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神伝物語 第一部  作者: 自認神
第一章
11/13

第十一話「非殺の誓い」

ジュリ「父の、先代水の王、アクア・セインについて教えていただきたいです」

ポドン「…」



ポドンはジュリに視線を向けると、じっと見つめた。


ジュリ「…私の顔に何かついてますか?」

ポドン「…いや、セイン様に似ていると思ってな、優しい顔だ。ただ、瞳は母に似ている。気の強い女の目だ」


ジュリ「そうですか、、」

ポドン「それで、セイン様についてか」


少し怪訝な顔をしながら続けて聞いてくる。


ポドン「セイン様の何を知りたい?大体のことはオーヤンから聞いているだろう」


ジュリ「…では、父はどういった人物だったのでしょうか。側近から見た父について知りたいです」

ポドン「なるほど」




今度は腕を組み、少し考えてから口を開いた。


ポドン「…温厚な性格で、寛大なお方であった。最初は甘い男だったが、王になるころには強い自信も伴った」


ポドン「あの時代に他者を憎まず、確固たる意思で平和を訴えた。それをするだけの実力も伴っていたと今は思う」


ジュリ「…父はなぜその考えに行き着いたのでしょうか」


また少し間を空けてから答える。


ポドン「どれだけ争おうと、同じ人間なのだとよく話していた。」


ポドン「セイン様には闇の王都を攻める時から支えたが、そこでの経験が大きかったのだろう。よく、ともに遊んだ闇の国の子供についての話を聞いたものだ。」


ポドン「王都を攻めた際、人を、特に関係のない住民を殺すことはできないと言葉を吐いたことは鮮明に覚えている。当時の私は、弱音を吐くなと叱責した。」


ポドン「王になり、力を得、その理想を追求した。たとえ敵兵であろうと自身の対敵した相手は殺さず保護した。自らその道を示そうと奮闘したのだ。」




話す早さが少しずつ遅くなる。


ポドン「そんなことは不可能だと、私は常に反対した。実際、戦況は五分、それが可能なのは王一人だけであった。ただ、あの頃は悪くなかった。特に若者の活気があり、確かな希望を抱いていた。」


ポドン「セイン様は一人で戦場を飛び回った。敵も、味方も、誰にも死んでほしくなかったのだ。」


ポドン「…セイン様が亡くなってから、国は元に戻った、、失って、初めて、、セイン様の、言葉の意味が理解できた。しかし、、すでに、遅かった、、」





ポドンは静かに泣いていた。


ラス「大丈夫ですか」

ポドン「…すまない、取り乱した」


ポドンは目を拭うと、すっと顔を戻した。冷静な顔に見えたが、目は少し赤い。


ポドン「他に質問は?」





少しの間静寂が流れた。周りを見て、ラスは質問をした。


ラス「では、私から失礼します。先代水の王は、なぜ最後、闇の国に現れたのでしょうか?理想の志半ばで、このような行動を取った理由はなんでしょうか」

ポドン「知らん」


即答され、ラスも思わず苦笑いしてしまった。


ポドン「…そういう顔をするな。知っていればその時点で止めていた、、」


少し引っ掛かることがあるのか、話を続ける。


ポドン「ただ、セイン様が失踪する少し前に、後継者が見つかったと話していたような…話半分で聞き流していたが、お前たちの"誓い"を聞く限りもしかしたら現闇の国王がその後継者なのかもな。二人の繋がりについてはさっぱり知らないが…」


