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天才の誕生

主にカクヨムで連載していますが、なろうでも同時連載することにしました。内容は同じです。

 ここは帝国セレストリアと呼ばれる国である。その国の辺境にある小さな村で、ごく平凡な家に一人の少年が生まれた。

 名をノヴァ・アルカディアという。


「やっぱりかわいいわね」

「おう、そうだな」


 ノヴァが誕生した瞬間も、その後しばらく経っても、彼を天才だと思う者は誰一人いなかった。それも当然だ。ノヴァは生まれて以来、両親以外の人と会ったことも話したこともなかったのだから。

 もちろん、最初にノヴァの天賦の才に気づくのは両親である。きっかけは、ノヴァの誕生からわずか一年半が過ぎたころだった。

 その日、両親はちょっとしたプレゼントのつもりで家族揃って外出した。行き先は近所の古本屋だ。本当はもっと本格的な図書館に連れて行きたかったようだが、辺境にはなく、帝都まで行くわけにもいかないため古本屋に落ち着いたのだ。

 母親に抱かれたまま店内を歩いていると、ノヴァが明らかに強い興味を示すものがあった。宇宙の図鑑、天文学の書籍、さらには論文まで。ジャンルを問わず「宇宙」という言葉の付くものすべてである。

 今までノヴァが言葉を発したことはなかった。にもかかわらず、彼は文字を理解し、内容を読み取っているようだった。その事実に両親は軽い恐怖すら覚えた。


「ノヴァって、もう言葉を理解できるのね……」

「まだ文字なんて教えた覚えはないぞ。いったいどこで覚えたんだ?」


 考えても答えは出ない。両親は、ノヴァが興味を示した本をすべて買い与えることにした。

 実のところ、その前から不思議な出来事はいくつもあった。ノヴァは生まれる前から買いだめしていた子供用のおもちゃにまったく興味を示さなかった。産声こそ上げたものの、それ以降一度も泣いたことがない。精神面が異様に成熟していると感じさせられる場面は多々あった。

 そんなノヴァが唯一心を動かされるもの、それが天文、特に宇宙論や恒星内部構造といった専門的な分野だった。

 一通り本を買い終え、店の入り口に置かれていたビニール袋にそれらを詰めると、ノヴァはすぐにそこへ手を伸ばした。


「はいはい、続きは家に帰ってからね」


 母親がそう声をかけると、ノヴァはまるで理解したかのように大人しく手を引っ込めた。

 言葉を理解しているという確信を強めた母親は、案外育てやすい子かもしれない。そんなのんきな考えを胸に、家路につくのだった。

  家に戻ると、ノヴァは待ちきれないとばかりにビニール袋へ手を伸ばし、次々と本を取り出しては読み始めた。その異常なほどの集中力だけでも驚くに値したが、何よりも両親を驚かせたのはその理解力と読書速度である。

 生後わずか一年半とは到底思えないほど、ノヴァは文章を読むことに慣れていた。図鑑から天文学の論文まで、合わせて千ページを優に超えるであろう本の山を、彼は五時間とかからず読み終えてしまったのだ。

 しかも、その間ほとんど食事も睡眠も取らず、ひたすら本の世界に没頭していた。ページをめくる小さな手は一度たりとも迷うことがなく、視線は内容を吸い取るように走り続ける。

 そんな息子の姿を目の当たりにし、両親はようやく悟った。ノヴァは天才だ、と。

 なぜ言葉を話さないのか、その理由は依然としてわからない。だが、言葉も文字も、そして書かれた内容すら深く理解していることは疑いようもなかったのである。

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