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神伝物語 第一部  作者: 自認神
第一章
4/12

第四話「アクア・ジュリ1」

ーー

本当に、出来心だった。




この部屋から、王宮から、水の国から、父上に囚われ続ける母上から飛び出してみたかった。


本で読んだ、外の世界を見たかった。


こっそり兄上に’力'の使い方を教わって、鍛えた。


部屋から飛び出せるように、いろんなところに行けるように、自由になれるように。




飛び出すところまでは上手くいった。

意外と早く移動できて、追っ手から逃げた。


けど外の世界は生きるのが難しかった。

食べ物も、飲み物も、何もかもが足りなかった。


それに対する知識も、力も。





行き倒れているところに、おじさんがきてくれた。


おじさんは何も聞かずに、足りないもの全てを与えてくれて、そして教えてくれた。

いろんなところに連れていってくれた。





世界は言い表せないほど綺麗だった。


火の国の中心の火山、光の国の空中都市、木の国の大自然、そして神の国の巨大な教会。


どれも本で伝えてくれるよりも大きくて、想像以上だった。





けどおじさんも自分のことは何も話さなかった。

出身も年も、名前も知らない。


けど、唯一の味方になってくれている。


そう思っていた。





でも、ある日突然いなくなった。


起きた時には、周りに闇の国の軍がいて、馬車に乗せられていた。


突然のことで何も理解できなかった。





青年が馬車に乗ってきた。


他の兵士と同じようなことを聞いて、去っていった。

ショックが大きくてあまり覚えていない。


ただ、何も答える気は無かった。





王宮に着いたと言われたが、あまりの小ささに驚いた。


王も王らしからぬ人だった。

ふざけた表情をしていたけれど、奥底には何か強いものを感じた。





青年は街を案内してくれた。



自分の思っていた闇の国とは全てが違っていて、ショックだった。


皆殺しにされていると思っていた兵士たちが楽しそうに暮らしていた。


水の国の兵士はいつも俯いている。

母はいつもだらしがないと言うけれど、彼らの笑顔をみてそうではないのだと思った。





青年は優しい人だ。


返事もせず、無愛想な私を丁寧に連れていってくれる。

彼の周りの人も、皆笑顔だった。


けど、青年はあまり笑わない。


笑顔の奥も、どこか悲しげと言うか、もっと恐ろしいものを秘めているように感じた。






だから聞いた。


どうして優しくするのかと。


けれど、返事は想像通りだった。


彼は私を道具として見ているように感じた。

あの笑顔を、扱いづらい道具を使うために優しい風にしているからだと決めつけた。





だから逃げ出した。



逃げきれるとは思っていなかった。


青年はとても強いし、どうやらかの王はそれよりはるかに強いらしい。

私なんてすぐ捕まると理解していた。


だからあえて近くにした。

いつも窓から見上げている丘の上に。





そこで考えた。


自分がどうするべきかを。


道具にはなりたくなかった。


けれど、同時に街の人の笑顔を見てしまった。


この戦争は終わらせるべきなのだと強く思った。

そして、その手札として私の立場も理解していた。





だから、最後に青年に話した。


私が何を考えていたのかを。


私は自由でいたいのだと訴えたかった。


この瞬間だけは自由でいたかった。











彼は全くの予想外のことを話し始めた。


彼は両親を失っていた。

私の国が彼から両親を奪ったのだ。


しかも国王の養子だという。

特別な'力'についてはよく分からないが、なにかしらの制約を受けているようだ。



そして彼は私の自由を分からないと言い放った。



自分は国王王妃の”為”に戦うと言った上で。





彼がとても可哀想に見えた。

彼もまた被害者だったのに、自由だのなんだのと考える間もなく戦っている。





私は決めた。



彼を含め、この戦争の被害者をもう増やさないためにも、この戦争を終わらす。


私は闇の国の道具でもなければ、王宮に閉じ込められるお姫様でもない。




自分自身の意思で、この戦争を終わらせるのだと。

ーー











ラスはジュリに連れられ、王宮へと戻った。



イスカンダルが、満足げな顔をして待っていた。


イスカンダル「その様子なら、お嬢さんはうちの国に協力してくれるっぽいな?」

ジュリ「そうです。共にこの戦争を終わらせましょう。」

イスカンダル「その心意気だ」


イスカンダルはニカっと笑った。




ラスの方へと目をやる。


イスカンダル「よく頑張った」

ラス「いえ、私は何も」

イスカンダル「なーに、これからさ」


イスカンダルは、優しく手をラスの頭の上に置いた。





イスカンダル「ラス、お嬢さんを部屋に連れてってあげてくれ」

ジュリ「その呼び方はやめてください、私はジュリです。」

イスカンダル「そうか、じゃあジュリを頼む」

ラス「はい」










ラスはジュリを部屋へと連れていく。ドアを開け、ジュリは部屋へと入った。



ジュリ「…今まで悪かったね」

ラス「大丈夫です。気にしていません」

ジュリ「そう、ありがとう」






そういうとジュリはそっとドアを閉めた。


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