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ゲイルド魔術国家2回目7

 魔術研究所に到着。


 というか深夜の魔術研究所ってすごく怖いんだけど!

 絶対悪魔とか潜んでそうだよね! いや母さんがいる時点で悪魔はいるんだけど!


「待て」

 魔術研究所の守衛さんに止められた。

「夜にすみません。リエンです」

「む! さっき連絡があった方か。私が案内するからできれば勝手な行動は控えていただきたい」

「わかりました」

 そう言って守衛さんについていく。すると鉄で作られた扉の前に到着した。

「魔術の研究や実験するための防音室です。比較的広いので魔術開発なども行ってます」

「えっと、用が済んだらどうすれば良いですか?」

「この隣の控室にいます。私は中の様子をそこから見れますので恐れ入りますが終わったら手を振ったりしてくれれば」

「問題ありません。その方が助かります」

 そして重い扉が開いた。


「あーあー。凄いわね。声が響くわね」


 結構広い部屋に到着。床が何箇所か焦げているのは魔術の爆破等の影響だろうか。

「じゃあシャルロット。まずは思いっきり俺に『火球』を放ってみてよ」

「え!? その、怪我するわよ?」

「あはは」

 俺は少し笑った。


「シャルロットの『火球』じゃ怪我しないから大丈夫」


「言ったわね。本気出すわよ?」


 おおー、ちょっと怖い。


『リエン様。大丈夫か? シャムロエ殿は音の魔力がある故、感情的になると魔力が強くなるぞ?』

「正直わからないけど、頑張る」

 頭の中で話しかけてくるセシリーに返事をして、早速シャルロットの正面に立つ。

「本当に怪我しても知らないからね!『火球』!」

「大丈夫。『水球』」

 シャルロットの『火球』。それに対して俺は水の魔術を放った。

「ほら、全然余裕でしょ? というか、本気を出してないよね?」

「うううう!『火球』!」

「ほい!」

 再度『水球』を放つ。

「また簡単に防げた」

「当り前じゃない!」

 シャルロットの声が響き渡った。



「リエンに怪我をさせるなんてできるわけないじゃない! 友達なんだから!」



「おう……」



 いや、当然の反応と言えば当然だろう。

 実際こうなることは『わかっていた』。

「ごめんごめん。実はこれ、『俺も同じことをしたから』シャルロットにもさせたんだ」

「同じこと?」

 と、そこへ鉄の扉から『空腹の小悪魔』が『ぬっ』と登場した。

『ワタチ式魔術指南ですよ。魔術の制御は精神的な部分が一番大きいので、まずはわかりやすい方法で体に叩き込むのですギャー』

「店主殿?」

『リエンが自分の魔術に自信を持ち始めた頃に、ちょうど小さな魔獣が出たのです。リエンはその時倒しに行こうとしていましたが、ワタチがそれを阻止して、代わりに広い場所でワタチに魔術を放つよう指示しましたね。懐かしいですギャー』

 あれは俺も大泣きしたな―。まあ、たとえ全力で魔術を放っても勝てなかったって今ならわかる。でも当時は母さんに怪我させちゃうんじゃないかって思ったもんね。

『魔術は魔力に依存しますが、一度に放出できる魔力は脳が勝手に規制します。たとえ本人が全力でも実は三割くらいしか出していないなんて普通なのです。それに加えて相手の事を考えたり、この先どうなるかを想像できる間は、大丈夫なのですよギャー』



 って、母さん。俺の言いたいこと全部言ってるんだけど! 一応今日の目的を提案したの俺だからね!



