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とある神々の平凡な日常  作者: 紅月 桃花
15/20

見慣れた異変

「…あれっ…二人とも、来ないな」


しばらく走った後に振り返る。


それと同時にあっくんも後ろを振り返った。


「…なんか、きっくんうずくまってるけど」

「は…?」


瞬間、嫌な光景が頭をよぎる。


「っ、あっくん、戻るよ!」

「うぇ!?」


あっくんの手を繋いだまま、今来た道を走って戻る。


ごめんあっくん、振り回して…!


「きっくん!」


現場に着くと、チェイスは倒れ、きっくんはその場にうずくまっていた。


きっくんは少し顔を上げ、こちらを見た…気がするので、まだ意識はあるだろう。


幸い人通りの少ない道で、周りには誰もいなかった。


「っ…あっくん、チェイスを家まで送ってやって」

「え…チェイスの家?」

「そう。私は、きっくんと_話がある」


私の真剣な声色で色々と察してくれたのか、あっくんは分かったと頷き、チェイスを担いで行ってくれた。


呻いていたからあっちも意識はあるだろう、放置。


察しのいい彼氏を持てて幸せだわ。


問題は、こっちだ。


私はきっくんの隣にしゃがみ込んで、きっくんの片腕を私の肩に回す。


「っ、は…はっ…」

「落ち着いて。まずここは人が来るかもしれない。そこの裏路地に行くよ」


そう言うと、きっくんは微かに首を動かした。


きっと頷いたのだろう。

そうでなくても無理矢理連れて行くからどっちでもいいが。


私はなんとか裏路地の奥へきっくんを連れて行き、そこにきっくんを下ろした。


その前に片膝を付いてしゃがむ。


「はっ…はっ…」


きっくんは肩で息をし、壁にもたれて天を仰いでいる。


首筋には白いなにかの模様がうぞうぞと蠢いている。

_間違いない。


「きっくん、最近ちゃんと寝てないんでしょ。力のバランスが狂ってる」


きっくんは生まれてすぐの頃、創世神_今宇宙を統治している創造神以前に宇宙を統治していた神を、前代_つまり彼の両親世代から、無理矢理取り込まされたらしい。


その影響で、邪神としての力と創世神としての力の二種類が彼の中に出来た。


創世神の力は邪神にとっては毒でしかなく、その力が邪神としての力の量を上回ってしまうと、こんな風に身体を蝕んでいき、最悪の場合息絶えるという。


普通に健康的に過ごしていればそのような状況はまず起きないらしいのだが、此奴は違う。

最悪の場合、睡眠時間二時間とか言ってきやがる。

アホかっての。


「あぁ…ごめ…めい、わく…かけて…」


こんなになるまでして寝ないのは本当に謎…


まぁあまり力使わないからなぁ、きっくんって。

その為に体術とか自主的に習ったらしいし。


「ったく…こうなるから力使う時は考えろって言ったじゃん…じゃ、やるよ」


きっくんに手をかざし、とある気を吸い込む。


「ぐっ…うっ…」


その気はどんどん具現化していき、私の手元には子供の拳サイズの透き通った白色の球体が出来た。


「…はい、終わったよ。ちょい確認ね」


首筋を見てみると、さっきの白い模様は消えていた。


「はぁ…ありがと…」


きっくんの息も整っている。


「よかったねぇ、私が暗殺神で」

「まったくだな」


私暗殺神は、相手の殺意を具現化して取り出すことが出来る。


きっくんの中の創世神の力は、ある意味きっくんへの殺意の塊なので、こんな風に取り除くことが出来るのだ。


「はい、これ」

「ああ、ありがとう」


出来上がった球体は、壊すことも可能だしその持ち主が持っていれば、徐々に持ち主の元に戻すことも可能だ。


きっくんは創世神の存在を消さないことを、罪滅ぼしとしているらしいので、律儀にいつも持っていく。

まったく真面目な奴だな。


「ふぅ…ごめん、折角彼氏と帰れたのにw」

「こっちこそ、あんたの彼女勝手に帰したわw」


きっくんの手を引いて立たせる。


「じゃあ帰り送るよ」

「ゲーセン付きで」

「りょーかいw」


その後、きっくんのお金で遊びまくったのは、言うまでもない。

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