ラス「なるほど、ありがとうございます」


有用な情報を得られた。あと話を聞くべき相手は一人しかいない。


ポドン「あとは?」


ラスは、これ以上聞くこともないので首を振った。しかしジュリは首を動かさない。


ラス「ジュリ?」

ジュリ「もう少しだけ」


そういったあと、ジュリはオーヤンとポドンの二人に視線を向けた。


ジュリ「では、お二人についての話しを聞かせてください」

オーヤン「私もですか?」


ジュリ「はい。お二人の若い頃の話しや…仲間、いらっしゃったら奥さんの話しも聞いてみたいです!」

ポドン「セイン様には関係ない話も多いぞ」


ジュリは笑顔で話を続ける。


ジュリ「今は、純粋にお二人について興味があります!なので話してください」









そこからの会話はかなり長くなった。気づけば日が傾いていたので、キリのいいところで二人と別れた。



二人の話も、かなり興味深い内容だった。


オーヤンに妻と二人の子がいることはラスも知っていたが、馴れ初めなどの話はしたことがなく新鮮だった。


ジュリがいなければ聞くこともなかっただろう。


負傷して運ばれた病院の看護師だったらしく、一目惚れしたオーヤンの猛アタックの末結婚したそうだ。



ポドンは独り身だが、国に数人の弟子を残しているという。


先代が亡くなってから地位を失いほとんど謹慎の身であったが、よく庭に遊びに来る子供がいたためついでに教えているそうだ。


和やかな会話がつづいたが、やはり最後は帰りたいと言葉が出ていた。




二人の向かう先は、もちろん王宮である。最も話を聞くべき相手がまだ残っている。


王宮の門の前に着くと、ロウが待っていた。

なにやら不満そうな顔だ。


ロウ「おせぇーよ!」

ラス「悪い」


ロウ「おやつの時間には集まる予定だっただろ。もう夕暮れだぞ!こちとらお前たちがデートしてる間ラスの分まで仕事してたんだわ」


ラス「思ったより話が長引いてしまってな。だがおかげでいい話しが聞けた。あとデートではない」


ジュリ「私が結構話し込んじゃたの。だからごめんね」

ロウ「ぜーんぜん怒ってないよ♡」



調子のいいやつだと思ったが、こっちに非があるので強くは言えない。


ラス「…聞いた話を適当にまとめて伝える」


話を一通りロウに伝えた。


ロウ「…なるほどな、先代水の王はそういう奴だったのか、、けどやっぱ最後がしっくりこねぇ。早く聞きに行こうぜ」

ラス「そのつもりだ」

ジュリ「行こう」


王宮の広間に入ると、王妃クララが椅子に座り編み物をしていた。


ラス「母上、ただいま戻りました。挨拶が遅れて申し訳ないです。」

クララ「…!!」


クララは編み物を置き、3人の元へ駆け寄った。


クララ「無事に帰ってこれて何よりよ。心配して待っていたわ。」

ラス「心配は体に悪いですよ、母上」

ロウ「まぁこいつ死にかけてたけどな」

クララ「まぁ、、、」


クララはショックを受け、今にも倒れそうになる。


ラス「話を盛るな。確かに危なくはありましたが、あれくらいは戦闘ではザラです。」

クララ「本当に?」


ラス「はい。それにジュリが助けてくれました。おかげで怪我の一つもないです。」

クララ「そうなのね、、」


クララはジュリの方を向く。


クララ「ジュリも怪我はなかったかしら?綺麗な顔が傷ついたりしたら…」

ジュリ「ご心配なく!かすり傷一つないです」


ジュリは元気に返事したが、クララの顔を見て、少し涙ぐんでいた。


クララ「あ〜泣かないでジュリ。この二人に何かされたりしたの?」

ロウ「んなことしねぇよ!」


ジュリ「いや、、王妃様の顔を見たら、、なんだか安心しちゃって…」


思えば、初めての戦闘。ずっと張り詰めていた気が少し緩んだのだろう。


クララ「…そう、頑張ったのね」


クララはジュリの頭を撫でた。

ジュリの鼻を啜る音が響いた。


ジュリ「…ありがとうございます。もう大丈夫です」

クララ「そう?今日はずっとこうしていてもいいのよ?」

ジュリ「それは…少し恥ずかしいです」


そう言ったジュリの顔は笑顔だった。


ラス「それでは、父上のところに向かいましょう」

ジュリ「王妃様、また後で」

クララ「えぇ」




クララと別れ、王室に向かう。


ラス「父さん、ラスです」

イスカンダル「入れ〜い」


前に入った時とほとんど何も変わっていなかった。


椅子に座り、地図を広げている。地図の上に何か書かれた紙が数枚散らばっている点だけ違うか。


ラス「ただいま戻りました」

イスカンダル「よく戻ったな。予定通り、任務を完璧にこなしてくれた。三人には感謝する。ありがとう」


イスカンダルは三人に目を向け伝えた。


ロウ「…なんかあっさりじゃないすか、結構大変だったんすよ」


イスカンダル「無茶を言ってすまなかったな、だがお前らなら問題ないと踏んだ。報酬ははずむから許してくれ」

ロウ「よっしゃ!」


ロウはガッツポーズを決めた。


イスカンダル「…それで、三人で来たってことは何か用でもあるのか?まぁどうせ後で伝えることがあったから手間が省けて助かるが…」


ジュリ「はい、今回は父上、先代水の王の話を聞きたくて来ました。」

イスカンダル「…」


イスカンダルの顔色が変わった。


イスカンダル「…ジュリには話していなかったな」


少し間を空けて、話し始めた。


イスカンダル「’非殺の誓い'。かつて先代水の王から学びを経て誓った。『自身の身の安全は大前提とし、敵国民、敵兵であっても殺害はせず、極力保護する』」


イスカンダル「この後の戦いでジュリが直接兵士と戦う場面はほとんどないだろうが、一応覚えておいてくれ」


イスカンダルはそれで話を終えてしまった。


ジュリ「…はい、その誓いついてはラス、ロウから既に聞いています。その内容ではなく、イスカンダル様と父上の関係について聞きたいのです」


イスカンダル「聞く必要はない」


ジュリ「なぜですか?何か話したくない内容でもあるんだすか?」


イスカンダル「意味がないからだ。聞いたところで何も変わらない」

ジュリ「そんな…」


なぜかイスカンダルが意地を張っている。よほど聞かれたくない内容でもあるのか。


ラス「…少しくらい、話してあげてもいいんじゃないですか?父さんらしくない」


イスカンダルは、そう言われて下を向き考え始めた。


イスカンダル「…まぁ、わかった」


続けて話す。



イスカンダル「闇の王都の戦いで母と姉を失い、俺も他の奴らみたいに水の国を、王を恨んだ。しかし、16の時に奴と対敵した。そのときに諭されたのさ」


ロウ「…それだけ?」

イスカンダル「それだけだ、そこで奴の考えに感銘を受け、誓いとした。父と兄を殺してでも王となり、その理想を今も追い続けている」


ジュリは呆気に取られていた。ジュリには初見の情報も多くそう反応してしまうのも無理はない。


イスカンダル「…これでいいか?まぁもっと詳しいことは、また時間ができたら話してやる。今じゃない」


イスカンダルは続けて話す。


イスカンダル「それで、今後の話だ。」


イスカンダル「作戦が決まった。隊長が全員戻っているから、明日には会議をする。明日の10時には王宮に集まってくれ。」





話はそれで終わった。

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