「あはは、まさか店主殿……いえ、魔術研究所の館長様に指南いただけるとは。そしてリエンもありがとうね」

「うん。今日の酔っぱらいの人の事や今日俺に魔術を放ったことを思い出せば今後は多分大丈夫だよ」

 シャルロットは杖をしまって一息。そして母さん(空腹の小悪魔)に話しかけた。


「仮にも、『心を失ってしまった』感じで魔術を放ったら、どうなるのですか?」


『おっと、それは答えにくい質問ですね』


 え、どういうこと? 心を失った状態というのがあまり想像つかないけど。

 疑問に思ってると、シャルロットが話を続けた。

「大叔母様から聞いたことがあります。先代女王のシャルドネ様は心を失った挙句、力の加減ができなかったとか。もしそれと同じ現象が魔術にも生じたら」

『普通はあり得ぬ』

 セシリーがポンと登場した。

『それをできるのは我ら精霊か悪魔じゃな。じゃが、仮じゃぞ? 仮にそうなってしまった場合は、以前のカッシュの様になるのう』

 慢心から生まれた事故。いや、正確には被害は無かったけど、仮に本当にシグレット先生があの場にいたら大変なことになっていただろう。

『慢心とは他を考えずに自身を中心と考えることじゃ。故に心が無いのと紙一重。じゃが、一度植え付けられたトラウマと言うのはそう簡単には克服できぬ。良い意味でものう』

「そうね。今日の事を忘れずに、適切な魔術をこれからも心掛けるわ」

 ぐっと手を握り締めて、シャルロットの表情からは不安な感じが無くなった。

「あはは、夜遅くまで協力してくれてありがとう。守衛さんもありがとー」

 シャルロットは小窓に向かって手を振り話しかけた。



『ギャ? 守衛? 誰に向けて話しかけているのですか?』

「え? 私達の行動を監視するためにこの場所を見ているはずだけど」



 その時だった。



「『光球』」



 一線の光が『空腹の小悪魔』に命中した。

『ギャアアアアアアアアア!』

「母さん!?」

『ギャ……ギャギャ……逃げてくださいリエン、そこにはレイジガ』

「『光球』」

『ギャアアアアアアアアア!』

 空腹の小悪魔が消滅した。一体誰が!

「リエン、後ろよ!」

「セシリー!」

『一発は防ぐぞ!』


 ばりーん!

 セシリーが生成した氷の壁が砕ける音が背中から鳴り響く。


「精霊とは厄介ですね」


 白髪の老人。


 以前一瞬だけ見たことがある人物。


「レイジ……だな」

「ミッドガルフ貿易国以来でしょうね。久しぶりです」

 すっと姿を表した。右手には本を持っており、すでに準備が完了していると言ったところだろう。

「ここは魔術研究所の中でもかなり固い場所。あの忌々しい館長も簡単には入って来れないでしょう」

 おそらく空腹の小悪魔を通して状況は把握しているはず。

「あ、ちなみにあのマオですらここは難しいですよ。仮に転移を使っても、この部屋一帯を『認識阻害』で隠しましたから」

「さっき母さんがここを目撃しているはず。だったら手当たり次第に探すはず」

「何を寝ぼけたことを? あの悪魔にこの光景をワザと見せたんですよ。息子の危機を一瞬感じさせ、そして何も抵抗できずに事が終わる。実に悪魔らしいワタクシの策ですよ」

「悪魔と言う割には認識阻害とか光球とか使えるのね」

 シャルロットの問いにレイジは答えた。

「この『ネクロノミコン』はそれすら可能とする。あの時マオに奪われていたら終わっていたでしょうね」

 不気味に笑うレイジ。

『不味いぞリエン様よ。あの悪魔は危険じゃ。我ら精霊との相性も悪く、逃げ場が無いぞ』

『んー、思いつかないー』

 俺の所為だ。

 俺が母さんの地位を利用してこの場所を指定しなければ、こんなことにはならなかった。

「さて、二人をここで始末した後、ガラン王国にある『創造の編み棒』も回収しましょう。後は時間の魔力だけ……ワタクシの野望がとうとう叶うのですね」

「させない!『そこに膝をついて』!」

「おっと!」

 レイジは何かから避けるように横に移動した。と、突然俺に『何かが』襲い掛かった。

「ぐっ!?」

 体が勝手に動いて俺は地面に膝をついた。

「ここは音がとても響きますね。良かったですねー『死んでください』なんて言った日にはきっとその男の子は死んでいましたよ?」

「くっ!」

「さて、雑談はこの辺にしますか。二人はここが墓場となります。外では貴方の母親が何かをしてここを見つけ出し『深海の化物』を使ってこじ開けようとしています。仕事は早く済ませましょう」

 レイジの手から黒い光が浮かび上がる。


「さようなら」

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[一言] うわああああ!!! だ、誰かあああああ!!!!
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