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33 地図

 二人が地図を覗き込んだのを確認すると、エルから聞いた話を始める。


「これエレノワールの森なんだけど、どうやら魔物が大量発生しているみたいなの」


「この青三つが現在地?」


「じゃ、その赤が大量発生してる奴らか」


 ウィルもシオンも地図を広げると、わたしと違って点や色の意味合いを教えなくても察している。なんだろうこの違い。


『ウィルとシオンはレインと違って、地図の見方も戦い方もそれこそ兵法もしってるの~』


 聞いてもいないのに疑問に答えてくれてありがとうエル……そうだよね、二人共この世界の人だもんね。わたしはこっちに来るまで魔物や人、って言っても盗賊というか誘拐犯と戦った事なんてないもん。


「緑、あとは黄色か?」


「あ、シオンの言う通り現在地の青はわたしの味方で、赤は魔物か敵なんだって。緑はわたしが使える珍しい素材がある場所らしくて、黄色は敵でも味方でもない人……って、ひとーっ?!」


 魔物の集落に人?赤色が多くて気づかなかったけど、確かに黄色がポツリと……魔物の集団に囲まれてこれじゃいつ死んじゃうか分からない。


「これ、人なのか……どうすっかな」


「できればレベルの低いレインを連れて行きたくない」


「だよな」


 顔を(しか)め対応を考え込む二人にわたしは急激な温度差を感じる。


「でも、でも、生きてるなら助けなきゃ!これでシオンの黄色は点滅してて、だからわたし……だから……」


「……死にかけていると点滅するのか」


『レイン落ちつくの~、魔物と戦って命を落とすのもここじゃ自己責任なの~、

だからもう死んでると思って良いの~、地図(マップ)がすべてじゃないの~、

素材だって緑のところ以外にもあるの~』


「なんで……」


 いつだって優しいエルが、こっちに来てからずっとわたしを助けてくれているエルが、あっさり人を見捨てるような言葉を返してくる。なんでそんな事言えるの?どうして?わたしはこっちの世界がよく分からないよ。


「レイン、オークってな、つまり、あ゛ー無理……シオン、説明」


「……オークは滅多に雌が産まれない。だから他の種族の雌を攫って苗床にし子を成す……そのサイクルは人間とは違うし産まれてくるのはオークのみで、苗床になった種族はそれに耐えられずその時点で大概精神が壊れている」


『多分それじゃレインは分かんないの~』


「そのレインがオークに攫われて、無理矢理犯さ……つまり何匹にも囲まれて子供が出来るような事されたらやっぱり怖くて壊れちまうだろ?」


「えっ、殺されるとかじゃなく?!初めてがオークなんて絶対イヤっ!」


 ウィルが噛み砕いて教えてくれて漸く分かったんだけど、あのオークに犯されるとか死んだ方がマシだ。ふかふかのベッドの上とか贅沢は言わないけど、初めては双方合意の上で相手は人間が良い。


「ああ、だからオークが目の色変えてレインに向かっていくんだな、美少女で処いでっ!」


 ウィルが何か最後まで言う前にシオンがいつもの氷の塊をぶつけるのではなく剣の柄で思いっきり殴った。それ、すごく痛そう。


「レイン、オークの群れの近くは危ない」


「どっちみちギルドに報告して何パーティーかで討伐するか、俺とシオンで討伐するかじゃね?」


 二人共わたしを置いて行く気で、多分黄色い人を助ける気は無い。これがこの世界の(ことわり)なのかもしれないけど、何もしないで終わりたくないし(あらが)いたい。


「エル、」


『はぁ、レインはさっさとレベルをあげるの~、成功するかは分からないけど闇属性の魔法なら精神操作ができるの~、ただMPがたくさん必要なの~』


 わたしの言いたい事が分かったのかエルがそれに(あらが)う方法を教えてくれる。


「お前、属性魔法いったい何個使えんだ?!」


「えっ、火、水、風、土、光、闇、あと回復と時空?」


「レイン、それ人に言ったらダメだよ」


「う、うん」


 闇の属性魔法って精神操作とか怖いんですけどっ!でもその(あらが)う力を手にするにはレベルを上げるしか無い。あと、そんなにたくさんMPを使う魔法って使って大丈夫なのか少し心配だけど。


『とりあえずポーション作るの~、それからトドメを刺しまくるの~』


 エルの言葉からわたし達はまず回復用のポーションを作る材料を探す事になった。HPポーション、MPポーション、できれば睡眠ポーションとか万が一の為に増血ポーションも作っておきたい。


「レベル上げるの手伝ってくれる?」


「無理しないなら」


「本当に無理だったら諦めて逃げろよ?」


「う、うん」


 わたしだって馬鹿じゃないからオークに捕まるくらいなら逃げる。大事なのでもう一度、せめてお相手は合意の上で人間が良い。


「レイン、無茶したらお仕置きだから」


「う……ん?」


「シオンっ、なんかそれ響きヤバいからっ!」


 つい返事をしてしまったけど、お仕置きっておやつ抜きとかお家の掃除一週間とかかな?

 ウィルのいつものツッコミ(?)に、キラキラの微笑みで返すシオンがちょっと怖いんですけど……これは見なかった事にする。


 いざ、薬草探しに!!!






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