まだまだ朝は終わらない
「_いや、あの、別に、その…サキアちゃん…!」
助けて、と言うような今にも泣き出しそうな目をされる。
そんな目をされては仕方がない。
私は、リコード、と呼びかける。
彼の意識が完璧に私に集中したのを確認して、笑顔で口を開く。
「コノメがリコードのこと好きなんだってよ!良かった…ぐふっ」
コノメに凄い形相で口を塞がれ、少し後ろに仰け反る。
痛い、地味に痛い。
そんなコノメが、気付けば何者かに背後から抱きつかれた。
「嬉しいよコノメっ!」
勿論そいつはリコードな訳であり。
「…へっ!?」
コノメは私から手を離し、おどおどとし始めた。
「っあー…コノメ酷いな…折角私が両片想いを繋げてやったというのに…」
きっくんから大丈夫か訊かれ、へーきへーき、と笑って返した。
「り、両片想い…!?」
コノメはとにかく混乱してるのに、リコードはコノメのことしか目に入っていない様だ。
事実コノメに抱きついてその額をコノメの肩にグリグリと押し付けている。
…痛くねぇのかな。
ぼんやり考えていると、リコードが顔を上げて口を開いた。
「ねー、両片想いなら付き合っちゃお!」
「へっ!?え!?あ、うん?うん」
コノメは理解半分混乱半分といった感じで曖昧に頷いた。
「あーリア充見てたらムカついてきた」
「きっくんもリア充じゃあないか」
「えー…だって彼女アレだぜ?イチャイチャなんか出来ねぇっつうか…」
「…あぁ、アイツかw私はいつでもあっくんとイチャイチャ出来るからなー」
そう言って立っているあっくんの腰に手を回し、お腹に顔を埋める。
「…はぁ」
あっくんのため息が聞こえ、マズかったかな、と思った瞬間、頭に手のひらの感触がした。
「…よしよし」
撫でられると同時に小声でそう聞こえ、思わず頬が緩む。
こーゆーとこ、好き。
というか普段あまりこんなことしてくれないのにしてくれたってことは。
…やっぱりあっくんもリア充にイラついてたのね。
思わぬあっくんの心理に、1人でニヤニヤしてしまう。
「やぁ皆!!!って何だ何だリア充だらけかよ爆笑」
もの凄い爆音のドアを開ける音と声が教室中に響いた。
「ちょ、うるさっ…w」
その後から聞こえた少し繊細な声。
「…全くうるさいな…ビア」
あっくんのお腹から顔を上げて、そうドアの方に向かって告げる。
最初の爆音野郎は、暴食神もといサトビア。
ビアと呼ばれている。
簡単に言うとヤバい奴。
そして繊細な声の主は死神もといサクレア。
精神年齢がとても低くなる時が多々。
その時の年齢は3歳児である。
もはや恐ろしい。
3歳児で死神とか恐ろしい。
「2人一緒って珍しいね、なんかあった?」
きっくんが何の気も無しにそう訊くと、2人は顔を見合わせた。
「何かって言われると…」
「まぁ…あった…かな」
面倒な匂いがする。
そんな気がして、せめてもの抵抗、と顔を背けた。




