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神伝物語 第一部  作者: 自認神
第一章
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第十三話「会議」

イスカンダル「まずは現状の確認だ」


そう言って、イスカンダルは地図を広げた。


現状として、局所ごとの戦闘は起きてはいるが、そのほとんどはあまり意味がない。


イスカンダルが王になってからの18年の間に、闇の国はあらゆる面に置いて水の国を上回ることとなった。


その理由は単純で、イスカンダル、および各隊長の個人戦闘能力の異常な高さゆえである。


大規模な戦闘が起こったとしても、一度そこにイスカンダルが現れればその戦闘は終了する。


加えて、’時の力’と史上最強の’体の力'の使い手がいる。


彼らにすら、女王以外では相手にならない。


イスカンダルが王になってからの数年間、圧倒的な力によって闇の軍は勝利を重ねた。


その結果、水の軍の規模は年々小さくなった。


自身が出陣したところで闇の軍およびイスカンダルには敵わないと悟った女王は、基本的に自身の王都および王宮から出ることは無くなった。





イスカンダルは、最近起きた戦闘について場所を示しながら整理しつつ、ザッとこれまでの経緯を説明した。


イスカンダル「女王が王宮にいる限り、俺達が王都を攻めることはできない。もし王都で戦ったら、どれほどの被害が出るか想像もつかん。そこで…」


ジュリ「私が必要、ということですね」


反応したジュリに対して、イスカンダルは深く頷いた。


イスカンダル「そうだ、前にも話した通りジュリには囮になってもらう」

クロノ「ほう、この方が…」


クロノは会議が始まってからずっとジュリの方を見ており、話もよく聞いてないようだった。


おそらくよく分からない者が会議に参加していて困惑でもしていたのだろう。


ジュリ「私は水の国女王のアクア・レイの娘、王女のアクア・ジュリでございます。ご紹介が遅れましたことお詫びします」


ベンケイ「もう自己紹介のくだりは済んだのだかな…」


ロウ「時間通りきてりゃスムーズに終わってんだよ」


二人の小言もよそにして、クロノはまだジュリを見ている。


ジュリ「…?なにか変なところでもありますか?」

クロノ「いえ…丁寧にありがとうございます」


クロノはにこやかに答えた。わざとらしい顔だ。


クロノ「私はタイム・クロノと申します。闇の国一番隊隊長にして、時の一族のものであります。まぁ一族と言っても、他の貴族のように血の繋がりはないのですが…」

ジュリ「…と言いますと?」


クロノ「原初の王に、唯一抵抗せず協力したのが時の一族なのです。初代は旅人だったそうで、特別に放浪を許されました。」


クロノ「他の貴族のように血縁による継承ではなく、任意の者に継承できるので時の一族に血の繋がりは必要ありません。なので、単なる’時の力’の継承者だと思ってください」


ジュリ「なるほど…初めて知りました」


興味深そうに聞くジュリに対して、ロウは少し呆れ顔だった。


ロウ「勉強会は他所でやってくれ」

ジュリ「…これでもそれなりに本は読んできたんだけど、、」


イスカンダル「そうだな、話の続きをさせてもらおう」


イスカンダルもロウと同じような顔をしていた。


言わないだけロウよりもマシではある。


イスカンダル「先の戦闘で、ジュリが闇の国にいる情報は彼方に回っているだろう。どこにいるのか掴めれば女王が直接取り返しにくる可能性が高い。そうやって王都から女王を引き剥がす」


ラス「…そうですかね?罠にしては意図が分かりやすすぎて、そう簡単に引っかかってくれるとは思わないのですが、、」


王都に籠っていれば攻められない現状を捨てるのは、あまりに合理的でないと感じた。


ジュリ「いや、母上は必ず来るよ」


ジュリは力強く話す。


ジュリ「母上は私と兄、子供達に執着のようなものを持っています。私を王宮の一室から一歩も出さず、兄は隊長であるにも関わらず、王都からすらも出さないようにしていると聞いています。」


ジュリ「そんな私を取り返す機会があるのなら、間違いなく母上は打って出るでしょう」


ジュリは確信を持って話していた。


イスカンダル「…それに、ジュリの失踪中に何度も女王自身が捜索しようとしていたという情報も得ている。側近に止められ、なんとか踏みとどまっているようだが…チャンスがあれば静止も聞かないだろう」


