恋愛の噂は広がりやすい
「おっはよー」
教室に入って来たのは、私達のリーダー的存在。
邪神、もといキルベラだった。
あだ名はきっくん。
此奴はイケメンで、彼女が沢山いるという噂だ。
あ、あくまでも噂。
本当は違うけど、それをネタにきっくんをいじってる。
きっくんはチャラチャラしている鞄を下ろし、早々と私達の元に来る。
「チーッス」
「チッス、何話してたんだ?」
訊かれ、ニコッ、と微笑む。
「コノメが男好きって話!」
「…え…やめて…?」
あ、きっくんドン引きしてる。
そこで私がフォローをする。
「あ、大丈夫大丈夫。コノメが好きなのはきっくんじゃないから」
「やっぱり?」
なんだ、きっくんも気付いてるのか。
するとコノメが、なんで分かるの!?と恒例の大声で口を挟んだ。
それにきっくんがガン飛ばしする。
ヤンキーか。
「いやー…分かるくない?いっつもアイツ見てたらさ」
「それな」
「えー…そんなに見てるかなぁ…」
コノメは首を傾げる。
分かる分かる、自分では自覚ないものよ。
「まぁ別にいいんじゃない?此処にいるの、コノメ以外は付き合ってるし…あ、きっくんは複数だっけ?」
「…うん?違う違う」
「あれ?そだっけ?w」
その様子に笑っていたコノメは、私達の背後を見て、おはよ!と微笑んだ。
「…え?」
振り返ると、そこにはとてもカッコイイ堕天使…違う、今は羽出てない。
眼帯をしている、暗黒破壊神もといアレスがいた。
「あっくん!」
ばっ、とアレス…あっくんに抱きつく。
あっくんは私の彼氏である。
私の朝の挨拶を、あっくんは無言で引きはがす。
冷たい。
酷い。
「あっくん〜…」
「何の話?」
無視!?無視なの!?
流石の私も心抉られそう!
そう思いながらも私は座り直しながらその質問に答える。
「コノメがリコードを好きだって話」
「待って言わないでよ!?」
コノメの抗議に、私は笑いで返す。
リコードとは、私達のクラスの破壊神だ。
背が高く、変態。
人柄はいいんだけどね、人柄は。
するときっくんは爆笑し、あっくんはぽかん、としている。
「…え?男?」
「そこは触れてやるなよ」
あっくんが絞り出した言葉に私がツッコむ。
コノメは顔を真っ赤にして顔を隠している。
「あー…コノメ?悪かっ_」
「おはよう〜」
聞き覚えのある声が、コノメの隣から聞こえた。
思わず表情が固まる。
ぎこちなくそこを見上げると、そこには破壊神_
リコードがいた。
そして今までの私らの話の渦中にいたそいつは、笑顔で言った。
「何?何の話?」




