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18 ギルドの登録はちょっぴり痛い

「今日はどのようなご用件でしょうか?」


 ギルドに入って真ん中の列に並ぶと、窓口で順番に受付のお姉さんが用件を聞いてくれる。よく分からないのでウィルとシオンにお任せしておく。


「ギルドカードを作りたい」


「入場証は統一しますか?」


「ああ、頼む」


「ではこちらを記入してください。代筆は必要ですか?」


 そう聞かれてシオンが一瞬こちらを見たので"大丈夫"の意味を込めて小さく頷くと首を振った。


「大丈夫だ」


 あれ?名前と得意なものしか書かないんだ……紙を見るとそれしか項目が無い。確か名字は書かない方が良いって、最後の最後にエレオノーラ様が言ってたと思い出す。


「レインは攻撃魔法と回復魔法だけ書けば良い、書けたら入場証と一緒に受付に渡せば手続きできる」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

レイン 


攻撃魔法(火・風) 回復魔法(ヒール)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「これ、お願いします」


「では、こちらに血を一滴お願いします」


「……なんか痛そう」


 受付にある銀色の金属に描かれた魔法陣の上に記入した紙と入場証の水晶、それに渡されたやはり銀色の太めの針を指に刺して血を一滴たらす。するとその魔法陣が光を放った。

 すぐさま回復魔法(ヒール)したのは言うまでもない。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

レイン 15歳

Lv:1 


冒険者:F

職 人:F

商 人:F


攻撃魔法(火・風) 回復魔法(ヒール)



アルケミニア王国:コバルト

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「虚偽は無いようですね。今回は通行証の返還金にて銀貨一枚にてギルドカードを発行させていただきます。紛失された場合の再発行は金貨一枚と高額になりますのでご注意ください」


 名刺より一回り大きいサイズの不思議な色をした透き通ったカード。街に入る時にはこれを水晶にかざすらしい。

 勝手に年齢が記載されているのを見るとここも虚偽は出来ないって事で、本当に十五歳になったのだと思うとすごく不思議な気分になる。


「ウィルとシオンは?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ウィル 18歳

Lv:28


冒険者:F

職 人:F

商 人:F


長剣

攻撃魔法(火)



アルケミニア王国:コバルト

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

シオン 18歳

Lv:25


冒険者:F

職 人:F

商 人:F


長剣

攻撃魔法(水) 回復魔法(ヒール)



アルケミニア王国:コバルト

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 どうやら得意な武器とか魔法は書いて虚偽がなければギルドカードに記載されるらしい。

 冒険者はこのカードで仲間を探したりするから、得意なものがいっぱいあればそれだけ有利なんだって。だから少なく書く人はいないから、自分の能力(ちから)より多く書いたかどうかや年齢の真偽をあの魔法陣でするんだって。

 シオンがとりあえず攻撃魔法と回復魔法だけ書いたら良いって言うから、使ったことのある火と風とヒールだけ書いておいた。


「説明は必要ですか?」


「お願いします!」


 説明は聞かないと確実に後悔する——夢だと思っていたからもあるが——説明とかほぼ聞いてなくて既に一度後悔したレインは聞き逃すまいと気合いを入れた。


「ギルドは冒険者、職人、商人のランクを設けております。すべてランクFから始まり、依頼達成ポイントまたは商品の納品、商品の購入でランクがあがります。必要ポイントや金額はランク毎に違います」


 冒険者がFからEにあがるのには20ポイント、職人は小金貨五枚分の納品、商人は金貨一枚分の購入。自分の店を持つにも職人か商人のランクが上がらないとギルドからお店を借りての営業は出来ないし、職人も材料の仕入れは自分で取りに行くかギルドを通してするらしい。商人はギルドショップで買うとランクによって割引になるし買っただけランクも上がるから、ギルドを通す方が得だとか。もちろん有名になると指名依頼なんてのもある。

 あとずっと依頼を受けないとランクが下がっちゃうから気をつけないといけないらしい。


「次に、税金についてです。ランクにより年間決まった額を納付していただきます」


 三つのうちランクの高いものの税金を払うらしく、全部Fランクなら銀貨一枚。

 ギルドカードを身分証がわりにしてる人は毎年更新だけする。更新しないと失効して使えなくなるんだって。……なんか免許証みたい。


「以上になりますが、何かございますか?」


「た、多分、大丈夫だと思います」


「こちらをお渡ししておりますので、分からない事があれば読んでみて下さい。それでも分からない事があったら聞きに来て大丈夫よ」


 冊子をくれたお姉さんは最後に分らない事があったらいつでも聞きに来て良いって言ってくれた。担当してくれたギルドのお姉さんはすごく優しかった。

 お姉さんの名前はアイラさん。レインちゃんって呼んでも良い?って聞かれたから、良いって返事をしたらにっこり笑ってくれた。


「すまない、あと兄妹で住める家をさがしたいんだが」


「レインちゃんのお兄さんでしたか……今日はもう時間が遅いので明日の午前中でしたら何軒か家を見る手配はできますが」


「では頼む」


「あとさ、お勧めの宿とかあれば教えてくれると助かるんだけど」


「ねぇウィル。あのね、お風呂に入りたい」


 生活魔法のクリーンを自分に使ってはいるけど、やっぱり湯船につかりたい。ちなみに街に移動している途中の小川で水浴びしようとして"村では良くてもここではダメだっ!"ってウィルに止められてたり……


「レインちゃんはお風呂が好きなの?だったら小金貨一枚で少し高いけどクレストって宿がお勧めよ」


 宿屋クレストはお風呂が借りられるらしい。しかも、自分で魔石に魔力を充填して使えば充填代はかからないから部屋代のみで済むんだって。


「アイラお姉さん、ありがとう」


 小さく手を振ってくれるアイラさんに見送られてギルドを出ると、何軒か屋台で——主にウィルが——買い食いしながら、教えて貰った宿に向かった。






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