お隣の音鳴り
パキッ
僕がアパートの廊下を歩いていると、そんな音が響く。
お隣の部屋の前を通った時だ。
最初は気にしていなかった。
いつから鳴っていたのかも分からない。
パキッ
お隣のドアの向こう、部屋の中から響いてくる音。
気にはなるが、何が鳴っているのか分からない。何か軽い物が折れるような音。どこかで聞いた気がする。
パキッ
今、隣に住んでいるのは若い男性。
挨拶を交わしたことがないから、何をしている人か知らない。
でも、いつも僕が部屋を出る時には、もう出勤しているみたいだから、彼が鳴らしているわけではなさそうだ。
人が通るとセンサーが反応して、音が鳴る仕組みなのかもしれない。
ちょうど誰かの荷物が届いたみたいだったので、偶然を装って部屋を出る。
配達員がお隣の前を通るところで、さりげなく聞き耳を立てる。
……
あれ? 音がしない。
パキッ
そして、僕がお隣の前を通ると音がした。
彼の前には女性が住んでいたが、その時にはこんな音はしなかった。
その女性は行方不明だそうだ。僕も警察に事情を聴かれて協力した。
もしかして、その幽霊……そんな馬鹿な。
お隣のドアをじっと見つめる。
しかし、お隣を見ているなんて不審者以外の何者でもないので、すぐに部屋に戻った。
パキッ
今日は宴会で帰りが夜遅くなった。深夜になっても、あの音は鳴る。
酒の勢いもあってか、調べてみようという気になった。
僕は少し耳を澄ませながら、お隣の前を何度か往復してみた。
そのたびに。
パキッ……パキッ……パキッ……
十回目の音が鳴る。
すると、音が止まった。
僕は不思議に思い、もう一度お隣の前を通る。
ぎゃあぁー!
ドアの向こうから、女性の悲鳴。
僕は驚いて自分の部屋に駆け込んだ。
……僕は、この叫び声を覚えている。
思い出した。あの音は彼女の指を折るたびに鳴った音だ。
彼女は、殺人犯が家の前にいるよと警告していたんだ。




