『アイツら』と俺
「さて、今日の深夜アニメはなんだったかな……」
俺はそんなことをつぶやきながら、カバンを持ち上げて帰路についた。
俺の名前は松田大和。長野県の真ん中、松本市に位置する『信濃大学』に通う大学2回生だ。毎日、朝起きて大学に行って授業を受けて友達とバカやって帰ってきてパソコンでアニメやゲームの情報チェックして深夜アニメ見て寝る、という平凡な生活を送っている。
――――いや、「送っていた」というべきだろう。アイツらと関わりを持つまでは。
『アイツら』が俺の前に現れてからというもの、およそ平凡とは呼べないことばかりしている気がする。まぁ、面白いんだけどさ。
そんなことを考えながら大学の中庭を歩いていると……
「おー松田やん! ちょうどええところに!」
「探す手間が省けたな」
ちょうど例の『アイツら』の声が後方から聞こえてきた。
威勢のよさそうな関西弁と、声を聴いただけで顔まで想像できそうなイケメンボイス。
「あーなんだ、今日は何の用だよ?」
俺はあえて振り向くことはせずに、期待半分・不安半分に聞き返す。こいつらとつるんで歩くのは楽しい反面、危ねぇし疲れるからな。慎重に行こう。
「やー、これから回転寿司でも食いに行かへん?」
なんだ、割と普通な提案じゃないか。その言葉に安心しきってしまった俺は、何の用意もなく振り向いた。
「あぁ、いいぜ、どこに行く……んん!?」
甘かった! 俺の目の前には、何ともへんちくりんな生物が二匹立っていた。
一匹は緑色の恐竜……? もう一匹は馬面でおもちゃの弓を背負っている。
「お前ら……何のつもりだよ……?」
俺は脱力しながらも二人に問いかけた。
すると二人は自信満々にドヤ顔で、口々に答えた。
「ガチャ○ンや」
「サジ○リウスだ」
「いや、意味わかんねぇから!!」
「ほれ、これがお前の分やで!」
俺の言葉なんか全く意に介さず着ぐるみを手渡してくる。値札が付いたままだ……五八〇〇円!? 高っ!!
「……これ、マジで着るのか……?」
『……(グッ)』
おずおずと尋ねる俺に、二人は無言のサムズアップ。
「しょうがねぇ奴らだな……」
俺はあきらめて着ぐるみに袖を通した……。
「さぁ、みなさん、行きますぞ~!」
着替え終わった俺は、先頭に立って歩き出した。いざ着ちまえば気持ちいいもんだよな!
吹っ切れて、口調もなぜか着ぐるみのキャラクターのものに。
「おう、お前が仕切んなや!」
「全速前進だ!」
ガチャ○ン、○ック……となぜかサジ○リウス。奇妙な三匹が、回転寿司屋に向けて出発していった……。
「そこの三人! ……いや、三匹か? まぁどちらでもいいや、何やってんの君ら?」
まぁ当然、大学の敷地を出たあたりでお巡りさんに呼び止められたけどな。