くじらのねがい
くじらの泳ぐ海には不思議な泡が浮かんでいます。
くじらは、その泡を食べて生きていました。
その日たくさんの泡が、いっぺんに浮かんできました
その泡はとても深い青色をしています。
くじらは、その青い泡を食べました。
すると、からだは冷えてしまいました。
次の日、青い泡に輝くだいだい色の泡が混ざっていました。
だいだい色の泡を食べると、くじらは心まで温まりました。
そのだいだい色の泡は、しばらくのあいだ増えていきました。
くじらは、そのごちそうに、とても喜びました。
ところが、ある日を境にだいだい色の泡は消え、燃えるような赤い泡が増えてきました。
その泡は、食べようとしても、熱くて食べることができませんでした。
お腹がへったくじらは、青い泡を食べるしかありませんでした。
それでも、青い泡があるうちは幸せでした。
たくさんの泡が出てきた日から6カ月たったころでした。
透明な泡が浮かんでいました。
食べても、何もありません。
くじらは、さみしくなりました。
しかも、その泡は日に日に増えていきます。
くじらは、わずかに浮かんでいる青い泡を食べて、なんとか生きていました。
くじらは、だんだんと弱っていきました。
透明な泡も、青い泡も食べる気がしないほどです。
それは、太陽のような明るさでした。
あたり一面にだいだい色に輝く泡が浮かんでしました。
その日は、たくさんの泡が出てきた日から、ちょうど1年がたっていました。
くじらは、久しぶりにお腹いっぱい食べました。
お腹も心も満たされた、くじらは夢の中で願いました。
このだいだい色の泡がいつまでも消えませんように。
いつまでも世界が輝いていますようにと。
大きな不幸があると、平和を望むのに、その気持ちはだんだんと薄れていく。そんな人の心を泡で表現してみました。わかりにくかったですかね?あくまで童話ですので、ご留意ください。
くじらがどんな光景を見たのか想像していただければと思います。