23 裏話 ギルド受付嬢アイラside②
「おはようございます、アイラさん」
次の日、朝から私の前に可愛らしい妖精が舞い降りた。
「おはようレインちゃん、今日もすごく可愛くて可愛い」
「へ?」
「あ、ワンピース可愛いって」
つい可愛らし過ぎるレインちゃんに顔がにやけて心の声がだだ漏れてしまう。一瞬、お兄さんその一が訝しげな表情をしたから危ない、危ない。
「ありがとうございます。このワンピースすごく可愛くて試着しないで買っちゃったの」
裾を少しつまんでひらひらとさせる姿に顔が綻ぶ。無表情かと思った兄その一もレインちゃんの可愛さに顔を綻ばせているから案外同志なのかもしれない。
「家を見たいのと、ここへ来る途中エレノワールの森で倒した魔物の引き取りをお願いしたい。常時依頼のあるオークとゴブリンだ」
「シオン、スライムも」
「あとスライムの作成とポーションの買取もお願いしたい」
兄その一服の裾を掴んで、忘れないでって焦る表情いただきました。朝から御馳走様です。
「ではまず、買取から行いますね」
「二十数匹だからな、ここで出したらマズイだろ」
アイテムボックスから何かを出そうとしたレインちゃんを兄その二が止めた。もしかしてレインちゃんはお兄さん達が倒した魔物を運ぶ為についてきているのかしら?
そうよね、可憐な美少女が冒険者みたいな事しないわよね。
「それでは隣の倉庫での引き取りになります。この札を隣の倉庫に出して査定して貰って下さい」
***
「ポーションが八本、MPポーションが八本、睡眠薬と目覚薬が十本、毒消薬が八本、…………赤いポーション?が七本、査定しますね」
レインちゃんが倉庫から受付に戻ってくるとアイテムボックスからだしたポーションを査定する。
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初級HPポーション 品質:S
極上の魔力が込められた中和剤で製作されたHPポーション
飲むか傷口に掛ける事により回復する、美容液にもオススメ
回復量は中級ポーションと同等の最上級品
シエル草:中和剤(1:9)
追加効果:とても美味しい
製作者:レイン
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初級MPポーション 品質:S
極上の魔力が込められた中和剤で製作されたMPポーション
飲むことで魔力が回復する
回復量は中級ポーションと同等の最上級品
ルーン草:中和剤(1:9)
追加効果:とても美味しい
製作者:レイン
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睡眠ポーション 品質:S
極上の魔力が込められた中和剤で製作された睡眠ポーション
効果は一晩(八時間)程度
飲むことでに至上の睡眠に誘われる最上級品
途中で起きる為には目覚ポーションが必要
リプルの花びら:中和剤(1:9)
追加効果:とても美味しい
製作者:レイン
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目覚ポーション 品質:S
極上の魔力が込められた中和剤で製作された目覚ポーション
飲ませるか眠るものに掛ける事により効果を発揮する
眠りに誘われたものを瞬時にスッキリ起こす最上級品
リプルの実:中和剤(1:9)
追加効果:とても美味しい
製作者:レイン
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初級毒消ポーション 品質:S
極上の魔力が込められた中和剤で製作された毒消ポーション
飲むか毒で傷つけられた部位に掛ける事により回復する
Aランク指定までの毒物を中和する最上級品
但しSランク指定、猛毒、には効果がない
エルベリー:中和剤(1:9)
追加効果:とても美味しい
製作者:レイン
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初級増血ポーション 品質:S
極上の魔力が込められた中和剤で製作された増血ポーション
飲んだり直接身体に取り入れる事で失った血液を回復する
ロビの葉は魔力と相性が悪く作る事が難しい
回復量は中級ポーションと同等の最上級品
ロビの葉:中和剤(1:9)
追加効果:とても美味しい
製作者:レイン
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「レインのポーションすげぇんだよな」
兄その二、レインちゃんの凄さを分かっているのね!普通初級の毒消しポーションはBランク指定の毒物までしか解毒しないのに、レインちゃん特製ポーションはAランク指定の毒物まで解毒できるまさに高性能!!!
