表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある神々の平凡な日常  作者: 紅月 桃花
9/20

暇つぶし

私の最終アドバイスを受け、一生懸命論文を書き上げているあっくんを横目に、私は席を立ってベランダに出た。


微かな雨の香りがして、思わず眉をひそめる。


雨は嫌いだ。

湿気が高くてベタつくし、通学中に濡れると最悪だし。


…それに、いい思い出も無いし、嫌なこと思い出すし。


空を見上げれば、まだ曇り空なだけで、雨粒は降っていない。


このまま私が帰るまで耐えろよ、空さんや。


そうぼんやり考えながら手すりに肘をついて頬杖をつく。


少し冷たい風が髪を微かに揺らした。


「…お、暗殺神じゃん」


どこからか声をかけられ、ぱっと辺りを見回すと、隣のベランダにある男がいた。


「…なんだ、土星のぼっち野郎か」


笑いながら言うと、彼は納得いかないような曖昧な頷きをした。


彼は次代土星統治者である打壊神のウキヨ。

壊、という文字が付いているが、破壊神とは親戚でもなんでもないそうな。


次代土星統治者は彼一人と聞いている。

結構異例のことらしい。


まぁ此奴はしっかりしてるしぼっちも慣れてるし、大丈夫だろう。


何しろ今までずっとぼっちだったんだからな。


たまたま親の繋がりがあって私とつるんでるけど、私がいなかったら完全なぼっちだよ、本当。


「…で、何?」

「いや別に。いたから」

「何だそれ」


そう、少し笑い混じりに返すと、同じ様な笑いで返してきた。


「…論文は?」


景色に視線を戻しながら呟くような声で訊く。


「もうちょい」

「あっそ」

「お前は?」

「添削待ち」

「はやっ」


それから少しの沈黙があり、それを私が破る。


手すりから身を離し、んーっ、と伸びをして教室を振り返った。


「添削待ちじゃなく、彼氏待ちだったわ」


そう口角を上げながら言った途端、ドアが開いて、あっくんが顔を出した。


「終わったよ_って、ごめん、取り込み中だった?」


ウキヨと私を見比べてそう言うあっくんに、いいや、と首を振ってからあっくんが開けたままのドアの縁に手をかけ、ウキヨを振り返る。


「リア充は忙しいんで。じゃーな」


ひら、と手を上げて教室内に戻った。


「なんでリア充って言ったの?」


あっくんの純粋無垢な目に、笑顔で答える。


「あいつが非リアで童貞だからさ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