20 ランクアップ
昨日街を歩いていた人を見ると——もともと箪笥の肥やしになっていた——クローゼットに入っていたワンピースは普通に着れそう。
「サイズってやっぱり大きいかな?」
流石に十五歳のわたしより二十九歳のわたしの方が大きい。……どこがって身長もそうだけど、主にほぼペタンコに近いこのあたりごにょごにょ。あと一年くらいしたら二つ三つくらいサイズがあがるはずなんだけど、今はほぼペタンコ。とほほ。
「仕立て直せば良いのかなー?」
服を買った方が安いのか、仕立て直した方が良いのか、シンプルなワンピースは一度くらいしか着ていないけど衝動買いしただけあって可愛い。
エルは知らなそうだし、ウィルにもシオンにも聞くに聞けない、……下着ってどこで買えば良いの?
「あ、れ?」
『自動調節機能付きなの~』
どこをどのように直さなきゃいけないのかワンピースを着てみると、着れた。懸念していた部分もピッタリ。いつの間にか現れたエルが説明してくれる。
『エレイ……エレオノーラ様がレインの服に自動調節機能つけてくれたの~』
どうやらこの世界の服は少しだったら自動調節機能で体型にあわせられるみたい。あんまりぶかぶかの買っても着れないから、少し大きめくらいを買うのが良いんだって。わたしの服はエレオノーラ様がつけてくれた自動調節機能だから着れるらしい。
「しばらく服は買わなくて良さそうだけど、冒険者用はの装備ってのは買わなきゃ……あとポーション作る大きい鍋か釜かな」
「レイン用意できたかー?」
外で着替えを待っていてくれている——普通に着替えようとしたらシオンに引きずって外に出されたウィル——がドアをノックする。
「ん、大丈夫~」
「シオンのヤツ着替え気付かないくらいで怒るからよ」
着替えしようかな~、って思ったあたりでウィルを外に引きずっていったからウィルが気付かないのも……まぁ分かる。
***
昨日言われた通り朝食を済ませて少ししたらギルドに向かう。お家ってそんなに簡単に借りられるんだ。やっぱり敷金礼金とかあるのかな?
シオンにお願いして———幼く見えるわたしがギルドで大金を両替しない方が良いだろうって——大金貨一枚と金貨一枚を街で使いやすいようにかわりに両替してもらう。
家賃の支払いを考えて小金貨が多めの九十枚、千円札にあたる銀貨が百九十枚、小銀貨が百枚、これで九十万、十九万、一万円分。アイテムボックスに入れておくから枚数が多くても平気。
「おはようございます、アイラさん」
朝早めだからか夕方に比べるとギルドは空いていた。
「おはようレインちゃん、今日もすごく可愛い」
「へ?」
「あ、ワンピース可愛いって(つい心の声が)」
「ありがとうございます。このワンピースすごく可愛くて試着しないで買っちゃったの」
アイラさんがワンピースを可愛いって言ってくれたから嬉しくなっちゃう。
アイラさんはすごい美人さんでとってもスタイルが良い。昔のわたしだってあのくらいあったんだから……今はほぼペタンコだけど。
「家を見たいのと、ここへ来る途中エレノワールの森で倒した魔物の引き取りをお願いしたい。常時依頼のあるオークとゴブリンだ」
「シオン、スライムも」
「あとスライムの作成とポーションの買取もお願いしたい」
やったぁ!ついにアイテムボックスに入れっぱなしのゴミをなんとか出来る。……スライムってプラスチックとか串も食べるのだろうか?謎生物。
「ではまず、買取から行いますね」
「二十数匹だからな、ここで出したらマズイだろ」
アイラさんが買取から始めると言うから、アイテムボックスから倒したオークとゴブリンを出そうとするとウィルがそれを止めた。確かにここで出すには量が多すぎる。
「それでは隣の倉庫での引き取りになります。この札を隣の倉庫に出して査定して貰って下さい」
***
「オークとゴブリンの査定お願いします」
札を渡しアイテムボックスから倒したオークとゴブリンを出す。その数二十四匹……びっくりだね。
「焦げてるオークは素材が買い取れねぇな、肉は買取の価格は下がるけど大丈夫だ。こっちのゴブリンは討伐証明部位だけ引取で良いんだな?」
スライムのご飯にできるって言うから、討伐証明以外はまたアイテムボックスに出戻り。
オーク九匹、焦げてるオーク三匹、ゴブリン十匹、焦げてるゴブリン二匹、合計二十四匹。わたしだってウインドカッターで倒した魔物は焦がしてないんだから。
オークは見た目あんなだけど、とっても美味しいらしい。ハムとかベーコンにも加工されているっておじさんが教えてくれたから豚肉みたいなもの?上位種になればなる程美味しいとか、街で売っているみたいだし今度挑戦してみようかな……
「オークは素材が高いから小金貨四枚銀貨五枚×九匹と、焦げた方が肉の査定が銀貨五枚分下がって小金貨一枚×三匹、ゴブリンは銀貨五枚×十二匹で、締めて小金貨四十九枚銀貨五枚だな受付にこの札渡してくれ」
……魔物って結構高い。でも初心者の冒険者はコボルトとかゴブリンに苦戦するってウィルが教えてくれたから、そんなものなのかな?
***
「ポーションが八本、MPポーションが八本、睡眠薬と目覚薬が十本、毒消薬が八本、…………赤いポーション?が七本、査定しますね」
受付に戻りポーションを査定してもらう。初級HPポーションは小銀貨五枚から十枚って相場があるらしいけど、赤の増血剤のポーションは少し高く売れるかもって言われていたからちょっとだけ期待。
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初級毒消ポーション 品質:S
極上の魔力が込められた中和剤で製作された毒消ポーション
飲むか毒で傷つけられた部位に掛ける事により回復する
Aランク指定までの毒物を中和する最上級品
但しSランク指定、猛毒、には効果がない
エルベリー:中和剤(1:9)
追加効果:とても美味しい
製作者:レイン
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「レインのポーションすげぇんだよな」
美味しいからかな?ギルドに並んでいるポーションは美味しいって書いてない。逆に値段は安いけど変な効果——苦いとかマズイとかいった——追加効果があるものもある。あと初級の毒消しポーションは普通Bランク指定の毒物までしか解毒しないみたい。ギルドのポーションをこっそり鑑定してみると色々分かった。
「ポーションが銀貨一枚×八本、MPポーションと銀貨一枚小銀貨二枚×八本、睡眠薬と目覚薬が小銀貨八枚×二十本、毒消薬が銀貨一枚小銀貨五枚、赤いポーションが今回当ギルドに初めて納品されたお品となりますので小金貨一枚×七本で、合計小金貨十一枚銀貨五枚小銀貨六枚の買取となりますが、よろしかったですか?」
「はい」
一本一万円で買取だって……初回限定っぽいから次回は安くなるのかな?
「先ほどの魔物の買取が小金貨四十九枚銀貨五枚、締めて小金貨六十一枚小銀貨六枚となります。ランクが上がりますのでギルドカードをお願いします」
パーティーを組んでる状態になるから冒険者のランクはみんな上がるみたい。ポーションはギルドの鑑定で誰が作ったのかわかるらしいから、わたしだけだけど。
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レイン 15歳
Lv:1
冒険者:E
職 人:E
商 人:F
攻撃魔法(火・風) 回復魔法ヒール
アルケミニア王国:コバルト
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なんと昨日の今日でランクアップだ!