イスカンダルも自信を持っているようだった。二人の様子を見てひとまず納得した。


ラス「確かに、可能性は高いですね」

イスカンダル「ああ」


イスカンダルが頷く。その後、再び全員に目を向けて話し始めた。


イスカンダル「よし、具体的な作戦について説明する」


そう言って再び地図を示した。




イスカンダル「今回は二、三、四番隊で連隊を組んでもらう。ジュリもそこに同行する。この連隊で北西に向かい、北の国境から水の国へと進行しろ。」


ロウ「北?南じゃないんすか?すぐこの間一部隊潰したし、こっちのが楽に行けると思うんすけど」


ロウが質問する。確かに、今は南の方が手薄だと考えられる。


イスカンダル「いや、北だ。理由は後で説明する。ただ、確かに敵は多いかもしれない。だから進行の早さはゆっくりでいい、そもそも女王を釣り出すのが目的だしな」


今度は、地図の南を示しながら話を続ける。


イスカンダル「俺は別行動をする。少数の情報員を連れて、南の国境から一気に水の国の王都を目指す」


ジュリ「…ってことは、イスカンダル様は直接母上とは戦わないのですか?」


イスカンダル「いや、戦うつもりだ。だが、俺が連隊と共に居ては、いくら女王が錯乱していても戦いを避けるだろう。だから途中から、できれば戦闘の開始とともに合流するつもりだ。」


それを聞いて、ジュリは少しホッとした顔をした。


イスカンダル「王都でやるべきことを済ませてから、連隊の方へと向かう」


ラス「やるべきこととは?」


イスカンダル「王宮に直接入城し、水の国の王子、アクア・カイと和平条約を結ぶ」

ラス「…は?」





あまりに急なことで、動揺してしまった。


イスカンダル「既に王子の了承済みだ。ここ数年で秘密裏に進めてきた。うちには優秀な諜報員がいるからな」


そう言ってイスカンダルはクロノに目をやった。


クロノ「大変だったんですよー」

イスカンダル「お前の’力’があれば余裕だっただろ」


クロノ「バレずにやるのは簡単でも、説得するのが難しくてですね…まぁ、苦労した甲斐がありましたね」


ラス「ここ数年王都にいない時期が多かったのはそういうことだったんですね…」


イスカンダル「ラスとロウが成長したのも大きいな。お前らがいる分、クロノをそっちに回すことができた」


そう言ってロウとラスに目を向けた。褒められるのは素直に嬉しい。


イスカンダル「連隊には少し短いが20日程で国境までついてもらう。国境まで行けば相手に情報が回る。その後の進行はゆっくりで良い。全部で大体一ヶ月弱くらいで女王と対敵するだろう」


イスカンダル「そんくらいの期間で、俺は王都に行く。相手に気づかれず進むために、手薄であろう南から行くってわけだ」


ジュリ「…ですが、それではイスカンダル様は連隊の戦場に間に合わないのではないですか?」


イスカンダルはきょとんとしている。何を言っているんだと言わんばかりの顔である。


ジュリ「…いや、だって、水の王都からでも戦場まではかなりの距離があるように思えて」


イスカンダル「あー、そういうことか。問題ない。俺は本気を出せば闇の王都から水の王都まで30分もあれば移動できる。そんくらいの距離なら5分もあれば着くだろう」


ジュリ「…へ??」


ジュリは目を見開いてかつてないほど驚いている様子だった。無理もない。普通に歩くと二ヶ月ほどかかる距離である。


ロウ「この人のことは人間だと思わねぇ方がいいぜ」

ジュリ「…確かにそうだね」


イスカンダル「…まぁ、万が一俺が間に合わなくても、ベンケイ、ロウ、ラスが一緒なら充分女王とも戦えると踏んでいる。だから、心配すんな」


イスカンダルはジュリに向かってそう言ったが、ジュリは少し不満げだ。


ジュリ「はい…ですが、警戒はした方が良いと思います。詳しくは知りませんが、何か’水の力’以外の’力’を持つと聞いたことがあります」


ベンケイ「そうですな…子供への執着は何かしらの’感情の力'の影響を受けているとも考えられますぞ」


イスカンダル「その可能性についても考えてきたが…まぁ、そんな状況にはならないように、こっちはできるだけ早く終わらせるさ」


そう言ってイスカンダルは息をついた。


イスカンダル「よし、これで大体の説明は終わりだ。最後に確認だ」


もう一度地図を指す。


イスカンダル「二、三、四番隊の連隊は北、俺は南から国境を超える。目的はそれぞれ女王の誘導と和平を結ぶことだ。俺は目的を達成次第連隊と合流し女王を迎え撃つ」


イスカンダル「一番隊は王都にて待機。万が一に備えてもらう」

クロノ「承知しました」


イスカンダルは、再度全員に目を向けた。


イスカンダル「ここまで長かったが…舞台は整った。」


深く息を吸って、吐いた。


全員の視線がイスカンダルに集まる。







イスカンダル「この300年のくだらねぇ戦争に、終止符を打つ」

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