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神伝物語 第一部  作者: 自認神
第一章
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第六話「’力’の使い方」

人の感情が極度に高まった時、周りの’力’が瞬時に集まり、その感情特有の’力’が生まれる場合がある。

王達の’力’のように体外の’力’を変換できるわけではないが、その代わりに体内の’力’の回復は常人のそれとは比べ物にならないほど早い。

またその感情が高まれば高まるほど’力’の回復スピードは早くなる。

滅多に発現することはなく、また同じ’力’が同じ時期に存在することもない。

ーロトスの「力の指南書」、感情編より引用






ジュリ「’憎しみの力'って…」


ラス「かつて世界を滅ぼしかけたともいう、最悪の’力’です。その’力’が暴走したとき、大地は抉れ、山は消えたという伝説もあります。」


ジュリ「なんでそんな’力’がー」


ラス「両親を殺されたとき、発現したようです。」


ジュリは目を逸らし、下を向いた。ロウも複雑そうな表情をしている。



ラスは少し笑いながら話す。


ラス「…心配しないでください。父さんはこの’力’の使い方を教えてくれました。どんな’力’であっても、戦争を終わらせることに貢献できるなら、それで良いのです。」

ジュリ「そう…」


ラス「というか、話を振ったんだからロウまで気まずそうな顔をするな」


ロウ「いや、失敬失敬。いつになってもこの話をするとこういう空気になるね」


ロウは笑いながら答えた。視線をジュリに向けて話し出す。



ロウ「まぁこいつはこんなおっかない’力’を持ってるけど、優しいやつだからそんなに怯えないであげてな」

ジュリ「大丈夫。恐れてはないよ。ただ…」



ジュリはラスに顔を向ける。


ジュリ「…なんていうか、偉いね」

ラス「…そう言ってもらえると気が楽です」


ジュリ「そう、、てか君は何から何まで複雑すぎるよ。王子かと思ったら養子で、しかもややこしい’力’も持ってるしで…」


ロウ「ははっ、確かにな。一つくらい分けてほしいくらいだぜ」


ラス「僕だって好きでこんな立場になっているわけじゃない」


ジュリ「てか、ラスって敬語じゃないと僕って言うんだね。私の前でもそんな感じで話して欲しいな〜」

ラス「いえ、お断りします」

ロウ「こいつ照れてやんだ」

ラス「そういうわけじゃない」



楽しげに会話が進む。

ジュリはこれまでのラスの態度に納得がいったのか、どこかにあった緊張がほぐれ、安心したようであった。






会話もほどほどにしながら、訓練を再開する。

小一時間たち、ジュリの限界が来たところで訓練を終えた。


ラス「ジュリには素質がありますね。初めてでここまで火の属性変化を扱える人はそう多くありません。」


ジュリ「ありがとう。だけど水ならもっと上手く扱えるよ」


ロウ「ラスはそもそも属性変化が苦手だもんな。火も水もろくに扱えやしねぇ」


ラス「そういうロウはもう少し’体の力’の特訓をしろ。いくら自身の’力’が人より多いとはいえ、火にばかり頼っていてはいずれ限界がくる。」


ロウ「え〜、筋トレ嫌いなんだよなぁ、瞑想も退屈だし」


ジュリ「ロウも一緒に頑張ろうね」


ロウ「任せてください♡どんな辛いことも乗り越えて見せましょう」

ラス「都合のいいやつ、」

ジュリ「はははっ」


ジュリが笑っている。


ラスはジュリと出会ってからの苦労を思い出しながら、感慨深い気持ちになる。


ロウ「これから2人はどこへ行くんだ?」


ラス「王宮へと帰ったあと、父さんとこれからについての話がある」


ロウ「なるほど〜暇だし俺もついていって良い?」

ラス「来る理由がないだろ」


ジュリ「良いんじゃない?ロウは隊長で、いずれ聞く話になるでしょうし」

ロウ「やった!ありがとう」

ラス「まぁジュリが良いのでしたら…」


3人で王宮に向かうことにした。







王宮に着くと、王妃が使用人とともに広間を掃除しているところであった。


