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1.魔物が人を拉致るのは合法ですか?

ジャラッという音で目を覚ますと、俺は薄暗くてカビ臭い部屋……むしろ牢のような所にいた。


手首と足首には漫画で見るような、


太い


厚い


重い


この3拍子が揃った枷がはめられている。


………俺、何かしたっけ?


必死に記憶を辿っても、こんな囚人みたいな格好になるような間違いは犯してない。


学校に行く途中、地面に穴が開いて……


変な茶色いのがホラーな感じで出てきて……


足引っ張られて………


…………その後、どうなったんだっけ?


唸りながら思い出そうとしていると、こちらに近づく足跡が聞こえてきて、半ば期待しながら檻の外を見た瞬間、声を失った。


で、でけぇ…!!


え?頭何あれ!?


ウシ!?!?


俺を見下ろすヤツは身長が3mはあり、その身長に見合うような筋肉がついた大男で、更に俺の思考をフリーズさせたのはそのどデカイ身体の上についている頭。


バッファローを彷彿とさせるような凛々しいウシの頭だった。


完全に目が合った俺に笑いかけてきた大男を見て、思わず死を覚悟してしまう。


あ、ぜってぇ喰われる………


「気分はどうだ?」


「あ……、まぁ、いい感じ………ですかね?」


RPGに出てくるボスみたいな獰猛な声を予想していた俺は拍子抜けして変な声を出していた。

これは………巷では"イケボ"と呼ばれ、数多くの人々を虜にしちゃうやつだ!!


ウシ頭の声は品格があって、落ち着けるようなバリトン。


俺が声優のスカウトマンだったら即契約までかこつけるぞ!!


そんな感じ。


「それはよかった。


それからこんな所に押し込んでしまって申し訳なかった。


直ちに客人の枷を外し、部屋へ案内しろ。」


近くにいた兵士にそう言ったウシ頭は俺に1礼した後どこかへ行ってしまった。


重い枷を外され自由になった手首、足首の解放感に浸るまもなく豪華な部屋に通される。



さっきまでいたのは地下牢だったのか……


現代日本の極悪犯罪者もびっくりな地下牢から成金たちもびっくりな部屋への移動で、俺はテンパり始めた。


何あれ


地上のにお金使いすぎて、

「親方〜、地下の材料足りねえっす。」


「あー、もういいわ。


どうせ牢屋になるわけだし。


そのままにしといた方が雰囲気でるし。


よし!そのままに決定!!」


みたいな会話があっててもおかしくないな………。


―――――――――――――


ここまで案内してくれた兵士に代わって、俺の側には1人のメイドがいた。


メイドと言っても喫茶にいる感じではない。


スカートの丈は膝上どころか、一昔前の女ヤンキーを思い出させるような長さ。


…………走るとき、絶対「あー、もう!!」ってなるな。


顔はさっきのウシ頭とは違い、普通に人間。


………かと思いきや、耳が尖ってる。


耳以外は普通の彼女の指示に従って風呂に入り、地下牢での汚れを綺麗に洗って出ると、さっきまで着ていた制服とは違い、全く見たことない服を渡された。


広げてみて固まる。


「すいません。……これ着らなきゃダメですか?」


「はい。主が晩餐会を催すと言っておりますので。」


抑揚があまりない声で返されてもう1度手にしている服を見る。


なにこれ。


色的には綺麗だけど、キラッキラした装飾がついた青緑の服。


中世ヨーロッパの貴族の坊っちゃん達が着ているようなデザイン。


細身の人間に合ったスラッとした感じで、着る人によれば、すごくかっこよくなるはず。


だが、残念ながら俺は身体こそ細いものの、至って平凡な顔立ち。


よく言って中の上。


似合うわけない。


まだ救いと言えるのは坊っちゃん達が着けてた首もとのビラビラしたのが無いこと。


慣れない服に戸惑いながらも何とか着る。


「ん?」


何か………服が着た瞬間縮んだ?


袖を通した時は少し長いように感じたはずなのに、今はぴったりしてる。


もう1回脱いで確かめようかとも思ったが、着るのが大変だったので止めておいた。

着替えていた部屋を出ると、メイドがさっきと同じ場所に立っていた。


「とてもよくお似合いですよ。」


気を使って言ってくれてるのかもしれないが、抑揚のない声のせいか、お世辞でも喜べない………。


一応礼を言って、メイドの後に続いて長い廊下に出た。


お互い何も話さず、気まずい空気が流れる。


そのまま話題も見つからずに階段を上がり、また長い廊下を歩くとメイドが止まった。


「ここが本日の晩餐会の会場です。


どうぞごゆるりと。」


メイドが1礼したのに返しながら中に入ると誰も居なかった。


あるのは長ーーーーいテーブルに沢山の椅子。


俺の身長よりデカい誰かさんの肖像画とバスタブ。










…………………バスタブ?


めちゃくちゃ高そうな絨毯が敷かれた床の上に自然に置かれたバスタブ。


それに、俺の目が大丈夫なら水が並々入っている。


こぼれたらどーすんだよ!!


何であるのかとか色んなことを考えながらバスタブを見ていると水が盛り上がった。


誤解の無いように言っておくと、俺のせいじゃない。


俺はバスタブから少なくとも5mは離れているし、水の盛り上がり方も普通じゃない。


簡単に言うと、手前側の半径20cmだけポコッと盛り上がってる。


盛り上がりは段々増してきて、終いには人の後ろ姿になった。


女の子?


透明な水なのに髪の毛に癖があることもその髪の毛が太ももくらいまであることも分かった。


女の子は何も着ていないようだけど、彼女の髪が完全に隠してくれているお陰で、俺は罪悪感を感じることなく彼女を見ることができた。


「ようこそお越しくださいました。」

女の子が振り返り、笑顔を向けながら言った。


「どうぞこちらへ。」


女の子はバスタブから出て俺を案内した。


女の子についていくときにバスタブの横を通ったからついでにチラリと中を覗くと水滴1つ残っていない。


普通なら「はぁ!?」とか言って驚くところなんだろうけど、俺は意外にも冷静で、そのまま女の子の案内してくれた席に腰をおろした。



………まぁ、ウシ頭のすぐ後だったからな。


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