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前編

キーン【ぐー】コーン【ぐー】カン【ぐー】コーン


昼休みの終了を告げるチャイムに紛れて3つの腹の虫が鳴いた


一つは小六男子ならこれくらいかなと思うような

一つは小六男子にしては小さな、

一つは小六男子にしては少し大きすぎるような腹で


十人十色とは言うがこのときの彼らのそれは見事な協奏曲を奏でた。


給食は30分前に食べた。


わけ分は当然給食当番に多く盛ってもらい、席に戻るなり小食の女子から恵んでもらい

さらにジャンケンサバイバルを勝ち抜いておかわりまでしっかりしている。


にも関わらず


「なんでこんなー足りねーんだよ!!」とはチビの俊介(しゅんすけ)

「育ち盛りの僕らはもっと栄養をとらなければならないはずだ」と、中肉の幸成(ゆきなり)

「お、おにぎりが食べたいんだな」と、太っちょの(たくみ)



-----腹いっぱい給食が食いたい


それが彼らの(食いすぎのくせの)望みだったが


さすがにそれだけ量をとってればそれ以上は我慢するしかなかった。

----------------------------------------------


とある日


その週の給食当番だった俊介と匠は、給食後にクラスの食器を配膳室にだらだらと運んでいた


「だらっしゃー!!」俊介が小さな身体で一番重い、各食器が入ったケースを豪快に置き


首をひとつふたつぱきぱきならして教室に戻ろうとすると トントンと肩を叩かれた


「タクちゃんどうした?」


「えーとねー見てみてあれあれ」


丸缶(主に汁物とか麺類入れる深めの容器)担当だった匠が指差していたのは 今日の献立のカレーの余りだった


容器には1-3と書いてある、どうやら1年生が食べきれずに残したようだ。


「俺たちの量多めにしてくれればんな事もなくなるのになー」


「もったいないねー」


【ぐー】【ぐー】


腹をならしている二人の横で角缶を置いた幸成は真剣な目でそれを見つめていた


教室に帰り昼休みを教室で彼らは3人で過ごしていた


「ってな訳なんだけどさー 量増やすべきだとおもわね?ユキは」


「そうだよねー6年生はもっと量を多かったらいいのにー」


鼻息荒くする俊介の意見にのほほんと匠が同意する。幸成は腕を組み目を閉じて何かを考えていた


「ユキ真面目な顔してどうした?」


「ユキちゃんもしかしておなか痛くなったの?」


急にぱっと幸成の目が開いた。


「決めた」


また始まったかと二人の視線が幸成に降り注ぐ


一見一番目立たない真面目そうな幸成だが彼は3人組の中で一番の危険人物なのだ


いつも悪戯を提案しては俊介と匠を巻き込み教師から怒られていた。


いつもその優等生の様な見た目からは信じられない言葉を口にしていたが今日は何を口にするのだお前は


「強盗をしよう!!」


二人は幸成の変な発言の角度はできていたが、こいつはまた何を言うんだと


一瞬空気が凍りつく


そして時は動き出す!


「ご、ごうとうー!?あれだろ?銀行とかで金取るやつ おまえ馬鹿!!そんなの警察に捕まっちゃうじゃねーか!!」


「ええええ ユキちゃん銀行からお金とってそのお金でいっぱい肉マンとかケーキとか食べるつもりなの!?僕も食べたいけど、ママにばれたらしかられちゃうよぅ」


そんな二人を幸成は言葉でいなす


「そんな危ない事しないよ 僕たちがするのは給食強盗さ」


疑問の顔を浮かべる親友二人を尻目に


見た目だけ優等生の幸成はニヤリと笑った。


この色々な意味での小さな強盗団の戦いが今始まった。

自分自身給食足りず、いつももっと食いたいなーって思って書きました。

ひとまず前後編に分けましたが、文はまずは慣れるまで、辛抱して後編でしっかりオチまで行きたいと思います。

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