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非日常を望んだ少年と日常を望んだ少女(4)

「はたして、あそこの川はどちらのものと考えるべきか」


「……国って何で成立するか知ってる?」


「金、地位、資源」


「お前は石油王にでもなりたいのか。近場に出そうなところなんてどこにもないわよ。正解は国民、領土、主権よ。ここ以外にも国はちゃんとあるでしょうが」


「一生涯に行くかどうかなんてところに目を向けてられない」


「そんなことはいいわ。私たちの国はムーンサルト国。セント村はその一部なわけ。だから、川自体はムーンサルトのものって考えよ」


「でも、国でもいくつかに地域分かれてるよな。そうすると、川はどこの地域のものだって話にならね?」


「デクテット王宮の傘下だから、セント村自体デクテットのもの。そこの川もデクテットのものってとこかしらね」


「統治国家って怖い」


「逆にそうやって守られてるのよ」


「反逆した場合どうなんの?」


「普通に私刑に処されるでしょ。まあ、あれがどこのものだっていうのは所有主が確かでないっていうのは確かな話かもね。上のものが自由に出入りできるのに、下の私たちが自由に出入り出来ないのもどうかと思うけど」


「それこそ、闇討ちだ暗殺だ反逆だってあるからじゃねえの?制約だろ」


「じゃあ、まず隊長さんがこっちを訪ねてきたら、あんたはどう思う?」


「嬉しい」


「……反対にあんたが上の立場の人だとしましょう。自分より下の立場の人があんたに会いに来たらどう思う?」


「話を通してからにして欲しい」


「そんなもんよ。ルナ隊長さんだって、私たちが訪ねたところで大して嬉しくないでしょう」


「でも、近衛兵隊なんて男ばっかりだろ。俺はともかく女子のお前なら打ち解けられるんじゃね?」


「逃げ出した理由はそこにあるのかしら?」


「お年頃ってやつか」


「そうこうしてる間に王宮の入り口が見えて来たんだけど」


「まあ、正面立ってジロジロ見てると疑われるから木の陰から見てみるとするか」


 門番だか憲兵だか知らんけど、門の入り口には五人ほど人が門に背を向けて立っていた。

 王宮っていうぐらいだから、ここを治めてる人が住んでんだけどさ。雇われてる人数は五百を超えるとかなんとか。


「最近は領地拡張とかで他地域と争ってるらしいわね」


「ふーん。広くなっても俺たちになんか有益なことってあるのか?」


「単純に材が潤うなら、私たちにも何かしらの施しがあるでしょ。勝てばの話だけど」


「作戦指揮官かつ近衛兵隊隊長を欠いてこれから勝てるとは到底思えんな」


「あんた集団戦術について勉強してなかった?」


「何?俺に指揮官をやれと?」


「できるかもよ?」


 そもそも指名してもらえないだろう。誰かが推薦してくれないと。


「ま、人は余るほどいるんだ。代理になるやつもいるだろう。無名のやつがいきなり名乗り出るのも筋違いだ」


「……代わりがきかないからああやって号外出してるんじゃないの?」


「それも一理あるな。憶測話し合ってても仕方ないし、あそこの門番にでも話を聞いてみるか?」


「取り合ってくれるかしらね」


「物は試しだ」


 ………!


 …………


 …………!


 …………


「ダメね」


「だろうな」


 門前払いだった。

 あの隊長さんはものっそいべっぴんだったし、アリー程度じゃそこまで見向きもされないか。


「失礼なこと考えてない?」


「色仕掛けでも使ってもらおうかと」


「あんた落とせないぐらいだし、使えないわよそんなの」


「仕方ない、隊長さん探しに行くか」


「手がかりないけどどうするの?」


「まあ、足を使うしかないだろ。しらみつぶしだ。幸い顔は分かってるし」


「私ちゃんと見たことないわよ」


「金髪で目立つし、顔はかなり整ってるし、見れば分かる」


「……そんなに目立つならすぐ見つからない?」


「……それもそうだな。周囲から察知されなくなるローブとか羽織ってんじゃねえの?」


「そんな便利なもんが……」


「ぐはっ!」


 なんで?なんでいきなり殴れたの?俺。


「どさくさ紛れにお尻触ろうなんていい度胸してるじゃない……」


「ま、待て。俺じゃない。わざわざそんなことする必要ないだろ」


「……私のお尻はそんなもの程度の評価ってことね」


「…………捕まえた」


「やっ……!」


「シー。アリーもちょっとこっちに来い」


「?????」


 おそらく見えてないのだろう。

 多分、アリーは偶然当たってしまったのだろう。

 とりあえず、俺たちはずっと同行していたのだ。どこからか知らないけど。

 とりあえず、森の木陰の方へと移動させて、掴んでるものを離した。

 これがおっぱいとかだったら笑えないけど。


「とりあえず、ここなら監視の目もない。ローブ取ったら?」


「あっ……!」


 申し訳なさそうにローブを取って、その姿は全貌を表した。


「な、なんで分かったの?」


「……匂い?」


「フレア、あんた匂いフェチの変態だったのか」


「そこは今はいいだろ!姿は隠せても、匂いまで隠せないみたいだな」


「そ、そんなに臭うかな……」


「いや、すごくいい匂い。なんだ、この女子は!」


 お前も同じ女子だろ。


「はあ、あんまり騒ぎ立てるとあそこの奴ら来るぞ」


「はあはあ」


 なんでこいつが興奮してるんだ。


「目を覚ませ!」


「私、この子のお嫁さんになる〜」


「私も女の子なんだけど……」


「だからいいの!」


「……場所移すか」


「その方がいいみたい」


 これも一目惚れというやつなんだろうか。

 アリーのやつは俺たちをつけてた?と思われるただいま絶賛探し者となってるルナにお熱になってるし、その人とアリーを引き連れて、さらに森の奥へと進むのだった。



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