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46 水の妖精さん

 そろそろ本気でウィルにお部屋をかわってもらうべきかもしれない……


「シオン。あのね、わたし一人で寝たい」


「イヤだ」


「だって、んっ、」


 こうやってすぐキスをするんだもん。この間の外でダメって言ったのをシオンはお外でなければ良いって都合良く解釈したみたいで、わたしを自分の部屋に連れ込む。正確にはわたしの部屋側から内扉を使って運び込むが正解かも……寝る準備をしているわたしを部屋で捕獲して軽々抱き上げて自分の部屋に運ぶから。


「これ以上はまだしないから。だから一緒に寝るだけ……責任は喜んでとる」


「シオン、離して……っ」


 こ、これ以上って……一体何を言い出すの?それってキスより先の話でしょ……わたしシオンとその……そんな覚悟なんて出来てないし、それにまだ付き合うってお試しの話だったと思うの。しかも責任とかって最終的に結婚だと、それこそ確信犯?!

 魔導馬車のキス以来、シオンの中ではキスをするのも抱き締めて寝るの同様に通常仕様(デフォルト)になっているけど、綺麗な顔のどアップも心臓に悪いし、いっぱいキスされると頭がぼーっとして何も考えられなくなっちゃうし、わたしの精神衛生上それは控えて貰いたい。


「レインもう少しだけ触っても良い?」


「っ、……駄目っ!」


「ダメ?」


 う゛っ、恥ずかしいから駄目。い、今わたしの髪にもキスしたよ?!何その顔っ、反則、反則だから……もう少し触りたいって言うのもいつもギュッと抱き締めたまま頭や髪を撫でているだけだから——たまに頭や髪から流れて頬とか背中とかもだけど——全くもっていかがわしくは無いけど、やっぱり駄目っ!絶対ダメっ!!!


「抜け出せ……ない……」


 がっちりと絡みつく腕からは、わたしの意志では抜け出せそうにない。シャツ越しのシオンは細身なのに一体どこにこんな力があるんだろう……やっぱりウィルみたく無駄の無い筋肉がついていて良い身体してるのかな?流石にウィルを触った時みたいにシオンを触る勇気はわたしには無い。しかもかなり頑張ったけどこの腕から抜け出すのは無理そうで……藻掻(もが)いて疲れたのか睡魔に勝てずに段々と落ちて行く自分が恨めしい。


「おやすみ、レイン」


目蓋が重くなっていくとシオンのおやすみという声が聞こえた。


***


「おはよう、エリンちゃん」


「おはよう……ございます……」


 なんかよそよそしいというか、どうしたんだろう?


「ご飯の用意しちゃうから、これ並べてもらえる」


「料理、得意なの?」


「別に得意じゃないけど、ウィルもシオンも作れないから作ってるだけかな」


 まぁ、雨宮零としては料理教室に通ってみたりしてたけど、特技とかに上げるほど得意ってわけじゃない。でもオークのお肉がたくさんあるから料理教室で一度やった自家製ベーコンとかも作ってみたいとは思っている。塩だけじゃなく胡椒とかハーブとか使って色々試しても良さそう。塩の量は肉の重さの2パーセントが目安だからアレンジ次第。乾燥は風魔法、燻製は火魔法を使えそうな気がするけど……街のお肉屋さんに加工をお願いしても良いかな。


 どうせオーク焼くなら今日は買ってあったベーコンにして、目玉焼き、サラダにスープ。デザートはとろけるモウモウのミルクプリン、なんとこれは魔法で冷やしたらすぐ出来る。それでパンとご飯は好きな方を選んでもらおう。

 とろけるミルクプリンの作り方はアイテムボックスに入ってたゼラチンの分量を250mlに対して5gって書いてあるところを500mlに対して5gにするだけ。お砂糖はお好みで甘さ控えめにするとあっさり美味しい。本当は4.4牛乳とか濃い調整乳を使うのがオススメだけどこの世界にあるのかな?この世界って圧倒的に甘味が不足していると思うの。生クリームにカスタードクリーム、アイスクリームに……ってなんとかクリームばっかり?

 ゼラチンの他にアガーや寒天もあるからまた今度色々作ってみよう。


「レイン手伝う」


「エリンちゃんに手伝ってもらってたから大丈夫だよ」


「…………」


「じゃあ、これ冷やしてくれる?」


「分かった」


 なんでまたそうやって不満そうな顔するのかな?……まさかエリンちゃんにまでヤキモチ焼いてるとかじゃないよね。そうだと思いたいけど、シオンってばわたしを捕まえたオークに触るなとか変なヤキモチ焼いて(しま)いには結婚申し込むんだもん、ちょっと疑ってしまう。

 ウィルには積もり積もったものがあそこで爆発したから許してやってくれみたいな事言われたけど、積もるような事なんて何も無かった気がするんだよね。


「「「いただきます」」」


「いただき……ます?」


 あー、エリンちゃんが戸惑ってるよ。祖国の食事の挨拶だって教えておいたけどなんか困った顔されちゃったよ。


「レイン、ほんと愛してる」


「ウィルはミルクプリンを愛してるんだよね」


 これ、お肉の時と一緒だから分かりやすい。


「俺も好き」


 どっちがっ?!シオンの好きはミルクプリンなの?わたしなの?後者は流石に自意識過剰すぎると思うし、わたしの精神衛生上ミルクプリンが好きだとしておく。美味しいもんね、ミルクプリン。


 ご飯が終わったらクリーンかけて、キッチンの隅においてあるとっても大きい鍋で中和剤を作る。これは精霊王の加護がついているという眉唾物な鍋……じゃなくて錬金釜だったりする。

 エルがこのでっかい釜を持ってふよふよ浮いてた時はほんとびっくりしたよ……


「お庭のお掃除おわりました」


「ありがとうエリンちゃん」


「えっ、何やって……」


「何って中和剤を作ってるんだけど……あっ、妖精さん中和剤を作りたいからお水をお願い」


『あのね……名前、欲しいの』


「じゃあ……マイム?」


 えっ?なんか勝手に名前が頭に浮かんだよ。不思議な事もあるもんだと感心するけど、ここは魔法世界、きっとある。マイムってマイムマイムの水の踊りとかからなのかな?


