第1話 ――銀髪メイド、墜ちてくる
昼下がりの我が家の庭に、突然“何か”が落ちてきた。
ドガァァンッッ!!
砂埃が舞い上がり、庭木が揺れる。
爆発かと思って身構えたが、そこには――
銀色に光る長い髪。
黒と白のフリルのメイド服。
そして、地面にきれいに“めり込んだ”人影。
「……え?」
その人影が、ぐぐぐ……とゆっくり起き上がり、
まるで英雄のように胸を張って叫んだ。
「到着っ!! 少々着地に失敗しましたが……
問題なし、ですっ!」
いや大問題だ。
銀髪の少女は胸に手を当て、恭しく頭を下げる。
「ご挨拶が遅れました。
私はエルシア=フォン=リヴィア。
あなた専属のメイドとして召喚されました!」
「そんな覚えないんだけど」
「わ、私だって来たくて来たわけじゃありません!
この世界の“主の選定”とやらに勝手に選ばれただけですっ!」
言いながら、顔は真っ赤。
ツンデレらしい自己申告である。
エルシアはあたりを見回して、微妙な表情をした。
「……ここがご主人様の家、ですか?」
「まあ、普通の一軒家だけど」
「普通……。
もう少し、こう……魔導城とか、白銀の宮殿とか……」
ぼそっと呟き、視線をそらす。
「あ、あぁ別に!
あなたの家がしょぼいとか、そう言いたいわけじゃなくて!
い、きっ、期待してたわけじゃなくてっ!」
「めっちゃ言ってるけど。」
「言ってないっ!!」
ピシッと指を突きつけてくる。
それだけで庭木が揺れるほどの風圧――物理的にハチャメチャである。
「とにかく!
私はあなたのメイドとして働きます。
掃除、洗濯、料理……すべて任せてください!」
その言葉を聞いた瞬間、俺は反射的に言った。
「料理はいいよ。台所が爆発しそうだから」
「なッッ!!」
エルシアの頬が膨れ、苦し紛れに叫ぶ。
「べ、別に……あなたのために料理が得意になろうとしてるわけじゃ……
ないんですからね……!」
「それもうフラグじゃん」
「言うなぁぁぁぁぁ!!!」
その叫びが、地面に突き刺さったクレーターをさらに広げた。
こうして――
銀髪ハチャメチャツンデレメイド“エルシア”との、
前途多難な同居生活が始まった。




