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突入!王宮へ!

 二度目の介抱を受けながらなんとか目を覚ますことができた。

 俺、何度生死の境目をさまようんですかね。

 それともなんか呪われてんのか。


「腹減った……」


「起きないから全部食べちゃったわよ。もう朝だし」


「さわやか……とは言いがてえなあ」


 どうにも涼しい時間というのが短すぎる。夏はこれだから。


「で、なんで俺は縛られてんだ」


「水浴びしてくるから。終わったら外してあげる」


「殺生だとおもう」


「むしろなんで歓迎されると思ったのか」


「分かりましたよ。早く終わらせてください。そして俺の食料ください」


「大人しくしてたらね〜」


 これまでもこれ以上ないぐらいに大人しくしてたと思うんですけど、てかどこに紐なんて用意してたんだ。

 そして、腹減りすぎてその辺の草を食べる勢いだ。勢いだけで理性はまだ崩壊しないけど。

 でも、女の子ばかりだとこういうことになるんだよな。自分が男だということが恨めしいような。逆に男だからこそ役得だというか。

 起きてても腹減るだけだから寝ておこう。さすがに起こしてくれるだろう。

 さっきまでのはロクに寝たという感覚がないので、寝起きの睡魔に襲われるがまま瞼を閉じた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


「……くん。フレアくん。起きて」


 どれぐらい時間が経ったのかは定かではないがルナがまだ少し毛先に水滴が残っている状態で俺を起こしにきてくれていた。


「ん……?ああ、終わったのか」


「ご飯も作ったからよかったら食べて」


「ほぼ1日ぶりに食にありつける気がする」


「まさか、魚取りだけで気絶するほど疲れるとは思わなかったんだよ」


「人間な、慣れないことをすると異常に疲弊するんだ」


「じゃあ、慣れるために魚取りしてもらおうか」


「勘弁ください」


「冗談だよ」


 その時、彼女が笑ったのを初めて見た。


「あ、あの。私の顔に何か?」


「ん?いや、笑ってた方がいいなって。なんかずっと怯えてるみたいな顔してたから」


「……慣れてきたのかな」


「だとこっちも嬉しいよ」


「おーい!早くしないとまた飯抜きだよー」


「……三食飯抜きはさすがにヤバイな。早く行ってやるか」


「そうだね」


 今日の予定は朝ごはんを食べた後考える予定だ。

 とは言っても、ほとんどやることなんて一つしかないんだが、いかようにして行うかという点で議論するだけ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