「マイム、中和剤用のお水お願い」 


『レインの為にとっておきのお水をだすね』


 なんか言葉数が増えた?そうこうしてると錬金釜はなんかキラキラしてる綺麗なお水で満たされる。


「レ、レインちゃん?!一体誰と話してるの?」


「妖精さんだよ……エリンちゃんもしかして見えないの?」


 妖精さんが見える人も見えない人もいるらしいけど、ウィルとシオンが普通に見えるからみんな見えるものだと思っていたよ。

 アイテムボックスから古びた杖を取り出すと杖で増幅された魔力を釜に注ぎ込んで中和剤を作っていく。


「わ、私、あっちの掃除してくる!」


 お掃除って言っても——エリンちゃんだと魔力量的に休み休み——一階にクリーンをかければ良いだけだからそこまで重労働ってわけじゃないのに、急いで行っちゃったのは張り切ってるのかな?


「わぁ、マイムのお陰でなんかキラキラの中和剤だね。ありがとう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

中和剤 品質:SSS


極上の魔力が込められた中和剤

妖精と精霊の祝福により森羅万象と融和する

妖精の信愛からなる純水:魔力(5:5)


追加効果:キラキラでシュワシュワ

     とても美味しい


製作者:レイン

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 なんか前作った時より効果が追加されてる。祝福とか森羅万象と融和は前はなかったよね……

 このキラキラでシュワシュワってなんだろう?ギルドから中和剤十本の納品を頼まれているんだけど……これで良いのかな?


「マイム、この中和剤ってシュワシュワなしで作れるかな?」


「レインはシュワシュワ嫌い?みんな好きだから好きだと思ったの」


 ああ、シュンとしてるし悲しそうな顔させちゃった……なんか悪いことしちゃったかも。


「嫌いじゃないよ。ギルドに納品するのにシュワシュワじゃないのも欲しくて」


 一応シュワシュワなしの中和剤も作っておいた方が良さそうだから、ちゃんと理由を言ってマイムにお願いしてみる。


「出来るよ。シュワシュワじゃないお水出すね」


「ありがとう」


 妖精さんて親切だし優しいし良い子ばっかりで、それはこの世界に来なきゃ分からなかった事だから、エルやマイムと知り合えた事は単純に嬉しいかも。



***


 さて、クッキーとかお菓子を作りためておこうかな。クッキーを焼いている間にまとめてポーション作った方が効率が良いし。


「レインちゃん!」


「あっ、エリンちゃんこれからクッキー焼くけど一緒に作る?」


 小麦粉300グラム、モウモウのバター200グラム、お砂糖150グラム、コケコの卵一個、周りにまぶすグラニュー糖は適量だから後で良いか。アイテムボックスってグラムを量らなくてもその分量出せるからすごく便利。


「クッキー、そうじゃなくて。あのね、レインちゃんは成人してるんだしお兄さんとベタベタし過ぎるのは良くないと思うの」


 やっぱりそう思うよね、おかしいよね。シオンが本当にお兄ちゃんだったらシスコン通り越して拗らせまくってるし、妹相手にその……あれ、だと……ただの変態さんにしか見えないよね。ちょっと前に幼女趣味の変態さんなんじゃないかって、わたしも疑っちゃったし。


「あのね、言ってなかったけどわたし、ウィルとシオンとは兄妹じゃないよ。ウィルとシオンは従兄弟だけど、わたしは違うの」


「なに……それ……」


「エリンちゃん?」


「…………めない……」


「へ?」


「エリンちゃん?!」


 えーと。どうしたんだろう急にどっか行っちゃったし、クッキーは一緒に作らないのかな?

 クッキー以外は何を作ろう。この世界って甘いもの……甘味が絶対的に足りないと思うんだよね。生クリームとかのケーキは売ってないみたいだし……あれ、わたし自分の誕生日用に買ったケーキがアイテムボックスに入ってなかったっけ?そんな事考えながらバターを魔法でちょっと温めて柔らかくしてい…………急に頭に凄い衝撃と何か生暖かい感触を感じたと思ったら、そこでわたしの意識は途切れた。






前話にて20,000PV↑となりました。ご覧いただきましてありがとうございます♪

御礼SSなどにつきましては近々活動報告にてお知らせ致します。

まだ前回のも書いて無いのでゆっくりですが何か小咄を書きたいと思っております……(´◦ω◦`):


追記H30/8/29

とろける(やわらかめ)ミルクプリンですがゼラチンの場合は4.4牛乳1リットルに対して10グラムで、ゼ○イスの場合は4.4牛乳1リットルに対してゼラ○ス15グラムとなります。

本文中はゼラチンと記載してますので間違いじゃないです(´・ω・`)

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