表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

第2話 ――メイド様、初仕事に挑む(そして即カオス)



エルシアが俺の家に現れてから一夜。

朝のリビングで、俺はすでに覚悟を決めていた。


なぜなら――


「ご主人様ぁぁぁ! 朝食の準備が整いましたっ!!」


台所から物騒な煙が上がっているからである。


「……エルシア。念のため確認するけど、爆発してないよね?」


「ば、爆発なんてするわけないじゃないですかっ!

 ちょっと……火の精霊が不機嫌になって、

 フライパンを溶かしただけです!」


「それ爆発よりヤバいやつじゃん!」


エルシアはフリルのエプロン姿で胸を張る。

銀髪がゆらりと揺れ、気品は完璧なのに中身はカオスだ。


「さ、さぁご主人様。どうぞ召し上がれ!」


差し出された皿には――

焦げなのか、闇なのか判別不能な“黒い何か”。


「これ……本当に食べ物?」


「し、失礼ですね! 味は保証しますっ!

 べ、別にあなたに美味しいって言われたくて作ったわけじゃ……」


「(はいはい出たよツンデレ的なアレ)」


「言うな!!」


エルシアのツッコミが炸裂し、皿が震える。


「分かった、分かったよ。じゃあひと口――」


意を決して“黒いもの”を口へ運ぶ。


……。


……あれ?


「……普通に美味しいんだけど」


「えっ……」


エルシアが目を丸くした。


「お、おかしいですね……もっと……こう……

 “うっわ何これ!?やばっ!死ぬ!”みたいな反応を期待し――」


「期待してたのそんなの!?」


「な、なんでもありませんっ!!」


顔を真っ赤にしながら、そっぽを向く。


けど、その耳はほんのり嬉しそうに赤い。


ツンデレのくせに、しっかりデレがにじみ出ている。


「……それでエルシア。今日は何をする予定?」


「もちろん、お掃除です!

 あなたの生活空間を、わたくしがパーフェクトに整えて差し上げます!」


その宣言は頼もしい……と言いたいところだが。


エルシアの手には魔法陣が光り、

そこから謎の巨大ほうきが召喚されていた。


「や、やめたほうが――」


「問答無用ですっ!!

 このメイド・エルシアの真骨頂、お見せしましょう!」


次の瞬間。


ブオォォォォォォォォ!!!


暴風がリビングに吹き荒れた。


掃除機どころではない。

リビングの家具が浮き上がり、カーテンが裂け、ソファがひっくり返る。


「ちょ、やばいやばいやばい!!」


「大丈夫ですっ! 精霊掃除ゲイルクリーンは完璧な――」


ドゴォォォォォォン!!


天井の一部が吹き飛んだ。


「完璧って言ったよね!?」


「……ち、違うんです。今回は……えっと……

 風の精霊が気合いを入れすぎただけで……」


「精霊、方向性間違いすぎだろ!」


エルシアは落ち込んだように肩をしゅんと落とし、

ぽつりとつぶやいた。


「……が、頑張りたいんです。

 あなたの役に……立ちたくて……」


その声は、小さく震えていた。


さっきの破壊力とのギャップがすごい。


「……じゃあさ。次は、一緒にやろう」


「え……?」


「爆発しないように、掃除機と雑巾でね」


エルシアの銀髪が、ふわりと揺れる。


そして――


「べ……べつに嬉しくなんて……ありませんからね……!?」


と言いつつ、笑っていた。


こうしてこの日、

家は半壊しながらも、俺たちの距離だけは少し縮まったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