってたお陰で足がしびれたみたい。あー、無言で転んで顔を隠しちゃったよ。

「で、でしたら一体何を!」

「夜に内緒で何かをしているんだよね? というか最後までついて行かなかったの?」

「途中で『認識阻害』を使われてしまったの」

 なるほど。つまり途中で手掛かりは途切れちゃうのか。

「とりあえず『蛍光の筆』の件は一日保留にしておいて、今日はカッシュの行動を監視しよう。シャルロットなら『認識阻害』を無視して探すことができるしね」

「仮に歓楽街だったらリエンをぶっ飛ばして良いかしら?」

 完全な八つ当たりでしょ!


 ☆


 ゲイルド魔術国家の夜はとても寒い。

 まあ、ただでさえ寒いのに、日が無いとさらにそれは増してくる。

 寒いとどうなるって?



「儂はここで消えるのかのう。装いを少し改良するかのう」



 フブキが倒れそうになります。

「フェリー。悪いけどお願いしても?」

『はーい』

 ポンと頭に乗っける。もはや精霊ズはお手軽な人形みたいになっちゃったよね。

 ちなみに今はゲイルド魔術国家の城の外でフブキと二人で待機中。

 少し離れた場所でパムレとシャルロットが待機。

 そして城の中でポーラがいる。

 カッシュが移動したらポーラが合図して、シャルロットが『音』を感知して追いかけるらしい。

 本来シャルロットと一緒に行った方が良いのだが、人が多いとその分音が見えなくなるらしい。

 最小限に抑えるために常時認識阻害を使えるパムレだけを先頭に、俺とフブキはちょっと離れた場所で待機という状態。

「む? 合図じゃ」

 ポーラが城の中から小さな光を発した。最初は白。次に緑。そして白。

 ただの光ならわかりにくいが、緑色の光は治癒術の光。ゲイルド魔術国家の人間しか出せない光のため、合図としてはとても優秀な色だろう。

「フブキは見える?」

「ふむ、気配は感じる。じゃが『認識阻害』というのは任務中にも何度か使われてのう。何度か逃げられそうになったことはあるのう」

 逃げられ『そう』ってことは結局全員捕まえたんだね。

「む、パムレ殿の足跡じゃ。ついていくぞ」

「うん」

 もちろん俺達もパムレを見ることはできない。よって、パムレには地面に何かしらの跡を残すようお願いした。

 不自然に連続して伸びていく複数の穴。それを追って俺たちはゲイルド魔術国家の城へ向かった。


 ☆


 到着し、そこは牢屋だった。

 罪人たちが眠る中を通るのはとても緊張したが、パムレの残した跡を追うと、一番奥の部屋の前に到着。


「……ここに入った」


 パムレがふわっと視界に登場する。

「一番奥の部屋……誰かいるのかしら?」

「……嫌な魔力? 何だろう、パムレの知らない属性?」

「とにかく入ろう」

 そう言って俺は扉を開けた。

 そこには。



 巨大な『空腹の小悪魔』がカッシュをくわえていた。



「きゃっ!」

 瞬時にパムレから巨大な魔力を感じた。

「……問答無用で消す。『光球』!」

 パムレが瞬時に光球を放つ。



 が、本来それで消えるはずの『空腹の小悪魔』は、光球が当たってもびくともしなかった。

「……変」

「じゃったら儂が己を絶とう!」

 目に見えない速さで『カタナ』を出し、『空腹の小悪魔』へ攻撃する。


「む? 手ごたえが無いぞ! こやつ、『なんじゃ』?」

 と、フブキが問いかけた瞬間。



「へ!? 誰!?」



 カッシュの声?

 巨大な空腹の小悪魔の口に頭が突っ込んであるけど、そこから話声が聞こえた。

 そしてカッシュは両手を使って空腹の小悪魔から脱出した。

「へ!? リエンさん!? どうして!?」

「どうしてって……襲われてたんじゃ」

「え、あ……あはは。違います。この子は僕が描いた子ですよ」

 描く? どういうこと?

「秘密にしていたのですが、見つかったのでしたら話すしかありませんよね。ご紹介します。この『空腹の小悪魔』は悪魔の魔力と『原初の魔力の光』を宿した混合魔力の悪魔です」

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[一言] カッシュ君すげえええ!?!?!?
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