レインちゃんは色々な意味でとても美味しい美少女でした。魔力の質が高いのかポーションは最上級品ばかり。やっぱり魔力が高いからアイテムボックスに色々と収納する為にお兄さんたちの魔物討伐について回っているのね。
初めて見る赤いポーション。どれも高性能なポーションだけどギルドでの買取額の上限が決まっているのが残念。将来は自分のお店を持って売った方がレインちゃんにとっては良さそう。おっさんが作ったポーションより美少女が作ったポーションの方がそれだけで価値があると思うの。可憐な美少女印のポーションはプラスレス!!!
赤いポーションはもっと詳しく鑑定する為にギルド本部の鑑定に回す事になるだろうから、小金貨一枚での買取が出来る。
「ではこちらの袋が小金貨五十枚となります。あと小金貨十一枚と小銀貨六枚、ご確認下さい」
まとめて兄その一が受け取ったので安心した。レインちゃんに持たせたら可愛らしいし誘拐とか色々危ないもの。私も連れて帰りたいくらいだし。
「次にスライムですが、ご兄妹でのご使用でよろしかったですか?」
「はいっ!」
凄く嬉しそうに返事をするレインちゃん。スライムを作るのが楽しみでしょうがないみたい。
「ではこちらに髪の毛1本づつと、ご兄妹どなたか一人の血を一滴お願いします」
兄その一と二が髪の毛を置くと、レインちゃんが髪の毛を置いて泣きそうになりながら血を一滴たらした。涙目が可愛らしくてお姉さんも口から涎が出そうになっちゃう、ふふふ。
「うわ~、可愛い」
「……珍しいですね」
「?」
初めて見る珍しい紫色の透き通ったスライムはレインちゃんの紫水晶の瞳みたいに綺麗だった。
スライムは何でも食べると思われているけどゴミしか食べない。魔物ではなく術式で作られた生物だから一応制御されていて、人間に攻撃はしないし人間を食べたりはしない。因みにどっかのお馬鹿さんがその昔、死体の処理に利用しようとして失敗した話は古今東西で有名だったりする。
「次にギルドでお貸し出来る家ですが、まずこちらの資料を見て何軒かに絞っていただけたらご案内します。条件があれば仰って下さい」
「最低、三部屋とポーションなどを作れる作業部屋で四部屋、あと生活するのに困らない設備があれば良い」
「お風呂欲しいけど……なければなんとかする」
「希望は特にねぇな」
「そうすると今紹介できる家はあまりありませんね……二、三軒ってところでしょうか」
希望の三部屋以上で作業が出来てお風呂がある……難しいわ。庶民はクリーンを使う事が多いから普通の家はお風呂がない。お風呂はそれこそ貴族とか儲けている商人の道楽になる。設置するには高いし魔石に魔力も充填しないといけないから、必然的にクリーンが主流だ。
一軒目は元々貴族の別荘で値段が高いが部屋数が多くお風呂もある。でも三人では広すぎてちょっと住みづらいかしら。
二軒目はお店仕様の物件で一階で作業が出来るけど部屋は三部屋しかなくてお風呂は無い。レインちゃんの希望だしお風呂は大事よね。
三軒目は元々は商人のお家で庭付きお風呂付き。ただ、ちょっと、というか一つだけ問題がある。
「とりあえず二軒目と三軒目を見て決めたら良いんじゃねぇの?」
兄その二の一声で二軒目と三軒目を見て決める事になった。
***
家の案内を担当に変わって貰ってレインちゃんと一緒にお家を見て回った。これぞまさしく至福の瞬間。
三軒目の三部屋のうち一部屋が奇抜な内装で戸惑っていたけど広いお風呂に瞳を輝かせていたので、兄たちも三軒目に決めたようだった。
兄その一がしれっと、とりあえず二ヶ月とか言って金貨十枚をポンと出した。……ああ、これ拙いわ。見た目からして冒険者っぽくないし、これじゃ良い所のボンボンだって言っているようなものでしょ?世の中、悪い事を考える人だっているから可愛らしいレインちゃんが危険じゃなきゃ良いんだけど。
契約にも血が一滴必要なんだけど、優しいレインちゃんは兄その一の指にヒールをかけてあげる。羨ましいことに兄は目を細めながら妹の頭を撫でる。兄妹ズルイ。私も撫で撫でしたい、愛でたい。
ああ、次はいつギルドに来てくれるかしら?




