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**第4話 メイド様、ネットでバズる (そして正体が疑われる)**



「……なあ、エルシア」


朝。

スマホを握ったまま、俺は固まっていた。


「なんですか、ご主人様。

 朝食なら今日は“爆発しない方向”で――」


「それはありがたいけど、そうじゃなくて」


画面を見せる。


そこには、昨日の商店街での動画。


《銀髪メイド、野良猫に完全敗北》

再生数:126万回


「……?」


エルシアは、ゆっくり瞬きをした。


「なぜ……私が……

 あの小さな魔獣と戯れている映像が……?」


「ネット。

 世界中に拡散される魔導書みたいなもの」


「……恐ろしい文明ですね、この世界」


コメント欄はさらにひどい。


・「実在する?」

・「CGじゃない?」

・「AI生成にしては自然すぎる」

・「このメイドさん、どこで会えるの?」


「ご主人様……

 私、狙われていませんか?」


「すでに“正体考察班”が生まれてる」


エルシアは青ざめた。


「も、もしや……

 この世界では、異世界から来た者は……

 処刑、解剖、研究対象に――」


「やめて、ホラー方向に想像膨らませないで」


だが、その不安は現実になりかけていた。


――ピンポーン。


インターホンが鳴る。


「宅配です!」


「助かった、荷物だ」


ドアを開けると、段ボール箱。

差出人は……不明。


中身は――


メイド服(改)

ウィッグ:銀髪

名刺:『動画配信事務所・ネクストバース』


「……スカウト?」


「な、なんですかその“事務所”というのは!?」


名刺の裏には手書きの一文。


『ぜひ“中の人”込みでお話を』


「……完全に疑われてるな」


エルシアはぎゅっと拳を握った。


「……私、隠れます」


「え?」


「この世界に迷惑をかけるくらいなら……

 召喚を解除して――」


「ダメ」


即答した。


エルシアが驚いたようにこちらを見る。


「もう騒ぎは起きてる。

 だったら、逃げるより……

 “普通に生活してるメイド”で通せばいい」


「……普通、ですか?」


「猫にデレて、料理失敗して、掃除で家壊すけどな」


「それ普通じゃありませんっ!!」


ツッコミは元気だ。

少しだけ、安心する。


その日の午後。


エルシアは、メイド服のままサングラスをかけていた。


「……これで大丈夫でしょうか?」


「逆に目立ってる」


案の定、道行く人がざわつく。


「サングラスメイドだ……」

「対策雑すぎない?」


エルシアは小声で囁いた。


「……でも……

 あなたが隣にいるなら……

 多少見られても、平気です」


「それ、またデレ?」


「違いますっ!!

 状況耐性の話ですっ!!」


その夜、動画の再生数はさらに伸びた。


タイトルは――

《サングラス銀髪メイド、正体不明のまま消える》


だが、コメント欄には一つだけ、異質な書き込みがあった。


『――召喚反応、確認』


俺はまだ知らない。


この世界には、

“エルシア”を知る者が、

他にも存在していることを。

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