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王宮のお姫様

「かくかくしかじか……」


 まあ、いきさつも含めて、ここ数日何をしてたのかを事細かにお姫様にルナは伝えていた。

 外にいたと言っても、ほとんど王宮周りにいたらしいが、身隠しのローブを持ってたから見回りの奴らに見つかることはなかったようだ。

 見つけた俺は変態だということで。

 あー、はい。もう、段々扱いにも慣れてきますよ。悲しいけどな。

 民主主義政治は悲しいね。多数派の声しか聞かないからな。少数派の意見は何を言っても切り捨てられるんだ。

 誰か耳を傾けてください。

 話が終わったのか、リミュエール姫が俺の方へと目を向けて、品定めするかのように見てきた。

 ……見るのはいいけど、せめてもう少し近づいてくれませんかね?10メートルぐらい離れてますけど。


「リミュ、そんなにジロジロ見たら失礼でしょ」


「まだ信用ならない」


「……初対面から信用しろっても無理な話だろ。ひとまずは君に用があって来たんだから」


 不法進入だけど。


「なるほど……私の裁量次第であなたの首はどうにでもなる……と」


 その通りなんだけど、面と言われると俺、なんかしたっけ?って話だけど。

 基本的に川で溺れただけだし。

 なんだ?この自分が情けなくなる説明は。


「たぶん、俺はルナがいなかったら死んでたかもな。ルナは命の恩人だ。……本当は一言お礼に来たぐらいの話だったけどな」


「…………」


 あの目は訝しんでるな。どうどう、俺をそんなに疑うものじゃない。


「今、聞いたろ?ルナはこのまま自由を求めて遠くへ行ってもよかったんだ。だけど、君が心配だから戻って来たんだ」


「……ウソつき」


「え?」


「ルナは私がルナの心臓を保有してるから、遠くへ行けなかった。ルナが生きれるかどうかは私次第なんだもん」


「……なあ、姫様。君はルナを操り人形にでもしたいのか?」


「……え?」


「ルナと一緒にいたいだけなんだろ?そんな縛りつけなくても、ルナなら一緒にいてくれるだろ」


「……違うの。一緒にいたいけど、それだけじゃないの……」


「それだけじゃない?」


「リミュ、それ以上は」


「……う、うん」


「ごめんなさい。これ以上は話せない。確かにリミュが私の命を握ってるのは確かだけど、それはリミュの意思じゃないってことだけ、覚えておいてほしいかな」


「あ、ああ……」


 確かにリミュエールは俺たちより歳下っぽいし、ルナが10歳の時に作戦指揮官ってなったことを鑑みると、それまでに心臓を抜かれたってことだし、その間にリミュエールが抜いたとすると、あまりちゃんと自分で判断ができる時にやったことではないのかもしれない。


「でも、その心臓だってどこかで動いてるんだろ?どうやって維持してんだ」


「……企業秘密。私とルナだけ」


「王様……リミュのお父さんは知ってるけどね。口外はしないと思うよ」


「……まあ、話しちゃマズイことってことは分かった。どうするにせよ、俺たちは明日ここを発つ予定だ。リミュエール。君がルナをここに留まらせて置きたいなら、そう言えばいいだけだし、外に出してやりたいなら君も一緒に来ることがおそらく条件だ」


 上がこの条件を飲んでくれるのか知らないが、ルナとリミュエールは一緒にいないといけないだろう。


「ルナ……ここの生活、嫌?」


「ううん。そうじゃないの。でもね、私がここにいる限りは戦いに出ないといけないのはリミュも知ってるでしょ?うんざり……ってわけじゃないけど、私も普通の女の子みたいな生活に憧れちゃったんだ」


「普通の……女の子?ルナは女の子だよ?」


「普通の女の子は領地争いの戦争に出向いたりしないんだよ……」


「でも、ルナが隊長になってから勝率上がってるし……」


「次は負けるかもしれない。その責任は私に降りかかってくる。……それにさ、他の町の女の子見てて、私よりずっと恵まれてるなって。私は戦わないと今の生活が保証されないんだもの」


「じゃ、じゃあ、私が頼んでルナが戦いに出ないようにする……から……」


「ううん。しなくていいよ。ただ、少しだけ女の子としての時間が欲しいの。もう5年以上も戦い続けてきた。大人たちはたった5年なんて言うけど、私にとって5年は大きくて、長い時間だった。だからね、一年……いや、半年だけでも私を普通の女の子として生活させて欲しい」


「ルナ……どこに行くの?」


「旅に出るよ。フレア君とアリーちゃんと一緒に。戦いなんてない旅に。……だから、リミュにも一緒に来てほしいな、って」


「……そんなのパパが許さないもん……」


「娘の願い一つ聞いてやれない父親なら俺が殴ってやる」


「ちょっ、ちょっと、フレア」


「子供のワガママ一つ聞かないで何が親だ。今まで散々縛り付けて来てんだろ」


「あんたは了承を得ずに来たけどね」


「お前もだろうが」


「てへ」


「……逃げ出すって言っても、説得するって言っても協力は厭わないぜ?」


「でも……私……は……」


「お姫様がずっと同じところにいなくちゃいけない決まりなんてどこにもないぜ?選択は君次第だ」


「…………」


 リミュエールは手を胸に押し当て、何かを押し殺すような仕草を見せている。

 俺に言えるのはここまでだ。

 あとは、彼女が選択するかどうかだ。

 選択しないのであれば、俺とアリーで適当な放浪の旅へと出るだけだ。

 それだけなのだ。


「私……も、外、行きたい」


「リミュ……。うん、一緒に行こ!」


「……あと、ちゃんと話してから行く」


「う、うん。そうだね」


 意外と律儀な子なようだった。ルナも一度脱走した身であるから対面するのが少し足が進まないのだろう。

 ちゃんと謝罪はするべきだな。

 話が通じる人であればいいのだけど……。


「……あと」


 部屋を出る直前、リミュは俺の方に向けて指差して来た。


「ルナはあげないからね……」


 小さなボディガードがついたようだった。


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