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65 魔力摂取は禁止事項

「何、話してるんだろうな……」


「…………」


 レインが目覚めると即座に戻ってきたエルが俺たちを部屋の外に追い出し締め出した。扉の前で行ったり来たり、あからさまに機嫌の悪い雰囲気というか冷気を醸し出すシオンに俺は盛大に溜め息を吐き出した。


「てか、シオン。なんで二人部屋の方にレインを運んだんだ?」


「……ウィルが一人部屋で俺とレインが二人部屋を使うから。どうせ一緒に寝るから一人部屋の方でも良いけど」


「なぁ、それがエルに怒られた原因だと思うぞ」


「もう婚約したから見られても平気」


 平気、ではないと思う。どうやっても問題ありだろう。あの家の中だからの許容範囲で、ギリギリと言うかどちらかと言ったら黒に程近い、寧ろ黒を無理矢理グレーと言っている状態であった理由(わけ)で……

 この従兄弟殿は何を自信満々に言い出すんだと思うものの、シルフォード帝国の皇族の常識はちょっとというかかなりズレていたなと思い出す。レインを一人部屋にしたとしても間違いなく抱え込んで一緒に寝る気だろう……



***



「あっ、二人ともお待たせ」


 ひょこりと扉を開けて顔を覗かせたのは黒曜石のような髪を揺らしながら俺たちを見上げるレイン。


「レイン」


「ちょっ、ちょっと待ってシオン。あのね、大切な話があるから」


 すぐさま捕捉し抱き締め口付けようとするシオンをレインは手で押しのけようとするけど、抵抗虚しく難なく捕まり、今は部屋のベッドに腰掛けたシオンこ膝の上にちょこんと乗せられている。


「あのね、キ、キスは禁止」


「どうして?」


 声音では微塵も感じさせず不満そうな気配で部屋をいっぱいにするものの、半拘束され膝の上に乗せられているレインはそれにまったく気付いていない。


 自分への想いも命を助けられた吊り橋効果——不安や恐怖を強く感じている時に出会った人に恋愛感情を持ちやすくなる効果らしいが——その勘違いだと思っているから始末が悪い。あんな重い想いが勘違いなら世の中勘違いだらけだ。一目惚れではなくあれはまるで呪い……とまでうちの親父に言わせる何かが目の前にある。

 レインはアレクシオンというこの男をまったく理解し(わかっ)ていない。


「……というか、これから最低でも半年はポーションもそうだけど自分の魔力以外は摂取するなってエルが言うから。特に人間の……他人の魔力は絶対ダメって。さっき倒れたのもせっかく滞っていた魔力が抜けたのに、また魔力が入って反発したからだって言うから………………成長しないのも困るし」


 ……今人間(・・)のって言ったような気がするんだけど、精霊とか妖精とかのは良いって意味か?

 そう言えばポーションは中和剤という魔力水を使って作っているから確かに他の人の魔力が混ざっている事になる。

 最後にごにょっと何か言ったが呟きが小さすぎて聞こえなかったが……


「だったらキスをした時に魔力を送り込まなきゃ良いだけ」


「そ、そうなの?」


「だからキスはして良い」


「……良い、のかな?」


「魔力さえ込めなきゃ良いに決まっている」


「う、うん」


 押し切った……。

 しかも普段ほぼ感情すら浮かべない冷たい蒼玉(サファイア)の瞳にあからさまな情慾を浮かべていたのをレインと顔を向かい合わせる一瞬前に器用にも鎮火させた。婚姻の儀まで隠し通す気か……


「とりあえず、婚約指輪(それ)あるから大丈夫だろ」


「……半年だけ我慢する」


 婚約指輪も嵌めた癖にどうやらマーキング的な自分の魔力を込めるのを諦める気は無さそうだ。


「で、エルの話ってそれだけか?」


「う、うん……後はレベル上げろって」


 多分レインは何かを隠しているが話す気は無さそうだ。その辺はあの妖精が絡んでいるし俺に詮索する気は毛頭無い。


「あっ、俺飯二人分追加してくるわ」


「ウィル、ここ朝とお昼はご飯ついてるよ」


「その説明は聞いたけど多分足りねぇと思うし、レインの方の部屋は引き払って良いだろ」


「ああ、頼む」


「へ?ちょっと待って!わたしの部屋引き払うって……」


「さっき隣通しの二人部屋と一人部屋借りたから」


「あっ、ここウィルとシオンのお部屋か」


「否、俺は隣の一人部屋で、こっちはレインとシオンな」


「なっ、なっ「婚約したから一緒で平気」」


「じゃあ、ごゆっくり。結界は張れよ」


「ウィルっ!ちょっと待って、ウィルっ!!!」


 ごゆっくりと言った俺に真っ赤になりながら必死に呼び止める声が聞こえる。

 ちょっとシオンの奴が危うい雰囲気を醸し出していて離れていた分貪るかもしれないが、たかがキスだ。あいつ何が何でも婚姻の儀を受ける気満々だから貞操の危機だけは無いから安心しろ、レイン……


 とりあえず俺は何も聞こえない振りをしてドアを後ろ手に閉めた。







前話にて60,000PV↑となりました。ご覧いただきましてありがとうございます♪

御礼SSは現在未定です。多分次回分と纏めてとかになります……

現在、家庭の事情(冠婚葬祭)が重なっているのと仕事が滅茶苦茶忙しいのでお待ち下さいすみません(´◦ω◦`):

※ちなみに週1更新予定となります

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