「で、正面突破というわけになったわけだが」


「いっそ、君達が私を見つけたってことにして賞金もらってから出てくっていう方法があるけど」


「色々浅ましいからやめとくよ……友達売りに出してるようなもんじゃねえか」


「意外に優しいんだね」


「純度100パーセントの優しさで構成されてるんだよ俺は」


「あれ?私は?」


「優しさの塊で接してるだろ」


「あれ?」


 アリーに構っていたらキリがないので、もう正々堂々と王宮入り口へ……。


「どこにいくんだ、ルナ」


「ああ、精々私とリミュエールぐらいしか知らない入り口あるからそっちから行くよ。憲兵たちに用は無いし、リミュエールに会いに行くだけだし」


「……俺たち不法進入扱いじゃね?」


「まあ、その辺りの責任は私が負うから、ね?」


 ね?と言われても不安要素は拭われないけど。いきなり狙撃されたらどうしようもないんですけど。俺たちは戦闘民族ではないことをまずは明言しておきたい。

 そんな俺の不安とはよそにアリーの方はワクワクが抑えられないみたいにそわそわしてるし。


「ここ、ここ」


「……って、ただの壁じゃねえか」


 王宮の城壁を取り囲んでる一部分に手を当てたが、他の部分となんの違いも見られない。


「回転扉になってるんだよ……よいしょ」


 誰が作ったんだと言わんがばかりの回転扉を当たり前のように潜って、王宮の敷地内へと簡単に入ってしまった。こんなんでいいのだろうか。


「で、その王女様の部屋は?」


「特定の人しか入ってこれないよう作りにしてるから……簡単には見つからないね」


「なんなの?王女様」


「まあ、上に立つ人っていうのは何かしら特殊なんだよ……たぶん」


 そんなしょっちゅう超能力者がいたら世界そのうち崩壊してそうだよ。

 何人いたら崩壊できるだろうか。少しばかり気になるところだ。超能力者たちがそれを望むか、力を行使するかは知らんけど。


「で、敷地には入れたが、王宮の中へはどうするんだ」


「まあ、そこは……王宮の偉い地位の人なら知ってる通路を使うしかないね」


「じゃあ、お偉いさん頼むよ」


「降ろされてたらゴメンね」


 可能性としてはなくはないのか。いつ帰ってくるかもわからない人をいつまでもその席に置いておくという温情があるとも限らないのだ。

 まあ、自分から戻ってきた?のだから、幾分か遭遇することはあっても急に邪険にされることもないだろうけど。ここの姫君と仲よかったみたいだし。


「えっと、そうそう、ここ」


「墓じゃねえか」


「この墓はダミーだよ。地下に繋がってるからここが」


「お偉いさんは命狙われると大変だな」


「まあ、だからこそ知ってる人はそこに縛り付けておかないといけないんだけどね」


「どうして?」


「情報を漏らさないとも限らないでしょ?ウチにだってスパイがいないとも限らないわけだし」


「それもそうか」


「じゃあ、ついてきて」


 どうやら梯子がかけてあるみたく、そこから地下へと行くようだ。

 なんだか近代化進んでるんだからここももっとハイテクにしてくれよ。ワープゾーンが設置してるとか。


「そんなもの開発されてるなら、世界中で使われてるでしょ」


「それもそうだな。てか暗いぞ。前が見えん」


「私は夜目が効くから大丈夫だけど、普通の人はそっか……じゃあ、私の手を握って。引いてくから」


「ああ、わかっ……」


 パシッ


「アリーさん?」


「フレアは私が引いてくから」


「妬いてる?」


「どさくさ紛れに何かされてもこっちが困るよ」


 しねえよ。俺をなんだと思ってるんだ。何年付き合ってきてんだ。

 ここにきて、幼馴染が幼馴染として擁護してくれなくなってるぞ。


「はぐれないようにね。五分も歩けば着くから」


 ただ、こうも暗いと、明るいところに出た後目が慣れるのに時間がかかるから面倒だ。

 夜目が利くというルナのやつはそういう対処はどうしてるんだろうか。

 なんとなく、夜目が利くとか言っておきながら、障害物の察知とか出来るから目を閉じて進んでる可能性も無きにしも非ず。

 いきなり明るくなると瞳孔がどうのこうのって、あった気がする。明順応とか暗順応っていうらしい。簡単に言えば暗いところに慣れるか明るいところに慣れるかって話だ。


「ちなみに入り口は三つほどあって、間違えると玉座の後ろに出て来ちゃうから」


「うーん、この」


「どこに出る気なの?」


「実はその王女様の部屋に繋がってたりするんだよここ。リミュエールが作り変えてたら分からないけど」


 聞けば聞くほど何者なんだリミュエール。本当ならば近くの村のやつだからって王女様に会えることはなかったんだろうけど。これも巡り合わせというやつか。

 ただ、話を聞いてるだけだと性悪な魔女みたいな像を想像をしてしまう。


「あったあった。エレベーター」


「近代的なもんがあったな」


「普通に設置してたらバレるでしょ」


「直通だから。これも普段は隠れてるからすぐ見つかることはないし」


 こうして五分ほどの地下を歩き、おそらくリミュエールの部屋であろうところへとたどり着いた。


「ん、思ったより早かったね」


「わ、もう。リミュ、いきなり抱きついてこないでよ」


「……この子?王女様」


 エレベーターが開くやいないや、ルナをめがけて突撃して来た小さな体躯の子供がいた。


「うん。そうだよ」


「……ルナ、誰?この人たち。ルナ以外は上げないって言ったのに……」


「わー!待って待って!ちゃんと説明するから!」


 なんだかすごい迫力だ。下手に動くと頭撃ち抜かれそう。


「せっかく帰って来たと思ったら変なの連れて来て……」


 うーん、変なの扱い。まあ、実際変なのなんだけどさ。


「リミュ、聞いて欲しいことがあるの」


「……ルナの頼みなら」


「ありがと、リミュ」


「でも、先になんで王宮から出て行ったのか説明するのが……先」


「う、うん。そうだよね。ゴメンね」


 雇われてるからなのか、そもそもあまり強く当たれないだけなのか、この王女様がルナに甘えてるのかそのあたりの関係図はまだよく見えないけど、俺とアリーは立ち尽くすままに放置され、ルナの弁明が始まっていた。




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