2.動揺
鈴木さんが妊娠……、鈴木さんが妊娠……。おい、ウソだろ !? マジかよ……。
だって彼女はまだ今年で19歳なわけだし、結婚もしてない。それなのに妊娠って……そんなことするような子には見えないんだが、まさか入社1年目でそうくるとは……。ってか妊娠したってことはできちゃった結婚するのか? そうだとしたら近いうちに辞めちゃうってことだよな? はぁ、マジかぁ……。ようやくできた後輩なのに。
「今は佐藤君と一緒に仕事してるでしょ? 仕事中に突然体調が悪くなることがあると思うから気にしてあげてね」
「は、はい」
話が終わった上司は給湯室を出ていった。「気にしてあげてね」って言われたけど……その前に妊婦さんに対してどうするのが正しいのか分かんないんですが……。と、とりあえず今は仕事に戻ろう!
俺は給湯室を出て自分のデスクに向かった。
デスクに着き、パソコンの電源を入れる。パソコンが起動するまでの間、俺の脳内は某動画サイトの文章が画面を横切るような感じで「鈴木さんが妊娠している。鈴木さんが妊娠している」という言葉が何度も何度も横切っていた。あー、いかん。仕事に集中しろ俺! 待っている間に資料でも出しておくんだ。
そう自分に言い聞かせて資料を出そうとする。しかし何故か資料とは関係ないもの――ハサミとか、何も入っていない空のファイルなどを出してはしまっての繰り返しをしてしまうのだった。おいおい、何やってんだよ俺。動揺しすぎだろ。頭を仕事のことに切り替えるんだ。
雑念を振り払うように軽く頭を振る。その時、誰かが近づいてくる来る気配を感じた。
「おはようございます」
そう言って現れたのは鈴木さんだった。
「おはようございます」
一瞬、頭がフリーズしかけたがなんとか変な間を空けずに返せた。ふ~、あっぶねぇー。危うく気不味い空気になるとこだったよ。
そんなことを思っていると、鈴木さんはゆっくりと自分のデスク――俺の隣のデスクに着いた。そしてゆっくりとした動作でパソコンの電源を入れる。……マズイ、余計に集中できねぇ。
俺は何とか資料を見つけ出し、資料をガン見することにした。
しばらく資料を見るが、やはりどうしても完全に鈴木さんの話が脳内から消えることはない。それでも仕事7:鈴木さんの話3くらいの割合まで落ち着いてきた俺は仕事に取りかかった。