第七話「いざ任務へ」
任務へと向かう前日、ラスとジュリは訓練場にいた。
ここ8日間はほとんど訓練場へと来て、’力’の使い方について特訓をしていた。
ラスとロウは隊の編成も済ませた。
三番隊、四番隊合計して約500人の精鋭部隊。
人数こそ少ないが、そもそも隊長が2人も参加するため、戦力は十分である。
隊員は最初こそ、見慣れない少女と普段と違う任務に驚いている様子であったが、ジュリと会話をして、その思いを感じたのかすぐに慣れたようであった。
ラス「不安はありませんか」
この日も特訓を終え、休憩しながら会話をしている。
ジュリ「…大丈夫。二年間も逃げ回ってたし、移動の速さには自信あるよ」
ラス「そうではなくて、」
落ち着いて答えるジュリに対して、ラスは話を続ける。
ラス「同国の者と戦うことに対してです。」
ジュリ「それは…」
ジュリは少し考えてから答えた。
ジュリ「もし相手を殺さないといけないとかってなったら話は違うけど、そうはならないんでしょ?」
ラス「当然です。決してあなたの手を汚させたりはしません」
ジュリ「なら大丈夫」
ジュリは力強く答えた。その様子を見て、ラスも少し安心したようだ。
ラス「…そうですか。なら良かったです。今回は相手の数も少ないので、大した戦闘にはならないでしょう。それに私とロウも戦います。大船に乗った気持ちでいてください。」
ジュリ「そうだね。頼んだよ」
ラスはジュリを王宮へと送ったあと、自宅へと帰り、早めに夕食を済ませて就寝した。
ーーー
翌朝、身支度を手短に済ませ、王宮に向かう。日課のランニングも今日はしない。
二階にあがり、ジュリの部屋へ行く。
ラス「失礼します」
声をかけると、準備を済ませたジュリが出てきた。
ジュリ「待たせた?」
ラス「いえ、丁度です。行きましょう」
2人で階段を降りると、イスカンダルと王妃が待っていた。
イスカンダル「よろしく頼むな」
ラス「お任せください」
王妃「ジュリも、どうかご無事で」
ジュリ「ご心配はいりません、王妃様」
見送りもほどほどにしながら、2人は王宮を出た。
王妃「…心配だわ、2人ともまだまだ若いのに、ロウに至っては17歳よ、他にも方法はあるんじゃなくて?」
イスカンダル「そうは言ってもな、俺含め一番隊、二番隊を送るには過剰だが、隊長なしでは不安だ。奴らに任せるしかない」
王妃「そうは言っても…」
王妃は、心配そうに2人の背中を見ている。
イスカンダル「大丈夫さ、あいつらはしっかり任務を遂げて帰ってくる。心配しすぎは体に悪いぞ、クララ」
クララ「それもそうね。」
2人の背中は見えなくなった。
王都の南側の大門の前で、三番隊、四番隊の精鋭たち、今回の任務に向かう者たちが整列している。
彼らの前には、三番隊隊長のフィジル・ロウ、四番隊隊長のダーク・ラス、そして水の国の王女、アクア・ジュリが立っている。
ロウ「これより、王都から南西方向に向かい、水軍の部隊の撃退に向かう」
ロウ「敵の数は凡そ1000人。この程度は、我々の敵ではない!」
ラス「今回の任務は、速さが命です。通常3日をかけて進むところを1日で進みます。」
ラス「厳しい任務になるでしょうが、必ず成し遂げましょう。」
隊員は皆背筋を張り、視線を隊長達に向けている。
ロウ「必ず勝つぞ!ともにこの戦争を終わらせるのだ!!」
隊員「おおーー!!!」
ロウの掛け声に、隊員は一切に答えた。
士気を上げるのに、ロウは適任である。
ラス「それでは、出発しましょう」
連合隊は、素早く進軍を開始した。
食料なども必要であるため、かなりの重装備をしながら、進軍は常に小走りである。
隊員はとくに走りに対しての’体の力'に優れているものを選んでいるため、この程度の早さは問題としない。
その日のキャンプ地まで、一日中走り続ける。
道中はほとんど森であり、その中には獰猛な獣も潜んでいる。
稀に襲ってくることもあるため、できるだけ避けながら進んでいくのが基本だ。
しかし今回は速さ重視。最短距離で目的地まで向かう。
1日目は、かなり順調に進軍することができた。怪我人もおらず、疲れも少ない。
途中熊と遭遇したが、彼らにとってそれは問題にならない。
素早く撃退して進軍を続けた。
しかし、ジュリは少し疲れた様子であった。
ラスが話しかける。
ラス「疲れましたか?」
ジュリ「そうだね、流石に一日中走ったのは初めてかも」
ラス「今日は早めに寝てください。計画よりも早く進めているので、明日はもう少し速度を落としましょう」
ロウ「いや、早く進めているならこのまま維持するべきだ。相手に情報が渡る前に素早く叩く」
ラス「戦闘の前に疲れては元も子もないのでは?」
ロウ「ジュリはメインで戦闘するわけじゃない。俺たち隊員はほとんど疲れていないのだから、このまま進むべきだ」
ラス「だけどー」
ジュリ「大丈夫。この程度なら進めるよ。心配してくれてありがとう」
ラス「…そうですか」
ラスは納得したようではあったが、少しだけ不満げな顔であった。
ロウ「…ラス、お前少しジュリに過保護すぎるぞ。」
ラス「だが、ジュリは初めての戦場だ」
ロウ「だからこそだ。それにジュリは2年も追っ手から逃げた実績もあるし、ここ数日だけではあるが特訓もした。もう少し信用してやれ」
ジュリ「まぁ逃げれてたのは私だけの力ではないけど、とりあえずー」
ジュリはラスの方を向く。
ジュリ「私は大丈夫」
ジュリの顔をみて、ラスも納得したようであった。
ラス「分かりました。このまま進みましょう。私も少し焦っていたようです」
ロウ「まぁ気持ちは分かるよ。とりあえず、お前も肩の力を抜いてちゃんも休んどけ」
ラス「ああ、そうするよ」
ロウ「ジュリもな」
ジュリ「もちろん」
連合隊は順調に進軍を続けた。
途中狼の群れに襲われ、二名ほど怪我をしたがすぐに撃退した。
4日目の早朝には、国境付近の情報隊と合流することができた。
本来5日での予定であったため、1日分短縮したということになる。
ロウ「…つまり、あと一時間ほど南に向かった先に、水軍の小部隊のキャンプ地があるということか」
情報員「そうなります。彼らは一時的に進軍を止めており、2日ほどそこに止まっています」
ラス「…なるほど」
ロウ「これはー」
ラス「チャンスですね」
ロウ「ああ、今すぐ隊員に装備をまとめさせよう」
ロウとラスは隊員を集め、号令する。
ロウ「敵はこれより南側、少し進んだ先でキャンプをしている。まだ我らの存在には気づいていないようだ」
ラス「今からみなさんには、装備を点検し、戦闘準備をしてもらいます。30分後には出撃です。」
隊員の顔が引き締まる
ロウ「多くは言わない!勝つぞ!」
隊員「おおーー!!!」
戦闘が始まる。