ラス「母さん、ただいま戻りました」


王妃「あら、おかえりなさい。ラスと、ロウと、…ジュリも」


ジュリ「お疲れ様でございます。王妃様」


王妃「そんなに丁寧じゃなくて大丈夫よ。仲良くなれていそうで良かった。王室でイスカンダルが待ってるわ。」


ラス「分かりました」


廊下を進み、王室へ向かう。


ラス「…ジュリは母さんと既に話していたのですか?」


ジュリ「そうね。話さないと何をしたいかも言えないでしょう。」

ラス「そうですか…」


少し納得いかない気もしたが、気にする間もなく王室に着いた。


ラス「父さん。ラスです」

イスカンダル「入っていいぞー」


イスカンダルは、地図を机に広げ、コマを載せていた。


イスカンダル「訓練はどうだった?」


ラス「まだ初日ですが、ジュリには素質があるようでした。これからさらに強くなれます。」

イスカンダル「そうかそうか」


イスカンダルは笑いながら答える。


ジュリ「質問があるのですが、よろしいでしょうか」


ジュリが手を挙げる。


イスカンダル「なんでもいいぞ」

ジュリ「なぜ私が訓練する必要があるのでしょうか?協力するとはいえ、敵国の王女を訓練する意図が分かりません。」

イスカンダル「それは…」


イスカンダルは少し考えてから答える。


イスカンダル「ジュリには悪いが、女王を誘き出すための囮となってもらう。囮が弱くては、それを守る他の者達の負担も多くなってしまうからな」

ジュリ「…囮?」


イスカンダル「まぁ、また今度詳しく説明するさ。どのみちこの戦争を終わらせるためにはある程度の力が必要ってことだ」

ジュリ「…なるほど」


ジュリは納得しきれない顔をしていたが、これ以上の追及はしなかった。




イスカンダル「ロウもいるし、ちょうどいい。早速だが、三番隊、四番隊に任務を与える」

ロウ「任務っすか!」


ロウが嬉しそうに答える。


ラス「楽しそうに答えるんじゃない」

ロウ「けど、こないだも四番隊だけで、ここ三ヶ月くらい三番隊は暇だったし、」

イスカンダル「ごほんっ」


イスカンダルが話を続ける


イスカンダル「国境の南側を超えて、水の軍の小部隊が闇の軍の森を進軍しているという連絡が入った。数は1000人ほどで、進軍スピードも遅い。おそらくはいつもの挑発だ。」


ラス「1000人か、それなら一つの隊だけでも充分ではないですか?」


イスカンダル「そうだが、今回はできるだけ早く対処して欲しい。そうだな…現場までは5日ほどで到着しろ。」

ラス「5日!?」


国境までは普通に歩いていくと約一ヶ月かかる。

国境を超えているとはいえ、早く見積もっても15日はかかる。


ロウ「それはいくらなんでも無茶じゃないすか?」


イスカンダル「だからこそ、2つの隊を使う。全員ではなく、特に移動の早さに優れた精鋭を連れて行け。全部で500人ほど集めれれば十分だろう」


ラス「なるほど、それなら確かに可能ですね。しかしなぜ早くする必要が」


イスカンダル「その後の作戦があるからだ。今は明かせないが、うまくいけばこの戦争は終わる。」

ラス「そうですか、、」

イスカンダル「それと…」


イスカンダルはジュリに目を向ける


イスカンダル「今回の任務にはジュリにも着いていってもらう」

ジュリ「私もですか?」


イスカンダル「今後のために、水の国に対して王女は闇の国にいるということを示しておく必要がある。多少は出回っているだろうが、相手に確信を持たせたい」

ジュリ「なるほど」


今度は、どこか納得したようであった。


イスカンダル「任務へは8日後に出発してもらう。それまでに各々準備しておくようにな」

ラス「了解です」

ジュリ「承知しました」

ロウ「分かったっす」


3人とも、バラバラではあったがしっかりと返事をした。


イスカンダル「よし、難しい話はこれくらいにしておこう。少し遅いが昼食だ」




そういうと、イスカンダルは3人を連れて部屋を出た。

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